全テヲ破壊セシ希望
いきなり破壊音が響いてヘリが揺れ、一機墜ちた。
続いてもう一機、横合いから何かが飛びついて墜ちていく。
そして、私の目の前に降り立ったその人は。
「潰せ」
無数の剣を従え、戦車を斬り上げてひっくり返して串刺しにする。
脱出ハッチから這い出て来た兵士が撃ってくるけど、そのすべてを独りでに動く剣が弾く。
銃撃がやむと同時に上半身だけ出していた兵士が切り刻まれて、中から叫び声が聞こえた。
それもすぐ、降り注いだ剣で静かになる。
「あ、ぁ……」
私もやられる?
たくさんの剣を扱う男の人……フランちゃんを殺したあの。
「怪我はないか?」
……あのときの人じゃない。
「…………スコール、さん?」
振り向いて、話しかけてくる声はスコールさんとほとんど同じで。
顔も、背も、黒で統一されたその格好もそっくりで。
でも違う。
「レイジだ」
「もしかして、スコールさんのお兄さんだったりします?」
「いいや。それよりも未来から警告だ」
不意にこつんとおでこをぶつけられ、唐突に頭の中に見たことのない光景が流れ込んでくる。
知らない男の人と一緒に歩いている私。
たった二人で……あれは魔族? その拠点に入り込んで、なぜかスコールさんが出てきて……いきなり光景が途切れて、また見えたのはスコールさんに刺される私だった。
次の光景が見えてきた。
フェンリルのみんなずらっと並んでいるその反対側……スコールさんが立っていた。
「相容れないんだよ、お前らとは」
戦場が見えた。
スコールさんを相手にすごい数の人数で攻めて、みんな返り討ちに……殺されていく。
その中に私の姿もあった。
「やめ、てぇっ!」
押し返すと流れこんでくる光景が一気に消えた。
「なんですか」
「スコールと共に在った場合の結末だ。お前は死ぬぞ」
「……あなたが見せたものが本物だって言う証拠はありません」
耳が痛くなるほどの声で泣くリリィちゃんを彼が撫でると、すぐに泣き止んでスコールさんと同じような反応を示す。
「偽物という証拠もない」
剣に囲まれて、それでも切っ先じゃなくて柄の方に囲まれている。
もう一度額を押しつけられて、今度は本当に見たくない光景が流れこんできた。
どんどん移り変わる光景には、スコールさんの隣にいる人がどんどん死んでは違う人が並んで……。
「共に在れば確実に死ぬ」
「私は死にません」
「変えようのない運命だ」
流れ込む光景が変わる。
どこかの家の中で、私はいま目の前にいるレイジという男に抱きついていた。
そして口を開いて言うのだ「好きです」と。
そこからいきなり流れが変わる。
未来から過去に流れ行くように……この人のことが流れ込んでくる。
「やめろ!」
「なんで……だってスコールさんは」
「くそっ」
一気に彼は距離を取った。
見えた、全部、スコールさんの未来から過去まで全部が。
「……未来の、スコールさんなんですね」
「大失敗した、な。少しでも良いように変えようと過去に飛んでは失敗の繰り返し。結局未来は変えられないと言われたが、変えて見せようじゃないか」
「何を変えたいんですか」
「言えない。とりあえず今はこの第十一の五の世界、変えるべき事象はあまりないが……。あぁそうだ、五年後にリリィが死ぬのは確定だから一応言っておく」
「そこ変えようと思わないんですか!」
「言ったろ、未来は変えられない。つまり過去も変えられない……」
寂しい顔で離れていく。
「だったら、なんで来たんですか」
「……それでも変えたいからに決まっている」
とても、恐れている声だった。
大失敗……見えた光景の中にレイズさんの姿はなかった。
もしかして失敗って……。




