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尋ネ人ノアノ人ヲ追イ求メ

 今日、この日もホノカさんとミコトさんと一緒にスコールさんの部屋を探していた。

 この広いフェンリルベースの中でたった一人の部屋を探し出すのは時間が掛かる。端末での検索にも、更新が間に合わないペースで部屋を変えるものだから引っかからない。


「これさ……探した場所に移ってるとかされるといつまでも見つけられないよ」

「でもスコールの後をついて行けば確実に迷うよね」

「だね。もしかしたら部屋がないってことありえるんじゃない? ほら、住所登録だけして実際はそこにいないってやつ」

「あ、ありえそうですね」


 一週間かけてフェンリルベース内部の回れる場所は全部回ったけど見つからなかった。だとしたら部屋の移動が速いのか入れない区画に部屋を取っているのか……。端末での検索にもすべての部屋が出るわけじゃないし、もしかしたら登録外、例えば武器庫とかにいるかもしれない。


「どこにいるんだろうねぇ」

「んーこないだ一緒にお風呂入ってあがったときに服にトレーサー仕掛けたけど、すぐにバレて怒られたし」

「私もやったやった。食堂で隣に座ってぽっけに入れたんだけど、すぐに壊された」

「なにしてるんですか二人とも」


 というか少し羨ましい。最近時間が合わないこともあって全然一緒になることがないから。


「何って言ってもさ、コロニーにいた頃ってスコールはサテライトスキャンにも引っかからなかったんだからさ、これくらいは最低でもしないと」

「それに警戒が半端じゃないじゃんか。だったらこっそりよりか堂々と近づいて仕掛けた方が成功するかなーって」

「あ、それでホノカってばスコールの腕に絡みついていちゃいちゃしてたんだ」

「ミコトこそ何かと理由付けて雑用一緒にやってたじゃんか」

「…………。」


 なんか違う気がする。なんか別の目的があるような気がする!


「うーん、いっそ頼るか」

「一番早い手は」


 と、ホノカさんが端末を取り出してどこかに電話をかける。


「あ、もしもし。ホノカだけど……うーんちょっとね、ツバキさぁスコールの部屋知らない? ……隊長権限でも分かんないかぁ……いや、それはいいから。んじゃありがと」


 そしてまたすぐに。


「ナギサ、スコールの部屋……えぇ、ナギサでも分かんないの」


 ぶつっと切ってため息一つ。

 ツバキさんは絶対に言わないだろうなぁ。この前甲板で干された原因もスコールさんの部屋を教えたからだとか言うし。その流れで行くとナギサさんも言わないだろう……またスカート穿いた状態でみんなからよく見えるブリッジに逆さ吊りなんてされたくないだろうから。


「ダメ?」

「ダメっぽい。シュネーとかアイゼンとかの隊長なら知ってるかもしんないけど、話しかけたくないし」

「……あ、いつもスコールと一緒にいるあのちっこい男の子なら知ってるかも」

「確かに。あの仏頂面のあの子なら」


 でもいざ探し始めてみると見つからない。当然だ、スコールさんと一緒なら見つけられるわけがない。

 結局無駄に時間を浪費してお昼になった。

 食堂に向かえば喧騒とごった返す人の波。コロニー時代は基本的に味気ないレーションばっかりだったけど、ここではある程度のメニューがある。


「ユキ、席の確保よろしく!」

「はい! 私いつものうどんで」

「りょーかーい」


 席の確保……この食堂という大戦場でもっとも大変なこと。立ち食いなんてできる場所がないから絶対に取りたい。取らなきゃいけない。

 どこも空いてな……くはない、でも端っこのほうのやけにどんよりとした空気を生み出している一団の隣。どうしよう。


「席、どんな感じ?」

「あそこ……空いてるんですが……」

「なにあれ」

「見るからーに澱んでるね」


 澱んでいるというか……私には黒い靄を立ち上らせているようにしか見えないんですが。でも、悪魔ディアブルとは違う黒色。危ないという感じはしない、ただどんよりしているというだけで。


「とりあえずあそこしかないし、座ろっか」

「あれなーんか見たことあるんだけどなー」


 席を確保して隣を見れば、見たことある人たちだった。


「トーリさんとソウマさんと……」


 黒い靄を出している人……誰だったっけ?


「キリヤです……よく忘れられます、誰にも覚えてもらえません……以上」


 そのまま突っ伏してしまう。ますます放出する黒い靄が増えた。


「あ、スコールと仲がいいあのキリヤさんですか」

「仲がいい? この前僕は撃墜されたんだよ! あのお陰で無人島で魔力が回復するまで三日も過ごしたんだよ!?」

「えっと……」


 あぁ、うん、言われてみれば確かに撃ち落されていた。


「なんかねー僕ねー人に覚えられにくいんだよねー」

「そんなことはないと思いますけど」

「君が言う? 僕のこと忘れてた君が。一月会わないだけでみんなあんた誰? て言うんだから嫌んなるよもう」

「あはは……なんていうか、不幸ですね」

「不幸、ね。ちょっと前に地上に降りた時の爆発、覚えてる?」


 レイズさんが自爆したあの大爆発。


「もちろん覚えてます」

「アレのせいでちょっと不味いことになってね。いまミナがなんとかしてるとこ」

「ミナ?」

「えぇっと……スコールのこと」

「ミナがスコールさんの本名なんです?」

「知らない。ミナはいくつも名前を使ってるからそれも偽名の一つかもしれない。でね、まあ三時くらいに五番艦の一般エリアの一番下の端の部屋にいると思うから、どういうことになってるか見てきたらいいと思うよ」

「何があるんですか」

「僕も知らない。ミナとレイズと僕の雇い主が何かするって言ってただけだから」


 そして――私はお昼を終えてそのまま五番艦へと向かった。

 ホノカさんたちも後で来るって言っていたから、何か変なことがあってもたぶん大丈夫だと思う。あ、でもスコールさんとレイズさんの喧嘩があったらどうにもできないか。

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