バス停
急な雨に私たちは元バス停に駆け込んだ。
田舎のせいか廃れてしまい、今ではこうやって急な雨を凌ぐ以外に使うことはなくなっている。
「うわぁ、びしゃびしゃだよ。気持ち悪いなー」
「使うか?」
そういってユウキは既に濡れているハンカチを絞り、渡してくる。
私もありがとうと言い借りるが、ハンカチでどうこうできる濡れ方ではない。ユウキのそのちょっと抜けたところも純粋な優しさも私は好きなんだと胸が温かくなる。
空を見上げても一向に止む気配がない。
雨は好きだ。こうしてユウキと一緒に雨宿りをすることができる。言葉を交わさなくてもただ二人並んでいるのが心地よい。
ふと、隣を見るとユウキも同じように空を眺めていた。
静けさの中で雨が弾ける音だけが響く。
「あのさ、…………あ、やっぱりなんでもない」
「なんだよ、言えよ。別に怒ったりしないからさ」
「ユウキはさ……その、好きな子とかって……いる?」
「…………え?どうした急に」
顔が熱い、これが熱じゃない事くらい私にだって分かる。ユウキは不思議そうな顔をして私を見る。
鈍感なんだから。
「私さ、ユウキのこと……好きなんだ」
気のせいだろうか、雨音が強くなっている。体温が上昇しているのが分かる。
何とか言ってよ。
雨音だけがずっと耳に残る。
「…………ごめん」
音が消えた。何度も何度もユウキの音が耳に響いてから雨音が強く強く響き、他の音をかき消していく。
気がついたら、バス停から飛び出していた。
「雨、止みそうにないから走って帰るね」
視界がぼやけているのはきっと雨が強いから。
胸が寒いのはきっと雨に打たれているから。
息が苦しいのはきっと走っているから。
雨は好きだ。こうして気持ちが溢れて止まらなくなっても誰も気がつかないように隠してくれる。できることなら私も隠してくれたのならよかったのにね。
書きたくなったら書くようなやつなので不定期ですが目標10万文字数くらいはいきたいな。
感想とかいただけたら嬉しいですね。