浸食サレル現世
それは私とフランちゃんが見回りをしているときだった。
「あっ、敵」
フランちゃんが飛び出してきた人にいきなり石を投げた。
それは綺麗な弧を描いて見事命中し、
「痛えなこら! いきなり石なんか投げんじゃねえ!」
「黒い靄がない……あの、ごめんなさいいきなり。フランちゃんダメでしょ石なんか」
「敵……消す」
フランちゃんの鞄。
スコールさんが何か持たせていたようだけど、そこから取り出されたものは実弾と拳銃。
相手の服装は見たことのないもので、アーマーとかいい装備をしているからそこらのコロニーや生き残りじゃないし、でも州軍の装備とはまるっきり違う。
私たちと……いや、フェンリルと同じタイプの集団だとすれば不味い。
「フランちゃん待って」
「やる……!」
相手が次のアクションを起こす前にフランちゃんの弾丸が撃ち込まれて、倒れる。
「スコール、あいつらが来た」
『来栖だろ……あのマヌケ』
「うん」
『こっちは残りを州軍とぶつけて交戦状態に……とりあえず帰ってこい』
「分かった。帰ろ、ユキ」
「何が起きてるか分からないんですが……」
『州軍より強いからな。手出ししたらお前らじゃ死ぬ。とにかく帰ってこ――やべっ』
「スコールさん?」
『上見ろ上、フラン後は任せた』
空を見上げればものすごい数の悪魔がいた。
いきなり影が落ちたように現れて、あたりが暗くなる。
「いつの間に……こんなに」
「スコール。邪魔なやつ、消していい?」
『……誰がいる』
「剣使い」
『こっちのが行ったか。下がれ、勝ち目はない』
「ふん……ユキ、帰ろ」
「か、帰るのはいいけどあの人……」
フランちゃんに撃たれた人、アーマーの上から一点に撃ち込まれて震えてる。
人間だし悪い人じゃなさそうだし……マヌケって言われたくらいだからスコールさんの知り合いだろうし。
「大丈夫……ですか」
「お前、こっち側の人間だろ。なんでそいつと一緒にいやがる」
「それはどういう」
「とぼけんじゃねえぞ……世界を壊し」
パンッと、フランちゃんが目を撃ち抜いた。
「言わせない」
「フランちゃん、どうして」
「あれは敵。ユキと同じ人間、私たちとは違う本当の人間」
フランちゃんが走っていく。
死んだ人間のことを考えても仕方が無い。
あたり一帯の道は覚えているから置いて行かれてもいいけど、フランちゃんが心配だ。
とか思ってると銃声が響き始めて、空から灰が降ってくる。
「フランちゃん!」
「来ちゃダメ!」
曲がり角の向こうから声がして、血と肉片が飛び散った。
「フラン……ちゃん?」
カランと音がして、さっきフランちゃんが持っていた銃が血の上を滑る。
べちゃっと、目の前に落ちてきたソレは頭皮……フランちゃんの髪。
「えっ……」
「まだいるのか」
最初に見えたのは宙に浮かぶ剣。
ゆっくりと姿を見せたのは学生服の男性。
「なんですかあなたは」
「やれ、お前たち」
剣がいきなり襲いかかってくる。
「わひゃいっ!?」
首を狙って来たのを避けると足を掬われる。
起き上がる前に剣に囲まれる。
「いきなりなにするんですか!」
「使えそうにないな……切り刻め」
剣が一斉に向かってくる……。
どうして、なんでいきなり。




