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第3話 ミーナ、魔法使いになる

 「では、鑑定いたします」

 長い髭の、如何にも魔法使いといった風貌の老人がミーナのクチクラを手に取る。

 「お、お願いします」

 仰々しいその仕草にミーナの背筋も伸びる。老人は静かに手に取ったクチクラを横にある四角い箱に入れる。

 ポチ。……チーン。

 「うん、魔法使いだね」

 魔具かよ。魔具とはグリフ技術を応用、発展させた自動器具や機械の総称である。野営の時にお湯作ったコップも魔具、マーリに乗せてもらった魔導車も魔具と称される。

 「これは中々、近年稀に見る純度と透明度だ。オリジンにも匹敵するかも知れん」

 老人は少し震えた声で箱の横に示される数値を読み取る。眼間を指出揉み一息吐くと、紙に何やら書き出した。

 「これを、貴方の魔力等級は特一級です。帝国でも数人しかいない選ばれた人間ですよ!」

 老人の差し出す紙にはデカデカと魔力等級特別一級と書かれている。

 「さ、ミーナさん。これで貴方は本物の魔法使いと認定されました。次に行きましょう」

 マーリは至って冷静だ。すごく珍しいんじゃないの?

 マーリに連れられて来た場所は古びた本屋。

 「ここは装丁屋です。クチクラをグリモアの形に整えてくれます」

 「いらっしゃー……げっ、マーリじゃん」

 「ふふ、御機嫌よう。ハンナベル。この方のクチクラをお願い出来るかしら?」

 「またチンケな魔法士の偽グリモアならお断りだよ? そんな仕事しなくても紋章片(グリフ)作りで生きてけんだからね」

 「あらあら、良いんですか? 今回は本物ですよ? それも特一級」

 「と、特一級!? それを早く言えよ! 出せ、すぐ出せ!」

 とハンナベルは店台に詰め寄る。ミーナはその迫力に押され気味にオドオドとクチクラを出す。  

 「おーー! ……あんた凄えな。こりゃやり甲斐と危険がてんこ盛りだ」

 「ど、どうも」

 「ふーむ……」

 ハンナベルは目を細めミーナを眺める。 

 「な、何か」

 「体格とクチクラが合ってないなぁ、グリモア大きくなっちゃうかもだけど、何とかしてくれな。じゃ、クチクラ預かるよ」

 ハンナベルはミーナのクチクラを持って店の奥へと消えて行く。

 その間、ミーナは店の中を見て回る。

 古い本、本に被せるであろう金物の枠など。その中に気になる物があった。

 「何、この銃」

 それは銃の銃把の部分だけしかない。

 「ああ、それは魔法士が使うグリモア銃です」

 始めて聞く物だ。魔法使いは本状のグリモアを持つのは知っている。魔法士は銃状のグリモアなのか?

 「これは、魔法士を前線に立たせるべく開発された物です。この銃把の先にグリモアを取り付けるんですよ」

 とそこにある模型を取り付けて見せる。かなり小さい。厚みはあるが手のひらに納まるカードほどのサイズだ。ミーナのクチクラと比べてかなり小さい。魔法士とは本当に前線に立って良いものなのだろうか。と疑問の表情を浮かべているとそこにハンナベルが現れる。

 「グリモア小さいな、て思っただろ? アンタのクチクラがデカすぎるのもあるけど、実際魔法士なんて普通の人間に毛が生えた程度。それが今の帝国の現状さ」

 ハンナベルは憂いに満ちた溜息を吐く。

 「で、アンタのグリモアなんだが、三日後にまた来てくれ。最高のグリモアを拵えてやるぜ。じゃ取り掛かるからまたな」

 と、また店の奥へと引っ込んで行った。 

 「さて、ここですることも無くなりました。貴方の当面の家を押さえましょうか」

 「え、家当たるんですか?」

 良かった。路上で寝なくて良さそうだ。

 「そうですよ。一旦魔法庁まで戻って空き部屋を探しましょう」

 マーリとミーナは魔法庁へ戻り家を探そうとしていると、一人の貴族と鉢合わせた。

 「ああ、丁度良いところにいました」

 赤髪の長身、適度に整った顔立ち、何処にでも居そうな雰囲気だが、貴族の割に人当たりの良さが滲み出ている。この前ムステラに来た嫌味な貴族と同じ制服を着ていた。

 「ん? マーリ女史、どうかしましたか?」

 「この子の家を探しているんです」

 「へぇ。って私は差配人では無いんですが……」

 男はチラリとミーナを見ると、何か閃いたよう。

 「ああ、じゃあ丁度良い部屋がありますよ」

 マーリは男から部屋の場所を確認しミーナを案内する。

 「さあ、ここの上です」

 二人を乗せた車はあるタワーの下で止まる。

 「ここからは箒で上がります」

 マーリは車の後部の荷室から箒を二つ取り出す。

 「マーリさんも魔法使いなんですか?」

 「なんでです?」

 「よく分かんないですけど、年季の入った箒だなあと思って。そんな細い箒って魔法使いかなぁって」

 「ふふ、良い目をしてますね。さ、着きましたよ」

 ベランダに降り立つ二人。この部屋にはここがエントランスのようだ。

 「この部屋は下との二階分あります。シェアしてくれとのことで、ドアも無く自由に行き来出来るようになっていますが、嫌なら閉じるとも出来ます。下の住人は貴方と同郷らしいですよ? サリクト? さんて女の子」

 「さ、サリクト!?」

 ミーナの血圧が一気に上昇する。

 「え、ええ。この部屋を使う旨、伝えてくれるとのことです」

 ミーナの興奮ぶりに押されるマーリ。

 「サリクトさんにの確認はまだなので、下には行かないようにお願い……」

 言い終わる前にミーナは下へと駆けていく。

 「うわ、散らかってんなあ」

 サリクトは来て荷物を置いて早々に出て行った為に部屋を片付ける暇が無かった。

 「しょうが無いなあ」

 とミーナは部屋を片付けだす。口では面倒臭そうに言っていてもその表情はとても嬉しそうだ。

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