廊下
思ったより早く書けた気がする。
放課後に化学係として課題を集めて持って来るように言われた。普通は面倒くさいと思うのだろうが同じ係でタカキと一緒になれるので、この仕事をするのは私にとって好きな時間だった。
私は窓を打ち付ける雨粒にため息が出る。
「雨ひどいなぁ、朝は霧みたいだったのに」
「最近よく降るよな。傘が手放せないわ」
私とは打って変わってさほどタカキは土砂降りを気にしていない。雨が好きなのかな。
集めたノートを私の方が少なめになるようにしているところとか、普段は歩くスピードがなかなかの速さなのにこういう時は人に合わせたりするところに気がきくな、と思う。
「あー、彼女欲しいわー」
誰に言うでもなくタカキがこの台詞を吐くのは何回目だろうか。そして私は決まってこう言う。
「隣にちょうど良い人がいるじゃん」
「誰のことだよ、というか知ってるだろ好きな子いるって」
もちろん知っているし、タカキから相談も受けている。さらに言えばタカキの好きな子とも話しをしたりしている。
「なら言っちゃえば良いのに」
「言えないからこうやってお前に相談してんじゃん」
今回はかなり惚れ込んでるなあ。もともと惚れっぽいのに奥手というやつのせいで私はタカキの相談係のようなものをずっとしている。
そんなに悪いやつじゃないし、一緒にいて気楽で楽しいのにな。もう少し自信持っても良いんじゃないかな。
突如足元が滑る。
「いったぁ……。廊下濡れてるし」
「大丈夫か?」
そう言いながらも最初に窓を閉め、散らばったノートを拾ってから手を差し出すあたりで、私はタカキの中でその位置なんだなとぼんやりと感じる。好きな子だったら真っ先に手を差し出すかな?タカキなら恥ずかしがってむしろ出せないかもな。
「ありがとう、しっかり掴んでよ」
差し出された手を力一杯握りしめ、立ち上がる。
いってぇよ、と言いながらもタカキも痛いくらいに握りしめ引っ張ってくれる。
「手が滑ってまた尻もちついても嫌だし。良いじゃん長い仲なんだしさ」
「何笑ってんだ?」
「あれ、笑ってた?なんて言うかね、良い位置だなって」
何言ってんだって言いたそうな顔をしている。
私はそんな疑問には答えず、タカキの拾ったノートを先程より少し多めに取り、タカキより前に立つ。
「スカート濡れてない?」
「濡れてるな」
「うわぁ、やっぱりかー」
けらけらと二人して笑う。
雨の日がほんの少し好きになったかもしれない。
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