第2話 厳然たる事実
—「はい。え〜華坂君。当社にとっても大変残念だけど、君は休職となる。」
え!?え〜〜〜〜〜〜!?
キュウショク?キュウショクって何?給食?求職?休職?
この中だと、さっきの社長の発言に合うのは・・・・求職か休職?
いや、休職か・・・・
休職ってなんだっけ?
職を休む・・・・ふむふむ。
なるほど、ああ〜よく学校の女性の先生が妊娠してなるやつだ〜。
思い出した〜〜。
・・・
・・・
ちょっと待って!!
私別に妊娠なんてしてないんですけど!!
それ以前に未だ独身なんですけど!!
じゃあなんで休職!?
・・・
もしかして最近の勤務態度が悪かったから??
ちょっと待って!!私“休職”になるくらい態度悪かった??
おかしくない!?
意味わかんない!?
ーどうも社長は他に話を続けていたみたいだったが、こんな状態であった私が聞いているはずもなく、
「あ〜社長。どうも彼女混乱してるみたいで、話を聞けてないみたいですねー。」
見かねた例の見知らぬ男性が社長の話を遮った。
「社長。話を変わらせて頂きますね。」
「華坂さん?お〜い。今僕の話聞いてる?この手の指は何本に見える?」
「・・・・さ・・・3本ですけど、・・・」
「よかった〜。少しは落ち着いたかな?あのまま話が続かないとどうしようって思っちゃったよ〜。」
なんか年の割に軽い人だな・・・・
なんて思えるくらいには私は落ち着きを取り戻したみたいだった。
落ち着きを取り戻したところで、私は応接間に入った時はあまり気にしなかったけど、どうやら今回の件に関わりがありそうな見知らぬ二人を観察した。
さっきから何度か口を発している見知らぬ男性の方は、スーツにしっかりと身を包み、それなりの値段がしそうでかつとてもよく似合うネクタイを、非常に丁寧に結んでいた。顎には髭を少し生やしており、髪には白髪が所々見られる。
だけど、髭は本人にある種の威厳を持たせることに成功していて、白髪も決してやつれた印象は与えず、むしろ豊富な経験を想像させ、全体的に老成した印象を与えていた、まあ一言で言うならいわゆる「ダンディー」と言うのだろう。
体格も良く、座っているので良くわからないが172cmある私を優に超えそうなので、180cmくらいあるのではないのだろうか?
そんな人物である男性が、今は私の目を真正面から見てニコニコと笑っている。
黙っていれば威厳があるのに、ニコニコしてる今の男性からは人のよいおじさんと言う印象を強く受ける。
しかし、私はそんな彼の目と笑みからどこか独特な印象を受けた。どこか彼全体のイメージとは合わないような・・・・
まあそれは置いておいて、そんな男性の横には若い女の子がさっきから身じろぎもせず、おとなしく座っていた。見た目は10代後半、17、18歳くらいかな? まあとにかくそんな年齢に見えるくらい彼女は、若々しい見た目をしている。髪は肩くらいまでの長さで、これまた綺麗な金髪である。肌も、すでに20の半ばを超え、人工物の手を借りなければならない私の肌と違い、化粧なしでもずっとツヤツヤしており、綺麗な肌である。
だけど、隣で始終ニコニコしてる男性とは異なり、彼女は目を下のほうに向けて、整然としており、正面の私からは目を瞑っているように見える。その姿がまた可愛らしくまるで西洋人形のようである。
・・・と思っていたまさにその時、女の子が口を開いた。
「局長。お言葉ですが、あまり時間がありません。そろそろ本題に入っていただかなくては。」
見た目に反してとても大人びた口調である。
「そうだね。楓くん。 華坂さん。僕の方でお話をさせてもらっていいかな?」
「は・・・はあ・・。」
「では、っととその前に自己紹介がまだだったね。名刺を渡すよ。」
そう言って私は彼から差し出された名刺を受け取った。
そこには
「日本超能力管理庁局長
山本 奈保貴」
と書かれてあった。
う〜ん・・・・誰?
偉い人なんだろうとは思う。
だけど、いまいち流れがわからない。
なんでお国の役人がこんなところにいるのだろう?
そしてなんで私はそんな人と話しているのだろう。
「隣にいるのは秘書の楓、、、横山楓ちゃんだよ」
男性いや、山本さんの言葉に合わせて女の子が軽く会釈する。
自己紹介の終わった山本さんは話を続ける。いや、本題に入る・・・
「華坂さんは、今朝のニュースは見た? あの後天性超能力のやつ」
「はあ・・見ましたけど・・・・それが何か?」
とは言いつつも私は薄々嫌な予感を感じ始めていた。
朝のニュース、、、今朝の社内の緊張した空気、、、、いきなり課長に呼ばれたこと、、、、
応接間に連れられたこと、、、、、、そこで社長から休職と告げられたこと、、、、、
謎の二人組、、、、そしてそのうちの少なくとも一人は超能力管理庁の人だという言うこと・・・・
だけど・・・だけど、心の中ではその予感を感じつつも、私はそのあまりにも非現実的な予感を信じなかった。
いや、信じたくなかった・・・・
だって・・・・
もしそれが事実なら・・・・
それは・・・・
「華坂さん。
君がその人なんだよ。君は後天性超能力者だ。そして僕たちは君を保護しに来たんだ。」
・・・私の人生を大きく変えてしまうものだったから・・・・
話が進みませんね・・・
でも、ここは私にとっても大切にしたいところなので、もうしばらくおつきあいよろしくお願いします。