表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界召喚"二人の勇者"  作者: やー
4/15

第二話

 「皆様どうやらお目覚めになられたようですね。」


 光征達以外はだれもいなかったはずの部屋に女性の声が響いた。

 声のするほうを見るといつの間にか部屋の奥にあった巨大な扉が開いており、そこから何人ものフルプレートの黒色の鎧を纏った兵士とその兵士達に守られるような形で純白のドレスを着た輝くような金髪を持つ可憐な少女が入ってきていた。

 そして驚く光征達に向かって花のような笑顔を向けてしゃべりかけた。



 「皆様、ようこそおいで頂きました。ここは神聖帝国の帝都ミッドガルドでございます。」


 

 突然とも言える謎の少女と黒い騎士たちの登場に光征以外の4人は、口をぽかんと開け彼らを見つめていた。

 一瞬、間をおいて凜がそれに答えた。



 「あ、えっとこんにちは?ここは、ここはどこで?あなたは誰ですか?」



 凜たちは、少女の笑顔に毒気を抜かれた様子で、そんな彼らをみて少女は再度にこやかに笑い答えた。



 「ええ。こんにちは。ここは、あなたがたが今まで住んでいた世界とは違う世界、ポルセといいます。

そしてこの場所は神聖帝国の帝都ミッドガルドその中心であるミッドガルド城。申し送れましたが、私はこの神聖帝国の王女そして、聖教会から神託を受けた当代の聖女リサーナ・ケイ・ミッドガルドと申します。リサとおよび下さいませ。」

 


 「は?え?異世界?つまりどういうこと?」



 「なんだよ。なんか全然ついていけねえんだけど。」



 リサと名乗った少女の言葉に戸惑いを隠せない凛たちはとにかくおびえている様子だった。

 光征だけは、そんな凛たちを尻目に過去の記憶から神聖帝国の情報を思いこしていた。

 光征の記憶では、神聖帝国はポルセ最大の国家でその規模は、以前の光征を召喚した大国イエン皇国の約2倍である。

 確かに神聖帝国であるならば、勇者召喚の儀を行うのに十分な力がある。

 そしてリサーナが発した「聖女」という言葉。

 聖女とは、この世界の言い伝えにある勇者とともに人類を救済する巫女を指し示す言葉で、確かに前回の召喚の時にも光征とともに闘った仲間に聖女は存在した。

 

 しかし、


 ・・・・・・僕の知らない聖女?


 確かリサーナは、当代の聖女と言っていた。ならば光征が召喚された時の聖女は今は聖女じゃなくなってしまったということだろうか?

 そのことから考えられるのは、前回の召喚と違う時代にたどり着いたということか。

 しかし神聖帝国の歴史は浅くこの世界では、せいぜい150年ほどの歴史しかなかったはず。勇者の召喚自体は光征で2度目、それ以前の勇者召喚の史実では、神聖帝国の建国前だ。

 つまり、前回から幾分か時のたった時代に光征達は召還されたということになる。


 みんなどうなったんだろうか・・・・・・・



 そこまで考えて光征はかつての仲間のことを思い、胸が締め付けられた。



 「ちょっと、山守君大丈夫!?顔真っ青だよ!?」

 


 凛のあせった声が聞こえ、気づくと凜をはじめその場の全員が、いつの間にか顔色をなくし苦悶尾表情を浮かべている光征を見ていた。



 「あ、いや。急な出来事に理解が追いつかなくて。ごめん。」



 手を貸そうとしてくれる凛に大丈夫だとかぶりをふりながら光征は額の汗をぬぐった。


 「申し訳ありません。急な出来事にさぞ混乱されているかと思います。今日のところは皆様お休みなられてはいかがでしょうか?もちろんおくつろぎいただけるよう最大限のもてなしをさせて頂きます。」


 光征の様子をみてリサーナが、申し訳なさそうに口を開いた。



 「そうしてもらう?どの道の状態じゃ私たちだって話をされても全然頭に入ってきそうにないし。」


 

 「それもそうだよね。私も頭の中ぐちゃぐちゃになってきちゃった。」



 「いや、ちょっと待てよ!正直よくわかんえけど、もうちょっとだけでも事情を聞いとかねーと逆に落ちつかねーよ。」


 健一は凛たちの言葉に少し苛立ちをこめて反論し、凜は困ったような表情で交互に光征と健一を見やった。

 凛のその態度に健一はさらに気を悪くしたようで、一気にまくし立てた。



 「ほっとけよそんな奴。こんな状況なんだからそんなひ弱なやつかばってやってる状況じゃねーだろ。」


  

 「宮里、あんた、」


 健一のあんまりな言葉に凜が言い返そうとした時、流が2人を制した。

 

 「やめろよ。2人ともここで俺たちがもめてもしょうがないだろ?山守君は大丈夫そう?もし大丈夫なら俺も健一の言い方はどうかと思うけど、簡単に状況を説明してもらったほうが良いと思うんだけどさ。」


 流がその場を取り持つと険悪になった空気も幾分か和らいだ気がした。


 「ありがとう。大丈夫だ。僕もそのほうが良いと思う。心配掛けて悪い。」


 光征が、それに答えて凛と健一両方に少し頭を下げた。



 「・・・・・・っち」


 健一は、光征に舌打ちをするとリサーナの方に顔を向けた。

 そんな健一の様子を困ったように眺めて、流はリサーナの方を見つめ説明をお願いした。

 リサーナは、一瞬躊躇した後、口を開いた。



 「では、単刀直入に言いますが、あなたをこの世界に呼び出した理由。それは、勇者としてこの世界を救って頂きたいのです。」


 その言葉をリサーナが発した時、もともと冷え切っていた部屋の空気がさらに一段階冷えた感覚を光征達は覚えた。


 

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ