壊レタ日常ノ中デ
日常が壊れてから数年。私たちは現実を求めることも出来ず、非現実が日常となりつつあるこの壊れた世界で生きている。
私たちはなにを求めて生きているのだろう? もう、この壊れた世界が完全な崩壊を迎えるのを待つしかないというのに。
でも。それでも、たくさんの仲間が居るこの変わらない日々を過ごし、私、ユキは今日も生きていくのです。
「と、言うわけで射撃とか立ち回りの基礎教本」
「……な、なんですこの本の山」
「同じ戦場に立つ以上、最低限これだけやってもらわないと――」
と、そこでバシッ!! と、本の山の向こう側でいい音が響いた。
「なぁーにしとるかー! ユキちゃんはまだ訓練生なんだぞ☆」
バシバシとハリセンで叩く音が響く。
あぁ……これナギサさんだ。
「あのなぁ? 指導教官である誰かさんが胸触る尻触る果ては脱がして辱める。そんな訳で女性陣……の、主に十代の教官希望欄にナギサ以外って書かれているんだがなぁ?」
うん、私も書いた。絶対にナギサさんだけはイヤですって書いた。昨日もシャワー中にいきなりおっぱい揉まれたから教官室の前の箱に文句書いて入れてきた。
なんでこんな人が教官クラスなのか。実力があるから仕方がない、性格以外はかなりいいから仕方ないの! ……ただ性格が残念すぎるだけで。ホントに性格さえよかったらいい人なのに。
「だからってさー。いきなりこれはないと思うよーこれは」
「これ、とは?」
「参考書の山」
「なに、読んで覚えろとか言うつもりはない。学校の詰め込み型なんて非効率なんかやる気はない。訓練場で実際にやる」
「あ、やる? やるってヤるのやる?」
ナギサさんが指で輪っか作って、刺したり抜いたりのジェスチャーを、
「あぃだだだだだだだっ!!」
「今からツバキと一緒に甲板に干してやろうか」
「お、おおおおぉぉぉおおおことわりなんだよアレは!!」
うわー耳が千切れそう。うん、知らない、見ない、聞かない、悪いのはナギサさんだ。
ていうか、ツバキさん何したんだろう。
「ユキちゃん! ヘルプヘルプゥゥゥゥ」
「知りません、ふんっ」
「つめただだだだぁぁぁぁっ!!」
「ユキ、訓練場にホノカたちがいるからそっち行ってろ。この変質者を吊してから行くから」
「はい、分かりました」
「吊すって何!?」
「二番艦のブリッジの防空砲の砲身に」
「落ちたら死ぬよぉぉーーーーー」
でしょうね。だってこの場所……私たちの所属する"フェンリル"の基地は空高くを飛ぶ巨大な船だから。
「ちょ、ちょマジ!?」
「大真面目だ」
ずるずる引きずって行かれるナギサさんを見送って、私は訓練場に向かった。
自分の部屋からお風呂に行くのにも一キロ以上歩いたことがある。ここは広すぎる。教室から訓練場まではそんなに離れていないけど、軽いお散歩くらいの距離がある。
しばらく歩いていれば廊下にナギサさんの叫び声が響く。自業自得だから仕方ないんだろうけど、声が響く度に他の人たちがびっくりしている。
「あ、ユキちゃんあれ何があったの」
「ハルカさん……えっと、さっきナギサさんが……」
「あーね、いつものね。てことはまたしぼられてんの」
「ですねー」
いつものことと、苦笑いしながら訓練場へと入っていく私だった。もうこれが日常になっていて……。
日がなオオカミの日常第二弾!!
……他の日がなシリーズが進まないので書きました、はい。