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13 巡回警備

 最近、私の畑に野良猫が、徘徊しています。真っ黒の猫です。目は金色をしています。片目は怪我をしているのか、開けていません。背中に古傷があります。歴戦の名のある猫とお見受けいたします。

「白山さん所のおじいちゃん入院したようよ」

「最近まで元気だったのに、何かあったのか」

 おじいちゃんとおばあちゃんが話しています。


 白山さんと言えば、2・3日前、カラスが襲撃するような事を言っていた。

 まさか、畑だけでなく、人まで襲ったのか。恐ろしいカラスたちだ。

「なんでも、畑からの帰り、飛び出してきたネコに驚き、自転車で転んだそうよ」

「それで、入院しているのか」

「そう。右腕複雑骨折で2週間くらい県立病院に入院だって」

「それは、大変だ。お見舞いに行こう」

 なんだ。ネコの飛び出しか、カラスかと思った。今日はお見舞いに行くのか、それなら、散歩(おしごと)はお休みかな。

 私は白山さんの心配より、自分の業務の事を考える。プロなのだから当たり前です。


「わしは、病院に行って来るから、お前は、白山のばあさんの様子を見て来い。不自由していたら、何か手助けできるかもしれない」

 なるほど、これまでの事を考えると、私は、おばあちゃんに連れられて、白山さんの自宅を訪ねる事になりそうだ。

「分ったよ。明日にでも饅頭でも持って行ってみるよ」



 おばあちゃんは風呂敷に饅頭を包んで出かけます。勿論、もう片手には私を繋いだリードを持っています。

「マルちゃん、今日は白山さん家にお見舞いに行くからね。おとなしくね」

「キャンキャン」

 分っているよ。

 白山さんの家までは、歩いて5分程度、大した距離ではない。

 白山さんのおじいちゃんは、何度か見かけたことがあるが、おばあちゃんには会ったことがない。


 玄関に取り付けてあるチャイムボタンを押すと、奥の方からピンポーンと音か聞こえる。

「はーい」

 女性の声が聞こえたと思ったら直ぐに玄関が開けられた。

 おばあちゃんと聞いていたが、出て来たのは活発な女性だった。

「あら、京子、おはよう」

「智子、旦那さん大変だったね。今日はお見舞い。饅頭持って来たから食べて」

「ご丁寧にありがとう。さあ上がって、今お茶を入れるから、そのお饅頭一緒に食べましょう」

「悪いわね。実はそのつもりで、良いのを買って来たのよ」

「さすが、新谷京子。昔から抜け目がない」

「あはは、智子ほどではないよ」

 二人は昔からの知り合いのようだ。それも悪代官と越後屋のような仲だ。


「それで、どうなの?働き者の旦那さんがいないと、心配でしょ。不自由しているのじゃない」

「なに、家の事は、全部私がやって来たから、全然大丈夫。心配と言えば畑の方だね」

「ああ、旦那さん、頑張っていたからね。それで私に手伝えることある?」

「畑の事は、よくわからないよ。できたら散歩のついでに、様子を見てくれたら嬉しいかな?そうそうトマトが取れ始めるから、収穫しておけと言ってた。勝手に取っていいから、適当に間引いてくれない。ほったらかしにすると、カラスが荒らすらしいのよ」

「そんな事なら、引き受けた。トマトは大好きだからね」

「私の分も残しておいてくれよ」


 婆さんたちの話は、それからも1時間以上続いた。覚悟はしていたので、耐えられると思っていたが、途中から寝てしまった。

「マルちゃん、そろそろ帰るよ。起きなさい。帰り畑を見てみようね。それじゃ、智子またね」

「またね。京子」


 帰り道、白山さんの畑によってみた。場所は、白山家より、新谷家に近い場所にあった。

なるほど、あのカラスたちのテリトリーだから近いはずだ。

 畑には、トマトの他にもナス、キュウリ、スイカ等が育てられている。トマトは赤く色好き食べごろに見える。

 白山さんが心配していた。カラスの被害は無いようだ。周りにカラスの姿は一羽も見えない。

 しかし、変だな。全く荒らされていない。私はこの状況に違和感を持ったが、おばあちゃんは目を輝かせている。

「智子が言っていたとおりだ。トマトが沢山なっている。キュウリも食べごろだわ」

 おばあちゃんは、トマトとキュウリを一つずつ手に取った。

「よし、昼からの散歩は野菜の収穫も兼ねよう」

 独り決意を述べると、のしのしと帰宅の途に就いた。

 私は、リードを引かれるまま、おばあちゃんの後を歩きます。背中に誰かの視線を感じるが、振り返りはしなかった。


 家に帰り着くと、おじいちゃんもお見舞いを終えて、病院から帰ってきていた。

「おじいさん、どうだった。白山さん元気だった」

「病院に入院しているのだから、元気な訳がないと言いたいところだが、元気だったよ。ところで、そっちも元気そうだな」

「そうよ。智子も元気だった。でも畑の事が心配なので、散歩の時にでも見てくれと頼まれた。これその白山家産のトマトとキュウリ」

「そうか、それならわしも散歩の時に見てやろう」


 こうして、白山家の畑は1日8回の巡回警備を受けることになった。



 今日は少し涼しい。前線が南下して、雨は降りそうにない。この日曜日は釣りに行こうかな。今晩の内に冷凍庫で氷を作り、釣りの仕掛けとエサを準備する。この準備する事が楽しいのです。明日の釣果を妄想しながらですから。

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