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きっと、僕の魂が覚えてる。  作者: 長月
第一章
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旅の途中で〈7〉



 夕食時、早速ラファに異世界について質問をすることにした。


「それで、ラファ。異世界について教えて欲しいんだけど。探したけど本とかにも載ってなくて困っていたんだ」

「そうだろうね。俺も本では見たことがないなぁ。旅する中で言い伝えとして聞いたぐらいだからね」


 と話したラファは頼んでいたお酒を一口口に含むと、ステーキをフォークとナイフで切りながら、


「異世界なんて眉唾物(まゆつばもの)だと言う人もいるけれど、実はあると言われているよ。異世界から来た人のことを”稀人(まれびと)“と呼ぶくらいだからね。稀人は定期的に異世界からやってきているけれど、最後に稀人がこの世界にやってきたのは今からおよそ300年前のことだ。何か理由があって女神にこの世界に召喚されたとかで、使命を果たしたと言われているよ」

「使命?女神?」

「そう。女神はこの世界を創造した神のことだよ。女神が稀人にこの世界を救ってもらうために異世界から稀人を呼び出したとか。それで使命を果たしたら稀人は姿を消したそうで、そのままどこか山奥で生きていたとか使命を果たした時点で死んでしまったとか、諸説あると言われているよ」

「へぇ……」


 ステーキを口に含んで飲み込んだラファは続けて、


「でも、稀人が来るのは決まって世界の危機が迫っている時だとも聞いたことがある」

「世界の危機……」


 そこで思い出したのは、毎日見る夢の『この世界を救って』という言葉のことだ。エレシアもそれに思い至ったのか、僕のことをじっと見つめた。


「世界の危機とは具体的に何かわかるの」

「魔物が活発化している時とか、天変地異が起きた時とか……そんな感じかな。俺が知っていることと言えばこれくらいなんだけれど……お役に立ったかな」

「十分だ。ありがとう、参考になった」

「そう、なら良かった」


 にっこり笑うラファに近くのテーブルから見惚れている女性がいるのを見て、この人も目立つんだよなぁと僕は関係ないことを考えた。


「でもなんでこんなことに興味があるの?なかなか興味を持つ人はいないと思うけれど」

「たまたまだよ。僕の記憶を探すのに本を読んでいた中で気になったんだ」

「へぇ」


 嘘をついた。けれどそれが嘘だとは事情を知っているエレシアはともかく、マゼンタもラファもわかるまい。

 僕は無表情のまま一口大に切ったステーキを口に運んだ。

 女神が稀人をこの世界に召喚したという話は参考になった。毎日見るあの夢の声は女神のものではないかということ、僕がこの世界にやってきたのも女神の召喚によるものなのではないかと直感が働いたからだ。

 エレシアも考え込んでいる様子で、僕と同じ結論に至ったのかもしれないと思った。


「じゃあこれを食べ終わったら少し俺は出かけてくるからよろしくね」

「情報屋の方か」

「そう。早速今日の収穫を、ね」


 今日の収穫とは僕たちの情報のことだろう。商魂(しょうこん)たくましい様子に若干呆れたが、すぐ諦めた。


「そ。じゃあ先に寝てるから」

「あぁ、それでいいよ」


 機嫌良く食べ進めるラファに頷いて、僕たちも食事を進めた。

 やがてラファと別れて宿の部屋に戻った僕たちは、交代でシャワーを浴びた後いつものごとくそれぞれのベッドへと入る。ベッドサイドのランプを消し、エレシアと手を繋いで横になった。


「おやすみ」

「おやすみー」

「おやすみなさい」


 おやすみの挨拶をした後も、僕は今日のことを考えていた。少なくともこれまでにも僕以外にも異世界から来た人がいるという確信が得られたのは収穫だった。

 そのままいろいろ考え込んで眠れないでいると、やがてガチャリ……と静かに扉が開いてラファが戻ってきた。


「おかえり」

「あぁ、起きてたんだね」


 マゼンタとエレシアを起こさないように小声で会話を交わす。


「明日も早い。イオリも早く寝たほうがいいよ。俺が言うことじゃないけどね」

「眠れないんだ。それに寝ても……」

「?」


 あの夢のことを思い返す。寝ても寝た気がしないのだと言うことはまだ言わないことにした、いずれバレることだけれど。


「……いや、何でもない。おやすみ」

「そう?おやすみ」


 ガサゴソとラファがベッドに入る音を聞きながら、再度そっと目を閉じる。

 



 また、夢を見た。ただし、今日はいつもと夢の内容が少し違っていた。

 一面真っ白な空間でふわふわと浮いていると、光の球が目の前に現れ、いつもとは違う台詞(せりふ)をはいた。


『異世界からの勇者様。どうかこの世界を救ってください』

「勇者?」

『はい。あなたはこの世界の……ゆう、しゃ…………て、……されました………かつてと同じくあなたが………』


 初めてその男性か女性かもわからない中性的な声と会話できたことに驚くが、返ってきた言葉は途切れ途切れで意味が通じなかった。僕は再度聞き返したがもう声は返ってこなかった。

 光の球ももう消え去り、今度は闇がやってくる。(うごめ)く黒が僕を包み、縛り付ける。息もできないほどキツく締め付けられて、僕は息苦しさに喘いだ。


「かはっ……っふ、………くっ……』

『……オリ、イオリ!イオリ!』


 ふとエレシアの声がしてきた。それに伴って黒が徐々に力を緩めていく。僕はその隙をみて首に強く絡みついた黒を両腕で振り払った。首からしゅるりと黒が離れたところでトン、と地面に足をついて走り出す。後ろから(うごめ)く黒がズル、ズル、と音を立てて着いてきているのがわかっていたが、僕は構わず前に走った。やがて光が差し込む場所が遠くに見えてくる。僕はその光目掛けて全力で走った。徐々に光が近づき、眩い光の中に入ったと同時に意識が浮上するのがわかった。


「イオリ、イオリ!」

「はぁ、はぁ、はぁ……エレシア……」


 僕の声にホッとした顔をするエレシア。また起こしてしまったようだ。ベッドの(そば)にはマゼンタとラファも立ってこちらを覗き込んでいる。僕は片手をついて上半身を起こし、汗をかいた額を手の甲で拭った。


「みんな、起こしてしまって本当にすまない」

「いや、それは構わないけれど……君、毎日同じ夢を見てるんだって?医者にかかって診てもらった方がいいんじゃないかい?毎日それじゃ体がもたないよ」


 と眉間に皺を寄せて話すラファは僕を心配してくれているのがわかったために、僕はラファに向けて微笑んだ。


「ありがとう、心配してくれて」

「!い、いや、別に……」


 何故か急に(ども)り出すラファとそれを見てケラケラと笑うマゼンタに内心首を傾げながら、僕はゆっくり3人を見回した。


「本当にすまなかった。みんなももう一度寝てほしい」

「そうだねぇ。まだ夜だしもう一眠りしようかねぇ」

「そうだね」

「本当に大丈夫ですか?」


 そう心配そうな表情をしながらタオルで汗を拭ってくれるエレシアの片手をそっと手に取って、僕は再度にこりと微笑んだ。


「あぁ、夢の中でエレシアの声が聞こえてきた。それで目が覚めたんだ、起こしてくれてありがとう。今度話したいことがあるんだけど、いい?」

「……はい!」


 僕は今日見た夢の内容をエレシアにも伝えようと思った。

 そしてようやく笑顔を見せてくれたエレシアに安堵して、僕たちは再度ベッドに入った。エレシアと左手を繋いで体温を分け合う。

 その後は夢を見ることもなく、穏やかな気持ちで眠ることができた。



◇◇◇



 翌日、僕は昨日起こしてしまったことを再度みんなに謝った。みんなは気にしなくていいとむしろ僕を心配してくれたけれど、僕は毎日のように彼らを起こしてしまうことに罪悪感を感じていた。僕が黙り込んでいると、エレシアがさっと僕の着ているローブの(すそ)を掴んで、


「イオリが罪悪感を感じる必要はないんですよ。私たちにもその辛さを分けてください」

「そうだよ」

「!……ありがとう」


 まるで心を読まれたかのような言葉にビックリする。エレシアとマゼンタは微笑んでいて、ラファは腰に手を当て静かに僕たちの様子を伺っていた。


「君たちはいつも僕の欲しい言葉をくれるな。ありがとう」


 感謝するとにこにこと3人が頷いてくれる。本当に人がいいひとたちだ、と僕は思いながら足を踏み出した。

 今日も4人でダンジョンに挑むことになっていた。既に昨日までの2日間で1人あたり金貨6枚を稼いでいる。最初ダンジョンにお金を稼ぎに来る人もいるほどだと聞いた時は信じられなかったが、実体験して納得もいった。ダンジョンには多岐にわたる魔物が現れるため、ある程度の実力がないと討伐は難しいだろうと思ったからだ。何はともあれ懐も温かくなったが今後のことも考えてまだ稼いでおこうと考えた僕たちは、今日もダンジョンに来ることになったと言うわけだ。


「今日も昨日と同じように、前に僕とマゼンタで行こう」

「わかったよ」

「了解」

「わかりました」


 僕の言葉に頷く3人を見て、転移の魔法陣へと向かう。またエレシアに詠唱してもらって移動することにした僕たちは、魔法陣の上に立った。

 その緻密な模様の描かれた魔法陣をじっと見つめる。


「…………」

「イオリ?発動しても大丈夫ですか?」

「あぁ、すまない。よろしく頼む」

「はい」


 エレシアの合図で転移魔術が発動する。昨日引き返したところと同じ地点へとやってきた僕たちは、早速前へと進むことにした。


「にしてもさすがというかなんというか、ハイペースだよね」

「何が」

「ダンジョンの攻略スピードだよ。普通こんなにハイペースで攻略できるパーティーはなかなかいないよ」

「そうなの」


 ラファの言葉に僕がマゼンタに尋ねると、マゼンタは首を縦に振って、


「そうだねぇ。同じCランクの冒険者でもこの1/3くらいのペースじゃないかい?あたしらの場合はエレシアみたいな魔術師もいるし、魔物が出てきてもすぐ倒しちまうからね」


 他の冒険者たちの約3倍のスピードで進んできているということに驚く。そんな実感はなかった。


「へぇ……」

「まぁあたしらはあたしらのペースで進めばいいだけさね」

「そうだな」


 マゼンタのまとめの言葉に頷き、ダンジョンを進み始める。その日は特に苦戦するような魔物が出てくることもなく、無事宿へと帰ってくることができたのだった。

 夕食を食べ終えて部屋へ戻るなり、マゼンタが  


「今日はあたしから風呂に入ってもいいかい?なんだか疲れちゃって眠いんだ」


 と、あくびをしながら言うので僕とエレシアはそっと頷く。


「どうぞ」

「いいですよ」

「じゃあ俺はちょっと外に出てこようかな」

「行ってらっしゃい」

「あぁ」


 続いておそらく早速情報を売りに行くのだろう、さっさと荷物をまとめて部屋から出て行くラファに苦笑する。そしてマゼンタが着替えを持ってバスルームに消えていったのを確認してから、僕はエレシアとの周囲に防音結界を張った。


「昨日言ったけど、エレシアにちょっと話したいことがあって」

「なんでしょう?」

「昨日も僕がいつもの夢を見たのは知ってるよね」

「はい」


 真剣な表情で頷くエレシア。昨日も夢のせいでみんなを起こしてしまったので、忘れるはずもなかった。


「でも昨日は夢の内容がいつもと少し変わってたんだ。『異世界からの勇者様。どうかこの世界を救ってください』って声の主に言われたんだ」

「勇者様、ですか?私の夢はいつも通りでしたけど……」

「そうなんだ。何が違うんだろうね」

「やっぱりラファから異世界人についての話を聞いたからでしょうか」

「そうかもしれないな……」


 正直、心当たりといえばそれくらいしかなかった。


「またこれから何か知る度に夢の内容も変わっていくのかもしれませんね」

「そうだな」


 エレシアの考察に頷く。僕も同じことを考えていたからだった。


「これからも悪い夢を見ていたら起こしますからね」

「あぁ」

「他にも、何か変わったことがあったらその都度話してくださいね」

「ありがとう」


 そう言うエレシアに返すと、彼女はゆったりと安心したように微笑んだ。

 そのまま異世界について議論を交わしていると、マゼンタが髪からポタポタと雫を垂らしながら部屋へと戻ってくる。小さく指を鳴らして僕たちの周りの防音結界を解く。 


「お先に風呂もらったよ。次はどっちが入るんだい?」 


 マゼンタの問いにエレシアと顔を見合わせる。


「エレシアが先どうぞ」

「わかりました。先にいただきます」


そう言って着替えを持ってバスルームに入っていくエレシアを見送る。そして僕もその後風呂に入って出てくると、すでに部屋の電気は消えていてベッドサイドのランプのみとなっており、マゼンタはベッドに横になって寝息を立てていた。


「寝ちゃったんだな」

「そうですね、よほど疲れてたみたいですね」


 僕は髪をタオルで拭いながらそう小声で会話を交わす。そして再びベッドに座るエレシアの隣に腰掛けた。

 ドライヤーで乾かし終わったのか、綺麗な銀髪が月明かりに輝いている。僕は思わずエレシアの髪を一房手に取って、そっとその髪を()いていた。


「髪、乾かしたんだ」

「えっ、は、はい」


 僕が手に取った自分の髪を見てポッと頬を赤らめるエレシアに微笑む。それにさらに顔を赤くするエレシアを見て、僕はベッドの布団をめくった。


「……さ、そろそろ寝ようか」

「そ、そうですね」


 いそいそと2人でベッドへと入る。ベッドサイドのランプを消して、いつも通り手を繋いで横になった。


「じゃあおやすみ」

「はい、おやすみなさい」


 挨拶を交わして、そっと瞼を閉じる。今日は夢を見ないで寝ることができるといいな、と思った。



◇◇◇



 翌朝、いつものように起きて身支度を整える。結局昨夜も夢を見てエレシアを起こしてしまった。ちなみに、マゼンタは昨日よほど疲れていたとみえて熟睡していたし、ラファに至っては何時に部屋に戻ってきたのかもわからなかった。

 朝食を食べながら、今日の予定について話し合う。今日はダンジョンに入るのはやめて1日休みにしようということになった。僕は早速本屋巡りでもしようかな、と計画を巡らせた。


「イオリは今日何するの?」

「僕は本屋巡りでもしたいなと思ってたところ」

「それ、俺も着いてっていいかな。俺も魔術書とか探そうと思ってたところだったんだよね」

「いいよ」


 僕がそう言うと、ラファが飲み物を飲みながら笑顔で頷く。


「ありがとう。その代わりと言ってはなんだけど、この前言ってた転移魔術について解説してあげるよ」

「あ、それはもう大丈夫」

「ん?」


 不思議そうな顔をするラファに僕は、


「もう暗記して解読したから大丈夫」

「暗記したぁ!?あの複雑な転移魔法陣を?いつ?」


 すっとんきょうな声を上げるラファに僕は焼きたてのクロワッサンを(かじ)りながら、


「いつって……ダンジョンに行った時」

「あんなほぼ一瞬で?」

「僕、1度見たものは忘れないたちなんだ」


 そう、この特技のおかげでいつも地球の学校のテストでも首席を守れていたというわけだ。僕がそう告げると、3人が呆れたような顔をした。


「1度見たら忘れないってどんなだい……」

「すごすぎだよ……」

「そうかな」


 と返す。未だ呆れたような顔を隠さない3人を尻目に僕は黙々と食事を続けた。

 食後、マゼンタとエレシアとわかれてラファと本屋へと向かう。マゼンタは街巡りに、エレシアはカーティス氏に手紙を書くため宿に残ると言っていた。

 ともあれ街に出てラファと本屋に着くと、それぞれ狙いのコーナーへと向かう。ラファは魔術書コーナーへ、僕は伝記のコーナーへと向かった。いつも通り異世界というキーワードが載っていないか探すけれど、見つからない。僕は諦めて開いていた本をパタンと閉じた。


「やっぱりないか……」


 ひとりごちて、僕はラファのいる魔術書コーナーへと向かう。ラファはいつになく真剣な表情で本を選んでいた。


「ラファ」

「あぁ、イオリ。目当てのものは見つかった?」

「いや、なかったから他に何かあれば買おうと思う」

「そっか」


 隣に並んで、僕も魔術書を手に取る。最近は魔術のレパートリーも増えて、今度は魔術について研究をしたくなってきたので今は解説書などを買って読み漁っているところだった。たまたま手に取ったものが興味を惹かれるもので、つい読み(ふけ)ってしまう。そのまま何分経ったのかわからないが、ラファに肩を叩かれてハッと意識を戻した。


「イオリ、大丈夫?」

「すまない、完全に本に集中してた」

「だろうね」


 肩をすくめるラファにもう1度謝って、手に持った本を掲げる。


「僕はこの本買ってくるよ」

「俺はこの本とこの本かな。そろそろ出ようか」

「あぁ」


 ラファの持っていた本も僕と同じく魔術に関する解説本だった。2人でそれぞれ会計をして、店を出る。そのまま宿へと向きを変えた。

 僕はそこである疑問を口にした。ラファがハーフエルフだと聞いてからずっと思っていたことだった。


「やっぱりエルフって魔術に興味をもつものなの」

「んー、人それぞれかな。別に魔術なんて使わずに武術一辺倒なやつとかもいたしね。単純に魔術に特化してる者の数が多いってだけだよ」

「なるほど、そんな感じなのか」

「イオリは人間にしてはものすごい魔力を持ってるよね」


 唐突な話題にぴく、と思わず眉が動くのがわかる。


「……そんなことがわかるの」

「エルフの血を引いてるなら魔力量を感じる能力には長けてるからね。具体的な量はわからないけれど、他と比べても圧倒的なのはわかるよ。恐怖心すら感じるほどに、ね」

「……確かに、ギルドの登録の時に魔力量が人よりかなり多いとは言われた」


 さすがにここで4300人分の魔力を持っているとは言わなかった。その情報を売られてしまうに決まっているからだ。


「ラファは魔力量はどうなの。魔術も使うんでしょ」

「俺もハーフエルフだけど、普通のエルフ以上に魔力はあるって言われたことがあるよ」

「それもすごいな」


 一般的に、エルフはこの世界に住む種族の中でも魔術に特化している種族であると言われており、その魔力も相当だと本で読んだことがある。ハーフでありながらそれと比肩(ひけん)するということはすごいことだと思う。


「まぁエレシアちゃんも見た感じ魔力が多そうだし、俺たちは少なくとも魔術師には困ってないってことになるね」

「そうなるな」


 頷いて、肯定する。少なくともこのパーティーで戦力的には問題ないと言えた。


「むしろBとCランクにしては過剰戦力だと思うけどね。イオリももう少しでBランクにいけるでしょ。そしたらAもあっという間だよ」

「それはさすがにないでしょ」


 Aランクといえば冒険者でない一般人にも名前が知られるくらい有名であり、その分昇格が難しいランクだと言われている。そもそもその数はこの大陸でも3桁に届くか届かないかくらいの数だと言われているくらいなのだ。そのくらいBランクとAランクの間には圧倒的なランク差が開いている。


 僕がそう否定すると、ラファはそうかなぁ、と首の後ろに手をやって歩きながら、


「俺はいずれイオリたちがAランクになるにかけるよ。予言しておくね」

「それはどうも」 


 軽く受け流して、そんな会話をしながら宿に戻る。部屋に入ると、エレシアが1人テーブルに向かってペンを進めていた。


「あ、2人ともおかえりなさい」

「ただいま」

「ただいまー」


 すぐさま立ち上がって紅茶を淹れてくれるエレシアにお礼を言って、僕たちは紅茶をいただくことにした。


「何かいいものは買えましたか?」

「あぁ、買えた」

「それは良かったですね」


 にっこりと笑うエレシアに僕も笑い返していると、横からふと視線を感じた。


「?なに、ラファ」

「いや、別にー?」


 どこか楽しそうなラファに僕とエレシアは顔を見合わせ、揃って首を傾げた。最近エレシアと顔を見合わせることが多くなったな、とふと思った。






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