絶望の赫い糸。
その運命は、可視化されていた。
恋した夜は欲情に溺れた。
二度と解けない事が定義ならば、置き去りにされた意識だけが否定的に評価する。
空の骸が産声を上げた時、二人は愛の無意味さを知った。
遺伝子に刻印された真実が全てならば、量子に突き動かされる衛星軌道は虚実だった。
紅いシンデレラが、必死の形相で追い駆ける。
冥府を下ったオルフェウスは、振り返って全てを失った。
だから彼も、決して振り返ってはならない。
血染めのドレスが映すのは―――。
激しい息が胸を劈く。
恐れが、恐怖が彼を支配して、やがて振り向いてしまう。
だんなさま。
そう呟いたのは、口の形だけ。
けれど、それで良かった。次の瞬間には、何もかもが破滅している。
男は糸の先に絡まっていた。
赫い糸。
この糸に結ばれた者は、何人も逃げる事が叶わない。
それが運命ならば。受け入れるしかないのだ。
絡まれ、蝕まれ、咀嚼された彼は、数刻後に原型を失った。
あは、と女の微笑みが零れる。
これは、赫い糸。
致命的に絶望的な、赫い糸である―――。