第6話 一年三組
そのまま廊下を進んでいくと、先生達らしき人が待っていた。
廊下の両脇に机を並べ、新入生になにやら一枚のプリントを配っていた。
「新入生の方はこちらのプリントをお取りくださーい」
俺たち四人も、そのプリントを大人しく受け取った。
プリントを見ると、名簿みたいであった。一から五組の欄があり、俺は自分の名前を探していた。
すると、俺の他に茜、瑞稀、秋の名前があった。
「あ! 拓翔、私たち一緒だね! 秋も、茜さんも!」
瑞稀も名前を見つけたのか、三組の欄を指さして、俺たちに見せつけていた。
俺達と同じクラスになれて嬉しいのか、どこか浮かれた声になっていた。
それにしても、クラス分けというのは大事なものだ。初めての環境、初めての人。それに馴染むためには最初からの友好関係というものも大事なのだ。
そのスタートダッシュを、知り合いが多い状態で切れたのは実に良いことだ。
「ですね! 私も知ってる人が同じクラスでなんだか嬉しいです!」
茜も、少し浮ついた声で俺たちに微笑みながらそう言う。
特に、茜と同じクラスになれたのはでかい。なんセ、茜と一緒のクラスというのは一緒にいる時間が増えるということだ。
つまり、記憶を取り戻せるタイミングが増えるのだ。
「一年間よろしくな。茜さん」
秋がもらったプリントを丁寧にファイルに入れて、カバンに仕舞おうとしながら茜に話しかけた。
急に話しかけられた茜は、ビクッと驚いたように反応した。
だだ、心を落ち着かせたのか秋の方を向き直り、「よろしくお願いします」と緊張しながらいった。
子供の頃の茜なら、もっと元気よく、そして人見知りなんてせずにいっているのだろう。
そう思うだけで、茜が本当に記憶喪失になってしまったのだという実感が湧き、もう一度涙が溢れそうになる。
だが、グッと堪えてみんなの方を向き直った。
「じゃあ、そろそろ教室行くか」
三人にそういうと、みんな二つ返事で先行する俺についてきた。
隣には茜が並び、後ろには秋と瑞稀が並んで、俺たちの方を見ながらヒソヒソとまたもや内緒話をしていた。
「えっと……一年三組は……ここか」
教室の扉上部にある看板を見ながら歩いていくと、今日からお世話になる一年三組の教室を発見した。
部屋へと入ると、あまり賑わいはなくシーンとしていた。
恐らく、全員が初対面だから話しずらいのであろう。中学の入学式前の教室もこんな感じであった。
黒板前になにやら席順が書いてあった。
どうやら、出席番号順になっているみたいだ。出席番号一番なので、教室前方の廊下側の席へと着席する。
残念ながら、三人とは席が離れてしまった。
この空気で立ち歩いて話にいけるほど陽キャではないので、静かに席へと座り、意味もなく先ほどもらった名簿を眺める。
数分後、教室のドアがガラッと開いた。
恐らく、このクラスの担任の先生だろうか。
ガタイが良く貫禄のある男の先生であった。偏見だが、体育教師であろう。校門前で竹刀をもってそうな先生だ。
「し、静かに……って、もう静かになってますね」
先生は、教室に着くなり教卓へと移動した。なんだか少々ぎこちなかった。
こういう先生は、大体初日で大声で一喝するものだと思ってたが……やはりああいうのはフィクションの世界だけなのだろうか。
人を第一印象で判断するものではないな。
「えっと……一年間皆さんの担任をする、高坂修造といいます。担当教科は家庭科です。よろしくお願いします」
高坂先生は、そういうと俺達生徒に向かって深々と頭を下げた。
……人は本当に見かけによらないものだな。まさか家庭科だなんて。
そんな高坂先生の挨拶に反応し、クラス全員も「よろしくお願いします」と挨拶をした。
その声は、全員どこかぎこちなかった。
初めての高校だから少々緊張しているのか、はたまた俺と同じくギャップに驚いているのかおそらく両方であろう。
「この後は入学式です。一度、制服の確認をしておいてください」
そういうと、先生は「ふぅ……」とため息をついて教卓に両手をついた。
この先生、実は見かけはいかついが、中身は気弱というタイプの人なのであろう。
それから数分して、一人の先生がこの教室へと入ってきた。
どうやら、いまから入学式の会場である体育館に向かうらしい。
最後の身だしなみの確認をして、廊下へと出て出席番号順に並んだ。




