こっちを見てよ!(むしろかまえ)
君の部屋
とても狭い空間
共有しているのは二人きり
私と君
どきどきしたり
そわそわしたり
落ち着かなかったりする
それなのに、
せっかく二人なのに
わざわざ二人なのに
なぜ君は私に背を向けるのでしょうか?
そしてなぜゲームをやるんですか?
今すぐやるべきことですか
世界を救うのに必死ですか
私がいるのにシカトですか
不安になるよ
私はゲームに負けたのかなって
いや、負けたんだけど
それってすごく虚しいじゃん
私って君にとってその程度?
ゲームの次ですか?
むしろゲームの次の漫画の次の
そのまた次の次くらいのものですか
段々腹立ってきたよ
私いなくていいじゃん
そう思ったら悔しくなって
悲しくなって
私だけこんな気持ちなのかなって
ムシャクシャした
君の背中にそっと近づく
大きな背中
私なんてすっぽり隠れてしまうくらい
いつもはたくましいなんて思うけど今は違う
この背中が憎い
その無駄に大きな背中めがけて
めいいっぱいの頭突きを叩き込む
怒ってるんだから
許さないんだから
頭をグリグリする
おらーこっちを見ろお!!
仰け反った君
少しの停止
止まった指先
二人の間に降りる沈黙
聞こえるのはテレビゲームの音だけ
どうやら勇者がフルボッコされてるみたい
これは効果あり?
待ちかねて袖を引っ張ったとき
ぴくんと反応する君を見た
そしてこれは一瞬のこと
君が突然振り向いた
なかなかこっちを見なかったのに
コントローラーを手放して
私を強く引き寄せる
抵抗する時間もない
気づけば私は君の中
びっくりして身動きすると
君は更に力を込めてぎゅーって抱きしめた
遅い!って怒りたい
文句言ってやりたいけど、もういいや
君の鼓動がやけに早く響いて
手に取るように感じられる
その早さに私が惹かれて
二人が同じリズムを刻む
心地よい空気が愛しい
なんて安心するんだろう
君もこうしたかったんだよね
さっきまで寂しかったけど許してあげよう
どうすればいいか分かんなかったんだよね
だからゲームに走ったんだよね、きっと
きっかけとか掴めないなら二人で作ろう?
二人きりを意識してるならもっと近づいて楽しもう?
そしてゲームは二人でやろう?
背後でテレビがゲームオーバーを告げる
重々しい音声が聞こえてくるけど
そんなの知ったこっちゃない
君の視線を釘付けにして
もう目なんて離させない
もっと夢中にさせるから
今はずっと見つめ合おう
子供っぽい君も全部、私は大好きなんだから