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曖昧ナ希望

 夜になっても銃撃の音が絶えず、誰も帰ってこない。

 ようやく復活したレイズさんと一緒に場所を変えることにしたけど、誰も片付けてないはずなのに死体がなくなっていた。


「レイズさんしっかりついてきてくださいね」

「オレの方が戦えるんだけど……」


 リリィちゃんを抱えた状態で戦闘なんてさせられない、してほしくない。

 ……でも襲ってくる悪魔相手にレイズさんが飛ばす光は頼りになる。

 いつかみたいにものすごい数が襲ってくることはないけど、姿が子供から大人まで。

 撃ちづらい。

 どうみても親子までいるけど、悪魔に、魔素による魂の汚染が進んでしまった以上は敵。


「躊躇ったら、そのときは大事な仲間がやられる……だから」


 レイズさんの手から光が溢れて、前方のすべてを容赦なく灰に変える。


「悪魔になったからって、意識まで変わるんですか」

「……人間やめると、やっぱり考え方は変わるよ。オレだって最初の内は変な気分だったし」

「どんな、感じでしたか? もしかしたら悪魔たちと戦わなくてもすむかも知れませんし」

「妙にふわふわした感じで……なんていうか、命令されたらなんでもしそうなくらいに頭の中空っぽだった」

「悪魔さんたちは……」

「あれは多分、意識まで浸食されてる。ああいう魔法はよくあるし、魔力は世界を壊したり物質を壊す、後は人の魂から生成することもできるし……。魔界も酷いもんだ、こっち側を魔力で満たして出てきたい気持ちも分からなくはない」

「でも、だからって人を」

「魔界の悪魔たちは人間に虐げられた。だったら人間がやられたところで文句は言えない」


 十字路を曲がってそこにいた悪魔たちを撃って、反対側から来た悪魔たちにレイズさんが光を飛ばす。


「……レイズさんは、どうして私たちの味方なんですか。レイズさんも悪魔なんですよね」

「オレの翼を見てないか? 一応は天使でも悪魔でも精霊でも人間でもある」


 そう言ってバサッと広げられた翼は……天使のと悪魔のと、トンボの翅みたいな……妖精の翅かな、それと魔方陣の一部みたいなの。


「あの、レイズさん。節操のない人って言われませんか?」

「言われるこたぁあるけど……」


 見るからに靄の色が気持ち悪いほど多彩な……うん、極彩色?

 すごい数の色が混ざっている。

 キリヤさんのことを考えれば色の数だけ魔法があるってことだし。


「まあでも、色々経験はあるし、魔法だってリリィに直接触れないようにしてるし」

「……あの、スコールさんとは長いんですよね」

「結構長い付き合いだな。この世界が出来るよりも前……むしろ今回の流れが出来るよりも遙か昔、ほとんど最初の頃からだし」

「そのときのスコールさんってどんな感じだったんですか」

「うーん……いきなり空中に召喚されて、大怪我して戦場に落ちて躊躇いなく敵兵を殺して生還するようなやつだった。普通落ちた時点で死ぬのに、その後も砲撃戦のど真ん中で怯えずに動いて初戦闘で結構な数殺してるし……」

「最初からムチャクチャな人だったんですね……」


 いや、うん、だってコロニーにいた頃も軽装備で悪魔相手に接近戦してたし。

 おかしいところは……ない?


「オレなんかあいつが手懐けた狼の群れに噛まれたりして怪我したし……でも、あいつもかなり変わったな」

「変わった?」

「いつも一人だったクセに、今じゃ仲間を守る戦い方をしてる」

「昔はどんな戦いしてたんですか? もしかして本当に一人で突っ込んで」

「いいや。味方ごと戦域を焼き払うとか平気でやってやがった」


 言われてみれば……やりそうだなぁスコールさんなら。


「……まぁ、スコールがブチ切れたこともあったけどな」

「スコールさんが? いったいなにがあって?」


 この前みたいに遊びのようなことで怒ることはよくあるけど。

 多分レイズさんがいうキレたことはそんな程度じゃないんだろう。


「あの時はまあ、オレがヘマして拉致られて……。オレが知る限りあいつが一番キレたときだな」

「やっぱりそれって、守るため、ですか」

「うん、多分」


 不意に真上をヘリが通り過ぎた。

 見たことのない形だ。

 なにか吊り下げているような様子だけど……。


「ダイバー隊の……ありゃ戦車か」

「へ、ヘリで戦車って吊れるんですか……」

「吊ってるって言うよりアームで抱きかかえてるような感じ……でも無理だろあの重量」


 バタバタとうるさい音が戻ってくる。

 リリィちゃんが泣き始める。


「ああよしよし。怖くないか……やばいな、近くに下ろす気だ」

「れ、レイズさん撃墜してください!」

「リリィ頼む」


 押しつけられて抱きかかえると、すぐにレイズさんが光を圧縮し始めて、魔方陣を連ねた砲身みたいなのが創られる。


「ツインローター……複合装甲かよ。貫通できなくてもバランス崩せば」


 白と黒の流れが集まって、レイズさんの手の先で鉄の塊が生まれる。

 瞬間、オレンジ色の軌跡を残してヘリを貫いた。


「す、すごい……」

「神力と魔力は組み合わせ次第じゃどんな物質でも作れる訳で、今のは即席のミニレールガン的な」


 墜落した場所から炎が上がるが、同時にギャラギャラと戦車の履帯が動く音が聞こえ始める。


「壊れるわけ無いか……投下できるタイプだもんな」

「いやでもあれ運転してる人大怪我してるんじゃ……」

「着地後のダイレクトダイブでどうにでもなる」


 ダイレクトダイブ?

 なんだろうかと思っていると、レイズさんが二発同じものを撃って、効かなかったのか戦車砲を撃ち込まれて遥か彼方に飛んで……。


「レイズさんっ!」


 塀を突き破って戦車が現れる。

 砲塔を向けてくるまでもなく、機銃が私を狙う。

 強い光で照らされたかと思えばいきなりヘリの音が響く。

 囲まれた……。

 リリィちゃんが泣き始める。

 さすがにどうしようもない。




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