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ノストラダムス・コード2026 〜七ヶ月の戦争を止める者たち〜  作者: はまゆう


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番外編『ノストラダムス・コード:創世記』第1話「ヒトラーと予言」

【巻頭詩:予言集 第8巻 第59番(1933年偽造版)】


*Le grand Napolitain le pont rompra,*

*Dans l'intérêt des Anglais et des Bretons:*

*L'homme d'Aries par la lune finira,* *Le bleufoncé au ciel plus grand sera tonné.*


訳詩:

大いなるナポリ人は橋を壊し、

イングランド人とブルトン人の利益のために。

牡羊座の男は月によって終わり、

青銅色の空に雷鳴が轟く。


注釈:

1933年、ヒトラーが手にしていた偽造版予言集より。この詩は「第三帝国の運命」を示すと解釈され、ナチス政権の戦争政策を正当化した。




## 1


1933年2月24日、午後8時17分。

ベルリン、ライヒスターク総統官邸の地下会議室。


暖炉の火が赤く揺れ、重厚なマホガニーの机に古びた本が置かれていた。

『ノストラダムス全予言集・1555年初版対照』と金文字で刻まれた革装本。


アドルフ・ヒトラーは、そのページを食い入るように見つめていた。

彼の目の前には、一人の男が立っている。


カール・フォン・シュタイナー。

43歳。銀縁眼鏡をかけた瘦せた体躯、しかし目は異様に鋭い。

彼は、後に「ル・プロフェット」の創設者として知られる男だった。


「閣下、この詩をご覧ください」


カールが指差したのは、8-59番の四行詩だった。


ヒトラーは眼鏡をずらし、独語訳を読み上げる。

「『大いなるナポリ人は橋を壊し……イングランド人とブルトン人の利益のために……牡羊座の男は月によって終わる』」


彼は顔を上げた。

「これは私を指しているのか?」


「ええ、閣下」カールは静かに答えた。

「牡羊座(3月21日〜4月20日生まれ)の偉大な指導者。貴方がまさにそうです。この詩は、第三帝国の運命を示しています」


ヒトラーの目が光る。

「運命?具体的には?」


カールはゆっくりとページをめくった。

次の詩が現れる。


*Par mer frappé du port de Malthe,*

*À la boüe la teste sanglante:* *L'heur de l'Aigle au Lyon sera perdu,*

*Et la flotte à l'Italie destincte.*


訳詩:

マルタ港で海に打たれ、

泥の中で血塗れの頭。

鷲の幸運は獅子に失われ、

艦隊はイタリアで滅びる。


「これは?」ヒトラーが聞く。


「1940年、地中海での敗北を示しています。貴方の海軍は、マルタ島で大損害を受けます。しかし、その後の詩で、貴方は復活します」


ヒトラーは暖炉の火を見つめた。

「予言は、敗北も予見するのか」


「ええ」カールは静かに答えた。

「しかし、最終的には勝利します。最終詩をご覧ください」


カールが本の最後のページを開いた。

そこには、鉛筆で書き加えられた一節があった。


*En l'an mil neuf cens quatre vingt neuf,*

*Le grand Roy d'effrayeur descendra:*

*L'Aigle Germanique à la mort sera pris,*

*Et le monde tremblera de sa fin.*


訳詩:

1989年、恐怖の大王が降臨し、

ゲルマン帝国の鷲は死に捕らわれる。

世界は、その終焉に震えるだろう。


ヒトラーは眉をひそめた。

「1989年?それは私の死から44年後だ。私が死ぬというのか?」


「いいえ、閣下」カールは静かに首を振った。

「これは第三帝国の終焉を示しています。貴方は死にません。貴方の帝国が、1989年に新たな形で復活するのです」


ヒトラーの目が輝いた。

「千年帝国……」


「まさにその通りです」カールは微笑んだ。

「ノストラダムスは、貴方の偉大さを予見しました」




## 2


翌日、1933年2月25日。

国会議事堂放火事件の翌朝。


ヒトラーは、カールを含む側近たちと緊急会議を開いていた。

机には、ノストラダムスの偽造版予言集が広げられている。


「この詩を見ろ!」

ヒトラーが一節を指差す。


*L'an mil neuf cent nonante neuf sept mois,*

*Du ciel viendra un grand Roy d'effrayeur:*

*Resusiter le grand Roy d'Angolmois,*

*Avant après Mars regner par bonheur.*


訳詩:

1999年7月、空から恐怖の大王が来る。

アンゴルモアの大王を蘇らせ、

その前後、火星は幸福に支配する。


「1999年7月、世界が終わる!」

ヒトラーは興奮して叫んだ。

「その時、我が第三帝国は復活するのだ!」


ヨーゼフ・ゲッベルス宣伝相が目を輝かせた。

「閣下、これは国民に伝えるべきです!」


「そうだ!」ヒトラーは立ち上がった。

「予言は我々を支持している!共産主義者、民主主義者、すべてを打ち砕く運命が決まっているのだ!」


カールは静かに微笑んだ。

彼の目的は、ヒトラーを予言に依存させることだった。




## 3


1939年9月1日、第二次世界大戦開戦の日。

ベルリン、総統官邸。


ヒトラーは、再びカールの前に座っていた。

予言集は、すでにボロボロになっていた。


「カール、この詩はどう解釈する?」

ヒトラーが指差すのは、別の四行詩だった。


*Par feu du ciel la cité presque aduste:*

*L'Vrne, l'Aqueduc perdus, qu'on bruslera:*

*Melite, le chef s'enfuyant espostute,*

*Grand aux esclaves, grand naufrage à son fait.*


訳詩:

天からの火で都市が焼かれ、

ウルネ、導水管が失われ、焼き払われる。

メルリテ、首長は逃亡し、

奴隷たちに大なる破滅をもたらす。


「これはポーランドの敗北を示しています」カールが答えた。

「メルリテはワルシャワ、導水管は交通網です」


ヒトラーは満足げに頷いた。

「予言通りだ。連合軍との和平交渉はどうなっている?」


カールは静かに答えた。

「閣下、予言には和平の道は書かれていません」


ヒトラーは予言集を叩いた。

「その通りだ!イギリス、フランス、すべてを叩き潰す!」


カールは内心で微笑んだ。

ヒトラーは、すでに予言の奴隷となっていた。




## 4


1945年4月28日、ベルリンの地下シェルター。

総統官邸地下深く。


ヒトラーは、震える手で予言集を開いていた。

ページは燃え焦げ、インクが滲んでいる。


「カール……どこだ……」

彼は呟いた。


だが、カール・フォン・シュタイナーはすでにいなかった。

1944年、彼はベルリンを離れ、スイスの銀行に資産を移していた。


ヒトラーは、最後のページを見つめた。

そこには、彼自身が書き加えた一文があった。


*1945年4月30日、地下シェルターにて、第三帝国は終わる。

しかし、1989年、我が鷲は蘇る。*


彼はゆっくりと銃を手に取った。

予言は、成就する。


暖炉の火が消え、地下室は暗闇に沈んだ。




## 5


1945年5月8日、ベルリン陥落。

連合軍の兵士が、総統官邸の書庫から一冊の本を見つけた。


ノストラダムスの予言集。

ヒトラーが最期まで握りしめていたものだ。


兵士の一人、ジョン・ロックフェラー四世が、その本を手に取った。

彼はページをめくり、最後の書き込みを見つけた。


*1989年、恐怖の大王が降臨し、ゲルマン帝国の鷲は蘇る。*


ロックフェラー四世は静かに微笑んだ。

「面白い。父上に持って帰ろう」


その本は、後にニューヨークのロックフェラー財団図書館に収蔵された。

そして、1989年。ベルリンの壁が崩壊した。


予言は、再び動き出す。




【次話予告】


番外編第2話「ロスチャイルドの工場」


1945年、ベルリン陥落直前。

カール・フォン・シュタイナーが、ロスチャイルド家の軍需工場をロックフェラー財団へ「ただ同然」で譲渡する。

予言を口実に、世紀の大スワップが始まる——。



【巻末解説:ヒトラーとノストラダムス】


実際、ヒトラーはノストラダムスの予言に強い関心を持っていた。ナチス宣伝省は、予言集をプロパガンダに利用し、「第三帝国の千年繁栄」を予言として国民に信じ込ませた。

本作では、この史実を基に、予言操作の始まりを描いた。


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