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まさに夢

◆◇◆◇◆◇◆


 目が覚めるとそこは-


プラットフォームのベンチだった。


…生きていたのか?


…あれは夢だったのか?


あの押された感覚、あの鈍い痛み、そして、あの娘事態がそもそも、夢…だったのか?


あまりにも鮮明に覚えていた。


「間もなく〇〇市役所方面…」


女性のアナウンスが、もうすぐ地下鉄が来るのを知らせる。


鞄を持って立ち上がる。

何となく、携帯で時間を確認すると、そこには


時刻は6時40分と表示されていた。


ゾクッ…。

背筋に悪寒が走った。

自分の心臓の鼓動が聞こえてくる。


何だ、これは。


さっき見た夢は…?


足下の黄色の点字を見ながら息を潜める。

…何故?


どうやって捕まえる…?…どうしてこんな事を考える?夢ではなかったのか?

愉しんでいるのか?

…何を?


そして…


背中に手の平サイズの重圧を感じた。


押された瞬間に体を反転させ、力を流す。


目が合う。


彼女は夢と変わらない…いや、それ以上の微笑みを、そして…ちょっぴり驚きの表情を浮かべていた。

俺も…もしかしたら笑っていたかもしれない。

反転させた勢いで彼女を押し倒す。

そして、何故こんな事をしたのか聞…


「これでお前は俺のものだな。」


そう、それ言ってその後に何故こんな事を…って、何を言ってんだ!!


彼女は片手を赤らめた頬にあて目が合わないように顔をそらした。


冷静になってみると物凄く…あぁ、顔が近い。


「こっ、これは違っ…」

そう言って急いで体を起こし、後ろに下がる。

主に電車のせいで、あまり下がれなかったが…。


彼女も立ち上がり、ゆっくりと近付いてくる。


それを止めようと言葉を投げかける。

「なっ、何で俺を殺そうとしたんだよ?」

声が裏返る。あぁ、喉が痛い。


だが…彼女はいきなりとんでも無いことを言い出した。

「まず、訂正するけど、あなたはあのぐらいでは死なない。殺すなら、十字架に両手足を杭で打ち付けて、心臓を刃物で抉り出し、首から上を…」


目の前の彼女は突然、言葉を止め、俺の頬を撫で…。


「…!?」


声にならない叫びをあげる。

…体が動かない。


彼女は顔を近付け、耳元で囁いた。

「怖がらないで…ね?」

何が「…ね?」なのか全く持ってわからなかった。けれど、狂っている事はもう十二分に理解できた。


早く逃げないといけな…い…?


「君達。危ないから、乗るか乗らないかはっきりしてくれないかな。」



…無理でした。


不機嫌そうな駅員さんに退路を塞がれてしまった。


「あっ、すいません。すぐ乗ります。」

条件反射でそう答えてしまった自分は正直、馬鹿だと思った。いや、よく考えても多分、ダメなんだけど。


そして、嬉しそうに腕を絡めてくる彼女を振り払うことも出来ず、電車に乗った。


よく、父親が言っていた言葉を思い出す。


…人生諦めが肝心だ。


そんな風に思いながら、嬉しそうな彼女と共に腰を下ろした。



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