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槇と刃 その一

 耳障りな音が聞こえる。

 非常に不愉快だ。

 たとえそれが自分でそうなるようにしてあったとしても、毎朝毎朝聞いていたとしても、それは耳障りで不愉快だ。

 目を開ける。

 そして命令する。

「うるさい。だまれ」

 耳障りで不愉快な音が止む。

 新製品だかなんだか知らんが何でデフォルトでこんな腹の立つ音なんだ

 鳴る音の変更などどこにいても簡単にできるのにいつもやり忘れるため四月に使い初めてからそのままだ。まぁ今のままなら確実に目が覚めるという利点はある。デザイン家電とかいうやつで機能より見た目が重視されていて、そのわりにくだらない機能がついている。毎日日替わりで有名人の有り難いダメになる、いや為になる言葉やらなんやらが表示されるのだが、後悔するのをわかっていてもつい見てしまう。

「今日のお言葉はなんだ?・・・・」

 そして今日も朝っぱらから同じ機械に対して二度腹が立つ。

 いいかげんこれは精神衛生上悪いので、もう手を滑らせて二階から落として壊れたことにしたいところだが、それはあまりにバレバレと言うものだ。

 昔ながらの時計機能しか付いてない目覚まし時計というやつがほしい。もしくはやさしい声で起こしてくれるメイドさんでもいいが。

 朝からなにか有益なことをやりたい性格ではないものの、遅刻ギリギリまで寝ていたい性格でもないので普通に起きても始業時間まで余裕がある。もっとも、新生活二日目にして発生した予期せぬ仕事があるので、そうだらだらしてもいられない。かと言ってあわてて朝食をとる必要もないのでいつもと同じようにパンを食べていつもと同じように家を出た。

 三月までは、つまり中学は家を出たら左方向だったが高校生となった今は右に向かって歩いていく。

 このまま道なりに歩いて行けば幹線道路に出る。高校に行くのに普通につかう道なので今日も同じ高校の生徒がたくさんいるだろうが、自分はちょっと歩いた所で曲がって遠回りしなければならない。

 裏路地を歩いて行き自分の家より新しい家の前にくる。一秒半ほど立ち止まると門扉の施錠が外れる音がする。小さくても凝ったデザインの門を押して中に入り玄関の前で大声で朝のあいさつをした。

「おはよーございまーす」

 中から女性の声で「は〜いどうぞ〜」と聞こえてから今度はドアの施錠が外れる音がする。家の中に入ると靴を脱いで失礼しますと言いながら勝手にあがってその家のダイニングに入った。

「おはようございます。お姉さん」

「おはよ〜」

 お姉さんと言っても血縁関係のない人で、同級生のお姉さんだ。でも、誰が見ても『お姉さん』と呼びたくなる感じの人だ。

「コーヒー飲むでしょ?」

「はい、いただきます。変えたんですか?」

「お、さすがだね。香りを嗅いだだけでわかるんだ。はい、どうぞ」

「いただきます・・・・昴の趣味ですか?」

「どうかしらね。わかりもしないくせにこれがいいって選んだのはあの子だけど。すばる〜!コーヒー冷めるわよ〜」

「あ〜ブラウスがなかった〜」

 と言いながら現れたのはセーラー用の紺のスカートにブラ、ジャー姿の昴だった。

「ちゃんと見てから入りなさいよ」

「上と下とまちがえちゃった。先生、おはよう」

「おはよう、昴」

 昴は居間にあったセーラーの上をとるとまた着替えに戻って行った。

 今日はセーラー服か・・・・まめに変えてるとこなんかまさに女の子だけどなぁ

「最近女らしくなってきたなあって思ってたんですけど、ブラ姿は恥ずかしくないんですかね」

「そんなことないと思うけどねぇ。今のはあの子の素のおっちょこちょいでしょ」

「それなら今度ブラ、ウスじゃなくてブラ、ジャーがなくて取り来るのをお願いします」

「さすがにあの子でもそれはやらないと思うけど」

 お姉さんのいれてくれたコーヒーをすすっていると今度はちゃんとセーラー服を着て来た。

「あ、先生、そのコーヒーどうだった?」

「おいしくもまずくもない」

「え〜?だめだった?」

「だめとは言ってないだろう。嗜好品なんてな高けりゃいいってもんじゃないってことだよ」

「うーん、そうかぁ・・・・」

「コーヒーも凝りだすとキリがないからなぁ。やるならちゃんと自分のこずかいでやれよ」

「お、さすが先生、いいこと言うねぇ。ちなみにこのマシーン5万だから」

「うう・・・・そんなお金ない・・・・」

 おいしいと言ってくれるのを期待していたんだろうが自分はそんなお世辞を言う性格ではない。素直に率直な感想を言うと昴はこれまた素直にがっかりした表情をした。その様子がなかなかかわいらしい。

 学校でもこのくらいの表情を出せるようになればいいんだけどなぁ

 家の外ではまだまだ緊張するようで、それでこうして毎日迎えに来ているわけだが当分の間この仕事は終わりそうにない。信用されているのはうれしいのだが。

 誰かに引き継いでもらうってゆー選択肢もあるか・・・・適任者を探すのもそれはそれで大変だよなぁ・・・・それはそうと・・・・さっきのあのブラ自分で買ってきたのかな?いい趣味してるよな・・・・

 冬服だから当然ブラが透けて見えるはずはないし夏服であったとしても透けて見えた、ような気がするだけで見えはしない。食事中の昴のそのへんをぼんやり見ながらくだらないことを考えていた。

 そういや父さんが昔はほんとにただの薄い生地だったんで夏になると色物のブラがよく透けて見えたのをよく見てたとか言ってたな・・・・いい時代だったんだなぁ・・・・うらやましい

 朝食を食べ終えてはみがきをしに行って昴がその場からいなくなるとお姉さんがやや小声で話しかけてきた。

「先生、もし昴のことが負担になってるようなら・・・・」

「あーいえ、そんなことない、というか、そんな大したことしてないですよ。毎朝ただいっしょに学校行ってるくらいなもので」

 ちょっと物思いに耽っていたらお姉さんに余計な心配をさせてしまったようだ。

「根が不真面目ですから、自分がどうかなるほど一生懸命にはやっていませんから」

 お姉さんはまだ何か言いたそうだったが昴が戻ってきて会話は打ち切られた。

「おまたせ〜」

「よし、行くか。お姉さんごちそうさま」

「いってきまーす」

「いってきます」

「いってらっしゃい」

 そのあとに『昴のことお願いします』と言っているような気がした。


 昴の家を出て路地をそのまま歩いて行くと先ほどの幹線道路に出る。ここを横断すると高校へと続く長い坂道の手前に着く、と言うと山の上にあるように聞こえるが地理的には丘の上と言う方が正しいのだろう。どっちにしろなだらかに長い坂を上らなくてはいけない。そのためにこの高校に決まってから免許をとってバイク通学している生徒もめずらしくない。

 父親の話では、昔は高校にバイクで通学するのは、と言うかバイクで通学できる高校自体ごくめずらしいものだったそうだ。その時代のバイクと言えばガソリンを燃やして走るのが当たり前で、昔の免許制度なら一番小さなバイクであっても六十キロは出たそうだ。高校で禁止されていても当然だろう。現在のミニバイクは父親にとっては自転車みたいなものらしい。

「先生免許もってるんだよね?」

「持ってるけどタンデムで、二人乗りで通学はできないぞ」

「それくらい私でも知ってます」

「それに免許があっても肝心の、バイクがない」

「え?そうなの?」

「父親の大きいバイクはあるけどあれで高校には行きたくないしな。封印されてるし」

「封印?」

「昴が自分の分と二台買ってくれれば乗ってもいいぞ」

「バイク二台分ってどのくらいアルバイトすればいいのかぜんぜんわかんないなぁ」

「昴の写真でも売ったらどうだ?自分が撮ってやるから、そうすれば十枚一組で三万で売れる」

「どんな写真を撮るつもりなんですか?えっちなやつなんていやですよ」

「そうか。それはざんねん」

 そんなくだらない話をしながら今日ものんびり昴と二人歩いていく。実数は知らないが歩いて登校しているのはまちがいなく少数派だろう。歩きでもなくバイクでもなく乗り合いタクシーという選択もあるからだ。歩きよりは多いだろうがやはりバイクが三分の二程度にはなるだろう。

 そして今もゆっくり近づいてきたバイクがゆるやかに追い越していった。

「すばるおはよー」

 バイクに乗った女生徒が後ろから声をかけてきて昴がその女生徒の背中に向かってあいさつを返す。何人かに同じことをしている。いつもの朝の光景だ。

 朝のあいさつをされるのも返すのも昴だけだが、それはバイクで通り過ぎながらあいさつするとなると昴ひとりにしか声をかけている時間がないだけで、決して自分にはあいさつをしたくないわけではない、と思う。男で声をかけてくるやつはわからないが。

 教室に入るといつもと変わらず七八割が登校していた。昴を先に来ていた女生徒三人組に引き渡して役目が終わり自分の席に行く。そこは誰もが羨む窓際最後尾。よく話す友達はいつも遅くに来るので誰とも挨拶を交わすことなく席に着く。

 一つ前の席のヤツも遅く来るほうで今日もまだ来ていない。そして、いつものようにすでに登校していたもう一つ前の席の女子の後ろ姿を見た。彼女はなぜかいつも頬杖をついて外を眺めている。毎日その姿を見ているうちに自分も朝礼が始まるまで外を眺めているのが癖になっていた。

 教室からの眺めはなかなか目によさそうな景色が広がっている。ようは全体的に緑色だ。目にはいいだろうが学校周辺に若者が楽しめる所はほとんどない。クラスの中には中学でもっとちゃんと勉強しておけばよかったと嘆いているヤツもいたが、ここよりワンランク上となるともちろん勉強ができないといけないが学科やら立地やらのせいでなかなか選択の難しい学区ではあった。

 自分はただ単に家から最寄りだったのと特別受験勉強しなくても入れそうだったのでここにしただけだった。

 ふと、視線を教室に戻すと相変わらず二つ前の席の女子は外を見ていたが、その時、気のせいだったかもしれないがため息をついたように見えた。

 この高校に入ったことに不満がある口かな?

 だがそのため息は、その時の自分にはとても想像できないことへのため息だった。


 昼休み。

 ほとんどの生徒が食堂に行く中、教室に残ったうちの自分を含めて三人の男子生徒が身を寄せあって昼食をとっていた。

 三人とも別々の中学出身で入試の時知り合ってからのつきあいではあるがお互い合格していたことも知らなかった。入学式当日教室に来てみると同じクラスだったと言うわけで校内ではよく行動を共にしている。中学が別なくらいなのでお互いの住居が離れていて、校外でも行動を共にしているわけではないが時々は仲良く遊んでいるような仲だった。

 それで昼食はと言うと自分は昨日買ってきた惣菜パンだったが、大柄な鈴木と小柄な後藤の二人は母親お手製の弁当だ。

「学食のほうがぜってー安上がりだよなぁ。栄養が偏るからって毎日持たされてっけどたまには学食行きたいよな」

「この学校って、お弁当持ってくるメリットがほとんどないよね。学食混まないから。工業なんか毎日長蛇の列だって言ってたよ」

 工業とは同じ市内にある県立の工業高校のことだ。入るにはなかなか大変で人気校でもある。

「こんな生徒数で学食があること自体めずらしいんだろ?」

「工業とは比べ物にならない生徒数だものね」

 ちなみに自分は学食へ行くのがめんどうなだけだ。

「工業に友達いるん?」

「いるけど違うよ。部の先輩から聞いた話だよ」

「部と言えばどこに入るのか決めたのか?」

 この学校は週に一コマ授業で部活動があるので必ずどこかに所属していなければいけないのだが、その授業の部活とそれ以外の放課後の部活とは別々でもいいので二つ掛け持ちにしている生徒がけっこういて自分もそうだったりする。普段文化部の生徒は運動部を、運動部の生徒は文化部を、と言うのが本来の趣旨らしいが、自分の場合その趣旨には反している。

「なんか、メインの方を運動部にするか文化部にするかで迷うんだよな。やっぱり高校生になったんだしもう少しこう知的な面を強化しないといけないと思ってな」

「知的な面をねぇ」

「メインを運動部にしときゃあいいじゃないか。なんかそうじゃないと問題起こしそう」

「なんだよそれ。それじゃあオレがまるっきり体力バカみたいじゃないか」

「みたいじゃなくてそうだろ」

「ひでぇ言われようだな。ぜってー文化部に入って見返してやる」

「文化部のアテは何かあるの?」

「いや、それがなにもない」

「締め切り今月中だよ。もう悠長なこと言ってられないよ。まだ勧誘してるとこなんてもう人気のないとこしかないしもう受け付けてない部もあるって話だよ」

「そうか。早く決めないとだな。センセイのメインの部活なんてったっけ?ブンブン部だっけ?」

 昴からも先生と呼ばれているがそれが自分の愛称だからだ。それでその先生という愛称を広めたのは昴だったりする。

「どっか飛んでいきそうだな。文化文明部だよ」

「何度聞いても変な名前だよな。文化文明部って言われても何してるのかまったくわからんし」

「自分もそれは否定できないな。全体の定員が減った時に部活も統廃合されていくつかの部活がごちゃまぜになったのが今でも続いているって先輩に聞いた」

「元の部活がなんだったか知ってる?」

「郷土歴史研究会とボランティアと自然科学部って言うのは聞いたけど他にもまだなんかあったらしい」

「あーその、ボランティアっていうの、きらいなんだよ。そこはパスだな」

「もとよりこんでいい。そういや後藤の入部試験はどうなったんだ?訊き忘れてた」

「あれ?言ってなかったっけ?合格したよ」

「それはおめでとう」

「まぁ試験って言うほどのものでもないけど。もともと基礎がある人でないと興味もないだろうから」

「あーあせるなぁ。今からちょっと見てこようかなぁ」

 昼飯を食い終わると人のいい後藤が鈴木といっしょに部活見学に行ったので自分の席に戻った。

 あ今日も昼飯食ってるかどうか確認し忘れた

 二つ前の席の女子生徒は相変わらず頬杖ついて窓の外を見ていた。

 毎日毎日昼飯抜きってことはないよな・・・・

 入学してからもうけっこう経つが未だ一度も昼飯を食べてるところを見たことがなかった。

 なんかゲル状のをチューって吸っていいにしてるのかな

 その時の自分は彼女が昼食を抜いていたことも食欲がなくてそうしているわけでもないことも知らなかったしそれは知りようもないことだった。


 放課後。

「こんちわ〜」

「まめに毎日くるわね」

「センパイだって毎日来てるじゃないですか」

「私は毎日部活動に来てるわけじゃないもの」

 部室にやってくるといつものように二年の部長しかいなかった。つまり、女の子と二人きりと言うわけだ。だが、残念ながら部活動以上の出来事は今までなかったし今日もおそらくないだろう。まことに残念無念だ。

「内職でもしてるんですか?」

「ここでそんなことする必要もないわ・・・・」

 校内にいる限り個人の端末であっても直接外のネットワークに繋げることはできない。外のネットワークに繋げられないと言うことではないのだが、ちょっとでも怪しげなことをやるとすぐにバレるらしい。ただ、センパイはできないとは言わずにやる必要がないと言った。

 部室に入ってつっ立ったままセンパイの横顔を眺める。センパイはいつもポニーテールにしていて横から見るとそれはきれいなシルエットをつくっていた。自分が毎日ここに来るのはこれを見たいがためかもしれない。そのポニーのしっぽが左右に揺れた。

「あ〜だめだ。やめた」

 センパイがそう言うと白板に『文化文明部活動記録』と題されたものが映し出された。個人的な作業はやめて部活動を始めるようだ。

「そんなとこ立ってないで座りなよ」

「けっこう継続してやってるのもあるんですね」

 イスに座ると画面が変わって歴史のある活動を箇条書きにしたものが出る。

「その夏休みの真っ最中にやってるのなんか特に長いですね。慰問ですか?」

「文化文明部になる前からのだからね。長いと言ってもかなり細々とした活動だけど。去年なんか私を含めて三人しか参加者がなかったから」

 白板を見ながら質問するとその活動内容を丁寧に説明してくれた。寄せ集めだと聞いてはいたものの、本当に活動内容が幅広い。

「どれかやってみたいのはあった?」

「まぁいくつかありますけど・・・・センパイと二人だけでやるんですか?」

「一年の時はわりとちゃんと活動してた部員がもう二人いたんだけど、一人は二股、じゃなかった、掛け持ちしててそっちでどうしてもって拝み倒されちゃって二年になったら逆転しちゃったのよね」

「文化文明部が金曜部活に降格しちゃったんですね。もう一人は?」

「引っ越した」

「それはいかんともしがたいですね」

「あっちは全国大会をねらえるような部活だからうちみたいになにしてるんだかわからないようなのが文句を言えないしね」

「何してるんだかわからない自覚はあるんですね。クラスの友だちに何の部なのか説明するのにいつも苦労するんですよ」

「私は総合文化部って言ってるけど。その、文明って言うのがクセモノよね」

「『文明』に託した思いっていうのは何となくわかる気がしますけどね」

 文化文明部の歴史を見ながらそう言った。

「やっぱりあなたが副部長よね。人材もないことだし」

「え?それじゃあ約束と違うじゃないですか」

「自動的に次期部長にはならないから。でもこのまま部員が増えないと・・・・

「自分が部長ですか?」

「違うわよ。廃部よ。まぁ自動的に文化文明部を廃部にした部長になるわね。今は寄せ集めでも元の部はみんな伝統のある部だったけど、これも時代の流れね」

「なんで廃部になった責任が自分一人になるんです?」

「大丈夫。とりあえず一人確保してきてくれればビシバシ鍛えるから」

 ポニーテールのよく似合うセンパイと二人きりの部室で予期せぬ出来事は起きたが、期待したものとは違う出来事だった。

 それで部員集めの方策を練るのに過去の方法を参考にしようと言うことで、四月初めの部活動記録を見た。やはり諸先輩方も四月最初の活動で部員集めをやっていたのだが、これが参考にはならなかった。ほんの少し前までこの部は頭数が多かったのだ。

 人海戦術的なものはとうぜん無理で人目を引くパフォーマンスの類もある程度は人手がいる。ビデオを一通り見終わると部長もやはり参考にはならなかったようで『一人でできることを明日までに考えておいて』と言われて本日は解散となった。

 自分が立ち上げたでもないのに新入生が一人で部員集めしてる部なんてここだけだろうなぁ・・・・もしかしたらこの国で自分一人だけかも

 床に置いてあった通学バッグを持ち上げるといつもより重いことに今ごろ気がついた。学校に置いてこようと家から持ってきた物だ。教室からここまで無駄なことをしたが家までは持って帰らなかったのでいいことにしよう。

 センパイと別れて教室に向かったが個人ロッカーに入れればいいので教室に入る必要はなかった。それで教室前まで来たときロッカーの方を見ていて気づかなかったが、荷物を入れてふと振り返るとまだ誰かがそこにいる。

 二つ前の席の女子生徒が頬杖をして外を見ていた。

 放課後になってからもずっとあのままなのかな?

 そう思ったとき、急にその姿がぼんやりして霧に覆われたように見えた。驚いて目をパチパチしてみるともうその霧のようなものは見えなくなって、普通に女子生徒の姿が見えるだけだった。

 気のせいかな?

 校門を出る頃にはこのことはすっかり忘れていた。



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