プロローグ
こんばんは
スーパー見切り発車です
太陽の光を一筋も通さない漆黒の雲。轟音と共に迸る紅蓮の雷。魔界を顕現したような空の下。とある浮遊島の上で二つの閃光がぶつかり合っていた。
一つは眩いばかりの白金の光、もう一方は闇と見まがうほどの黒い光。二つの光は時に衝突し、絡み合い、暗雲の空の下を縦横無尽に駆け巡る。いくつもの爆音と衝撃が宙を揺らし、無数の軌跡が暗雲に刻み込まれた
......どのくらいの時間がたっただろうか、その時は唐突に訪れた。
先に仕掛けたのは黒い閃光だった。突如ひときわ大きく輝いた黒い閃光はその光を肥大化させたのだ。
急速に広がっていく黒の周辺は色が失せ、灰色に変色していく。まるで世界そのものを浸食している「黒」。それに応えるかのように白い閃光も輝きを増すが、黒い光とは逆に輝きを収束させ始める。しかしその輝きは黒い光とは比較にならないほど煌めいていた。白い光に中てられたのか、急激に大きさを増す黒い光。対して反比例するように小さく輝きを増す白い光。
ふたつの光が大気を唸らせ、大地が共鳴を始める。極限まで高まる緊張感。眩いまでの光が空間を塗りつぶした、刹那。轟音と共に二つの光が混じりあった。極限まで高まった力は浮遊島にあったすべてのものを消し飛ばし、二つの極光は柱となって暗雲と轟雷を穿つ。
しばらくして徐々に薄れていく光の柱。発生源である浮遊島はその地表のほとんどがクレーターと化していた。穿たれた雲の合間から、光が差し込む。照らし出されるのはクレーターの中心。そこには倒れ伏す青年と、白金に輝く拳を天高く突き上げる小さな少年の姿があった。倒れている青年を確認するとゆっくりと拳をおろす少年。その小さな体躯は白い粒子となって離散し始めていた。肩の力を抜き、空を仰ぎ見る少年。そこには青い空があった。
その空を見て少年は何を思ったのだろうか、少しだけ微笑み、そのまま光となって……消えた。
アストレア暦2000年。
百年周期に発生するといわれる魔王と勇者の戦争、通称百年戦争。
様々な災禍と悲劇を振りまいてきたこの戦争は二十代目の勇者によって完全なる終止符を打たれることになる。
驚くべきことにこの戦争を終わらせた二十代目の勇者は十歳の童子で歴代最年少の勇者であったといわれている。
年齢もさることながら、この幼い勇者は様々な異名と逸話をを持っていることでも有名である。その数は優に三桁を超えており、何か行動を起こすたびに逸話になるレベルの大事件に発達することでも有名であった。。
そんな二十代目の勇者であるが、彼を語るときに外せないものがある。
それは今までの勇者にはなかった戦闘スタイルである。
「徒手空拳」......一切の武器を使用せず、小さな体躯のみを使い数々の敵を打ち倒していった様は二十代目勇者の代名詞であり最も有名な異名としても語り継がれている。
輝き迸る聖なる拳を持って悪を絶つ勇者、すなわち......「聖拳の勇者」と。
できる限り続けようと思います
拙い文章ですがよろしくお願いします