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きっと、僕の魂が覚えてる。  作者: 長月
第一章
9/39

見知らぬ場所で〈6〉


前回投稿より 1ヶ月以上経過……すみません……。やっとこの物語の中核となる主人公の特性に(一部)触れることができました。

 


 ♢




「じゃあ改めまして……だな。俺はグレン、一応ここのギルドマスターをしてる。よろしく頼む」

「僕はカーティス=ルモンド=クロアドールです。そこにいるエレシアの父ということになるかな。今後よろしく」

「……イオリと申します。お会いできて光栄です。僕の方こそよろしくお願いいたします」



  笑顔とともに順に差し出された手を握り返し、挨拶を交わし合う。

  練習場にて初対面(はつたいめん)を果たしたあの後、周囲に人目もあったためとりあえず場所を変えて話そうということで、ちょうど測定の準備が整ったと僕たちを呼びに来た受付嬢に案内され 5人で検査を行うという部屋へとやって来ていた。


  なぜ 5人なのかというと、エレシアさんが「すいません、少し席を外します」と言って途中で離れていったからだ。彼女は僕たちの輪から離れた直後、周囲で遠巻きに様子をうかがっていた冒険者たちに囲まれ質問攻めにあっていたようだったが、それも仕方ないことだろうと思った。なにせこの地を治めるクロアドール男爵とギルドマスターの両名が揃っているのだ、注目が集まるのも必然と言えた。


  ともあれ、僕たちは受付嬢の案内に従って 5人で検査室の椅子に腰を下ろした。座席は僕から見て左から、受付嬢、グレン氏、カーティス氏、そしてグレン氏の向かいに僕が座り右隣にはナノヤさんが腰を落ち着けた。



「しっかし……(うわさ)では聞いちゃいたが、お前ほんとに藍色の髪に紫の瞳なんだな。すごい色っていうか……なんか神秘的、って言やぁいいのか ? 」

「神秘的か。言いえて妙だけど、グレンとはまるで正反対にある言葉だね」

「うるせぇよ」


  笑顔でさらりと毒を吐いたカーティス氏は、耳にかかる程度の長さの青色の髪にエレシアさんと同じ(みどり)の瞳をもち、すらりと均整のとれた長身の美丈夫。

  そしてその隣で腕を組みながら不機嫌そうにカーティス氏を睨みつけているグレン氏はスキンヘッドに三白眼(さんぱくがん)強面(こわもて)、服の上からでも分かるほど(たくま)しい筋肉を持ち、“これぞ冒険者” とでも言いたくなるような体躯(たいく)の持ち主だ。


  この 2人を肩書きなしに見るとして、失礼を承知でもっと分かりやすく例えるとするならば、“物腰柔らかな貴公子” と “ガラの悪いチンピラ” といった異色の組み合わせだ。少なくとも 見た目だけではこの 2人が冗談を交わし合うような親しい間柄だとは思えないだろう。


  そんなことを僕が考えていると、ガチャリとドアノブを(ひね)る音がしてエレシアさんが部屋に入ってきた。



「ーーお待たせしてすみません、ただいま戻りました」

「あぁ」


  気にすんな、と言って鷹揚(おうよう)に頷くグレン氏に一礼すると、エレシアさんはワインレッドの膝丈スカートをひらりと揺らして空いていた僕の左隣に座った。そして先ほどまでは持っていなかった水色のタオルを僕に向けて差し出す。


「イオリさん、汗をかいていたようだったので。冷えて風邪を引いたら大変ですし、良ければ使ってください」

「……わざわざすみません、使わせてもらいます」


  女性らしい細やかなその気遣いにありがたくタオルを受け取ると、エレシアさんははい、と言って軽く微笑む。僕は自然と和やかな空気が流れるのを感じていたが、その様子を反対側から見ていたカーティス氏がぽつりと呟いた。



「…… へぇ。2人は、随分と仲がいいようだね ? 」

「……」


  反射的に振り向くと、そこには机の上で指を組みながら穏やかに微笑むカーティス氏の姿があった。しかし、その優雅(ゆうが)な笑みの中で唯一その翠の瞳だけが笑っていない。心なしか “随分(ずいぶん)と仲がいい” という部分を強調して言葉を投げかけてきたカーティス氏に、僕は内心冷や汗をかいていたが表情には出さなかった。


「……エレシアさんにはとてもお世話になっています」

「うん、仲がいいのはとても良いことだね。それでイオリくん、君はここに来てどのぐらい経つのかな ? 」

「今日でちょうど 7日目になります」

「そうか……」


  そこで一度言葉を切ったカーティス氏は考えるように首を傾げながら、



「ーーそういえば、噂によると君はここ(クロアドール)に来るまでの記憶を失っているらしいね。それは本当なのかな ? 」


  まるで世間話でもしているような気軽さでさらりと核心に切り込んで来たカーティス氏に、部屋の空気がピンと張り詰めるのを感じる。

  その中で、僕の表情の変化を見逃さないようじっと観察するような眼差しを向けてくるカーティス氏と向き合いながら、僕は『無表情だから何を考えているのか分からない』と言われ続けてきたこの短所は、ある意味長所なのかもしれないと場違いにも考えた。



「……えぇ。自分の名前や年齢はすぐ頭に浮かんできたのですが、それ以外の記憶に関してはところどころ穴があるような状態です」

「うーん、そうか……」


  そう呟いたきり再び黙り込むカーティス氏についに耐えきれなくなったのか、身を縮めて居心地悪そうに話を聞いていた受付嬢がおそるおそるといった様子で右手を挙げた。



「あ、あの……そろそろイオリ様の適正検査を行ってもよろしい、でしょうか……」

「あぁ、そうだったな。じゃあ頼むぞ」

「はい」


  グレン氏に許可をもらいホッとしたような顔をした受付嬢は、テーブル下の足元に手を伸ばし何かを取り出した。テーブルの上へコトリと音を立てて置かれたのは、手のひらサイズの漆黒(しっこく)の板にそれを塗りつぶすように大きく白色で描かれた魔法陣。それを僕の方へそっとスライドさせた彼女は、姿勢を改めると説明を始めた。



「まずは、イオリ様が魔術を使用される際どの属性に適正があるのかをこちらの魔法陣で検査いたします。魔法陣の上に利き手をのせてください」


  指示通り利き手である右手をそっとのせると、魔法陣に触れた部分から魔力が吸い取られていくのが感覚で分かった。


「あとは魔法陣が自動でイオリ様の魔力を吸収して発動しますので、少々お待ちください」

「分かりました」



  彼女の言葉に首肯すると、目の前の魔法陣が色水(いろみず)を流しこんだように中心から端へ向かって白から紫色へ変化していく。

  やがて魔法陣を形作る曲線たちが全て紫色に染まると、魔法陣が輝きパッと周囲を淡く照らし出した。その光景をじっと息を呑んで見守る僕たちの前で、突然魔法陣の中から 7つの光の粒がフワリと浮き出てくる。


  それぞれがまるで意思をもったように自由自在に辺りを飛び回った光たちは、キラキラと光でできた軌跡(きせき)を宙に残しながら横一列になって僕の目の前に移動してきた。


  こうして近くで見てみると、親指の第一関節程度の大きさの 7つの光たちは 赤、青、緑、茶、黄、白、黒の 7種の色彩をもっていた。そのうち、白の光だけが寿命が近くなった電球のようにチカチカと不規則に明滅(めいめつ)を始め、その輝きがだんだんと失われていく。

  そして最後にはまるで力尽きたように、宙に光の粒子を残して霧散(むさん)した。



「……おぉ ? 」



  すると、反対側で静かに見守っていたグレン氏が何やら驚いたような声をあげていたが、その間にも光たちは徐々(じょじょ)に形を変化させていく。白以外の、その場に残った 6つの光球(こうきゅう)が再び音もなく動き出すと、間隔(かんかく)をあけて綺麗な円を形作るように宙に並び直した。


  そしてその中から黒の光がふわりと円から抜け出すと、円より一段高く位置するようにして一つぽつんと宙に(とど)まった。そのままじっと動きを見守っていると、黒の光は内側から押し広げられるように少しずつ膨らみはじめ、最終的には野球ボールほどの大きさになって停止した。


  それっきり全ての変化を終えたのか沈黙する光たちを前に、僕はこの 6つの光はもしや魔術の各属性を表しているのだろうかと考えた。もしそうだとすれば、この一つだけ明らかに大きさの違う黒い光球は闇属性、ということになるのだろうか。


  ミラーボールのようにキラキラと輝きを放つ光たちを見つめていると、部屋にいる僕以外の全員が目を見開いて絶句していることに気づいた。



「これ、は……すごいね……」

「基本属性 5つに “闇”持ち、だと…… ? エレシアちゃんとほぼ同じパターンだな……」

「私も10年近くこの仕事(受付嬢)をしてきましたが、 “闇”持ちの方は初めて見ました……」



  そう言って興奮したように頰を紅潮(こうちょう)させている受付嬢の横で、グレン氏とカーティス氏は揃って宙に留まる 6つの光を目を細めて覗きこんでいる。

  その様子を見て、僕は隣で興味深げに光球を眺めていたナノヤさんに自然と声を潜めながら尋ねた。



「……ナノヤさん」

「あ、あぁ……なんだ ? 」

「この、黒い光球が一つだけ輪から飛び出しているのは何故ですか」

「あぁ……それか。えーっと、まずこの光はそれぞれ『赤が “火”、青が “水”、緑が “風”、茶色が “地”、黄色が “雷”、白が “光”、黒が “闇” 』っていう具合に各属性を表してんだ。さっき途中で白のやつが消えただろ ? 」

「はい」

「だからお前は白……つまり “光”以外の魔術なら使えるってことだな」

「へぇ……」


  そしてナノヤさんは未だ宙に留まる黒い光球を指差して続けた。


「で、この黒いやつだけデカいのはお前が適正がある 6つの属性のうち “闇” 属性に対する適正が 1番高いってことだ。要するにイオリが魔術の中で 1番使いやすいのは “闇” 属性、ってことになる」

「なるほど……」



  確か “光”と“闇” に適正を持つ人間は全人口の約 0.1%しかおらず非常に(まれ)な存在であり、エレシアさんがその 1人だと聞いていた。しかし僕もその中に含まれるということを聞かされ、その希少さがいまいち実感できていない僕はただ静かに頷くことしかできなかった。


  その間に光球たちを見ながらカーティス氏や受付嬢と難しい表情で話していたグレン氏は、ふと腕を組み直して考えこむように数秒沈黙すると、僕に向き直って口を開いた。



「……イオリはただでさえ目立つ存在だってのに、こんなのがあったんじゃ余計まずいだろうな……属性いくつか隠してやろうか ? 」

「……隠すとはどういうことですか」

「あぁ。普通ここ(ギルド)で発行されるギルドカードっていう身分証みたいなやつには、冒険者登録するときに測った適正検査の内容も載せることになってるんだが。たまーにお前みたいな規格外のやつもいたりする」



  まぁ規格外って意味ではエレシアちゃんも同じってことになるがな、と付け足し、



「……そういう奴らは何かとトラブルに巻き込まれることも多いし、本人が希望すれば情報をいくつか隠してギルドカードを発行することになってるんだ。ま、ギルド側の配慮ってやつだな」

「……普通、属性は 1つか2つ適正をもっている方が多いと聞きました。そうすると、逆に僕はどの属性に絞ればいいのか判断が難しいのですが」

「あぁ、それもそうだな。……確かエレシアちゃんは “風”と“光”の 2つに絞ったんだったか ? 」

「はい、私の場合は生まれたときから “光”持ちということが街の人にも伝わっていたので特に隠す理由もありませんでしたし……」



  貴族というのは通常屋敷に測定器が設置されているため、子どもが生まれたときには必ず魔術適正を調べるのだそうだ。エレシアさんに “光”属性の適正があるという話は、当時瞬く間に街中に広がったのだとナノヤさんが教えてくれた。



「イオリの場合はどうするかだな……」

「じゃあ水属性はどうです ? 」

「 ? 何でですか ? 」


  僕と同じ疑問を持ったのかエレシアさんが僕の肩越しにナノヤさんに尋ねた。すると彼はテーブルに頬杖をつきながら再び適正検査の結果を指差す。その先には、青の光球が浮かんでいる。


「お前、若干ではあるけど水属性も得意みたいだな」

「……本当ですね」



  ナノヤさんに言われてよく観察してみると、“火”、“水”、“風”、“地”、“雷”の中で青色、つまり “水”属性だけが一回り大きくなっていることに気づいた。僕が頷くのを見て、ナノヤさんは身体の力を抜いて背もたれに体重を預けた。



「どうせ使うなら得意な属性の方がいいだろうし……何よりイオリに 1番似合うからな。お前が(宿屋)の酒場で勉強したり出入りしてんの見て、女どもに影で何て呼ばれてたか知ってるか ? 」

「……知りません」

「 “氷の王子様(プリンス)” だとさ」

「………………はぁ」


  その羞恥(しゅうち)しか感じない恥ずかしい呼び名は何なのか。思わず間抜けな声が口から(こぼ)れ出た。そんな僕を見て笑いを隠しきれないといったように肩を震わせるナノヤさんは、


「お前のその美少年っぷり(見た目)と無口なとこ、クールな視線が冷たい氷を連想させる。でもそこがいい ! ってよ」

「…………」

「あっはっは ! 」


  憮然(ぶぜん)と黙り込んでいると、余程僕の反応が面白かったらしくナノヤさんはバシバシと自身の太腿(ふともも)を叩き声をたてて笑った。



「ははは………はぁ、まぁそんなわけでお前が “水” 属性に適正ありってなれば、みんな納得するだろうってことだ。水属性には氷を扱うような魔術もあるからな、“氷の王子様(プリンス)” にもピッタリだろ ? 」

「……嫌がらせですか」


  ブホッ、と吹き出すナノヤさんを黙殺(もくさつ)する。視界の端でエレシアさんがクスクスと笑みをこぼしているのが分かったが、もう気にしないことにした。


  ともかく僕の見た目に適正のある属性が一致していれば、人々の目は必然的(ひつぜんてき)にそちらの方にいくため隠すべき情報、要するに「属性が多い」ことのカモフラージュになりやすい、ということをナノヤさんは言っている。

  僕が情報をそう整理していると、正面のグレン氏が考えるように(あご)に手を当てながらトントン、とテーブルを指で叩いた。



「そうだな……じゃあギルドカードには “水” 属性と…… “雷”はどうだ ? 水と雷は相性もいいし、魔術のバリエーションも増えると思うが」


  そう提案されたが、僕はまだ魔術について少しかじった程度の知識しかないため、相性がどうという難しいことは分からない。逡巡(しゅんじゅん)した後、ひとまず彼らを信じてお願いしますと頭を下げた。



「おぅ、じゃあ今後お前が魔術を使うときは “水”と“雷”の 2種類で決定だな。……次に測るのは魔力量か。おい」


  くい、と(あご)指図(さしず)するグレン氏に受付嬢は慣れたように頷き、再び足元から何かを取り出した。先ほど使ったものは手のひらサイズの黒の板だったのに対し、今度は一見なんの変哲(へんてつ)も無い透明な石。この世界に来てから何度も見てきた “魔石”だ。



「魔石に関しては、これまでにも使用されたことがあるとナノヤ様からお聞きしております。先ほどと同じように、手のひらをのせていただければ魔力の総量を測定いたします」

「はい」


  頷いてそっと右手を持ち上げようとした瞬間、テーブルの下でツン、と膝を突かれるのを感じた。反射的に右隣を見ると、ナノヤさんは僕に視線を向けることなく、ただ頬杖をつきながらジッと何かを睨みつけている。その視線を追った先には、正面にいるグレン氏とカーティス氏の 2人が周囲(僕たち)に悟られないようにか、無言のまま意味深な視線を交わし合っていた。


  やはり、2人には何か目的があり企んでいることがあるのかもしれない。おそらくナノヤさんも同じ結論に至ったのだろう、『彼らに気をつけろ』と忠告しているのだということを悟り、僕は小さく頷き返した。


  目の前の 2人から向けられる熱い視線を感じつつ、覚悟を決めてそっと右手のひらを魔石の上へのせた。その瞬間、体内からグンと魔力が失われていくのが分かる。それに加え、この魔石はなかなかの量の魔力を使用するらしく魔法陣の発動までが遅いように感じる。



「……意外と長くかかるのですね」

「そうですね。この魔法陣は……」


  これまでにない速さで吸い取られていく魔力に驚いていると、横から僕の手元を覗き込んで怪訝(けげん)そうな顔をしていたエレシアさんが、突然何かに気づいたようにハッと息を呑んだ。



「これっ……、イオリさん、早く手を離して ! 」

「え……」

「早く ! 」


  言うが早いか、すごい剣幕(けんまく)のまま僕の腕に飛びついてきたエレシアさんに目を丸くする。その行動に反射的に魔石から手を持ち上げようとして、僕は再度驚きで目を瞬いた。



「手が、離れない……」

「やっぱり…… ! イオリさん…… ! 」


  何か訳知り顔なエレシアさんも、途中で僕の手に触れてしまったからか糸で縫い止められたように手を離すことができないようだった。僕たちがそうして抵抗している間にも、ついに魔法陣は輝きを増して発動の準備を終えたことを示した。


  魔石の中に刻まれていた魔法陣はまるでスクリーンを使ったかのように、直径 2メートルに届くかという大きさに拡大されたものを空中に映し出した。背景が()けて見えるほど半透明(はんとうめい)になったその魔法陣を半ば呆然と見つめていると、それは一度天井に届くほどの高さまで上り、一瞬停止した後僕たちに向かって真っ直ぐ急降下してきた。



「 、っ 」

「きゃっ……」

「イオリ !? 」

「エルッ ! 」



  迫り来る魔法陣に悲鳴(ひめい)が聞こえたが、僕たちは(いま)だ張り付いたままの手のせいで逃げることができない。固まったのは一瞬で、僕は咄嗟に自由に動く左手でエレシアさんの頭を伏せさせるように押し込めた。

  そして僕たちの身体を魔法陣が通り抜けた瞬間、視界がブレる。



 ーーーードクン。


「っ、……っう…… ! 」



  脳を直接手に持って上下に揺さぶられているかのような強烈な不快感。平衡感覚(へいこうかんかく)を失った僕は、気がつくとエレシアさんとともに椅子から崩れ落ちていた。

  やっと魔石から離れた右手でぐらぐらと揺らぐ頭を支える。そんな僕に体重を預けているエレシアさんは、既に先ほどの衝撃で意識を失っているようでそのサラサラの長い銀髪が僕の頰に触れていた。



「おい、大丈夫かイオリ !? 」

「……」

「おいっ、返事しろ ! 」

「ーーーー」


  ナノヤさん、と答えようとした声が口から出ることはなかった。

  再びグニャリと地面が揺れたと思った瞬間、僕の意識は暗転していた。






思いの外長くなってしまったので 2話に分けます。

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