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第2話 帝都(都市と魔法使い)

 帝都門番の朝は早い。

 朝日の昇る少し前に持ち場に就き朝六時辺りには開門する。門の前には旅人や商人達の長蛇の列。そんな彼らを相手に商売をする者達。夜に着いた旅人が朝までの時間を過ごす宿や食事を提供する店などなど。そんな中、置き引きや窃盗などの犯罪も発生するがそれに対して門番は見て見ぬふり。豊かな国であっても城壁の外は危険が絶えない。

 「オラァ! 盗んだもん返せコラァ!」

 と盗難にあった旅人が銃を撃ちまくる。周囲に人がいても御構い無し。しかし門の外は無法地帯では無い。

 「はいそこの無法者、逮捕しまーす」

 門の外側を空から警備をしている箒達がいる。彼らは外苑警備隊。行き過ぎた行為は彼らに連行される。連行されたら最後、荷は没収され暫く帝都へは入れなくなる。旅人や商人達は帝都に入るまで荷を守る必要があるのだ。その為に商人達は傭兵や用心棒などを雇い自身の身を守っている。その用心棒達が信用出来るとは言えないが。

 門番が開門待ちの列を捌き切ったとき、フヨフヨと力なく飛んでくる箒が一つ。

 「ああ……。着いたあああ」

 ミーナは漸く帝都の門まで到着した。かなり消耗したようにボロボロになっている。帝都までの街道は大きく迂回するようになっており、その通りに進むとなかなか時間が掛かってしまう。

 「近道しなけりゃ良かった…。」

 そこでミーナは最短距離を突っ切ることにした。そうすれば無駄に時間を掛けることも無いと考えたのが間違いだった。途中に魔力塔が無いために凶暴な獣達に襲われ、空中のエーテル溜まりに掠り、強風に煽られ、等など散々な目に遭っていた。魔法軍空箒騎兵団の広域警ら任務など、領地内の都市から離れた場所も広く巡回しているが、ミーナは運悪く出会さなかったようだ。

 「ふう、よし」

 ミーナは門を通ろうとする。

 「はい受付お願いします。ここに名前と来訪理由を書いてください。そして通行証か無ければ通行料千五百リジュお願いします」

 門番に止められる。

 「え、お金、いるの……」

 始めての一人旅人最初で最大の難関か。

 「はぁ、お嬢ちゃんね、どこから来たのか知らないけどさ、大体どこも門を通るときには必要なんだよ」

 「やば……。どうしよ……。今まで誰かが払ってたんかぁ」

 「こりゃ困ったな……。因みに何しに来たの?」

 「く、クチクラが出たので来たんですけど……」

 「ああ! クチクラの判定に来たのか! それ先に言ってくれよ。 こっちだ」

 門番はミーナを門をくぐった先にある小屋に連れて行く。

 「ここでまっててくれ。担当者を呼んでくるから」

 暫くすると艷やかな黒地の制服を来た女性が現れる。

 「お待たせしました。私は魔法庁職員のマーリと申します」

 「ミーナです」

 「魔法庁までお送りいたします」

 マーリは自身が乗って来たであろう魔導車にミーナを乗せ、自身もその隣に乗り込む。

 「では移動の間、簡単に魔法使い採用の現状について説明します」

 「は、はい」

 何も聞かれないが良いのだろうか。クチクラも見せてないし、素性も聞かれない。

 「我が国において魔法使いは減少する一方であり、新しい人材の確保は重要事項となっております」

 優しく説明するマーリと目が合い思わず頷くミーナ。

 「その為、公表はしていませんが、魔法使い未満の魔法士レベルのクチクラサイズでも魔法使いとして採用し、魔法爵の爵位を授与しています。まあ、皆さん知っているようですが。ミーナさんのように素直に名乗り出てくれる人ばかりじゃありませんし、必要に応じてスカウトにも赴きます」

 「へえ……」

 そんな簡単に爵位ってあげるもんなの? ん? スカウト……。それって、クチクラが出来た人を把握してる、てこと?  

 帝国では魔法使いをクチクラの大きさで判定している。本来、魔法使いは成人の証であるクチクラの質で確認されるものであり、大きさは関係ない。ただ、エーテル生成量の多い者はクチクラも大きい為、総じて魔法使いのクチクラは大きい。しかし、帝国では大きさだけが基準となり、一定以上(本来の魔法使いよりも一回り小さい)あれば魔法使いと認定している。そして爵位を与え限定的ではあるが貴族特権なるものも行使出来るようになる。それは軍隊への入隊と引き換えではあるが、爵位という輝かしい響きに釣られてやってくる者が後を絶たない。ただ、ミーナの父やマーリが言っていたように申告性の為、軍に拒否感を持つものは黙って過ごしている。サリクトはクチクラが無いまま魔法使いとなったが、これはシルードがスカウトした形になっている。

 規程サイズ以上のクチクラを持ち込めばもれなく魔法使いの称号と魔法爵の爵位が与えられ、魔法訓練校へ入学することになるが、それでも魔法使いの鑑定は行われる。本当の魔法使いと判定されれば、魔法訓練校での内容が変わってくるからだ。

 「……で、ざっとこんなものですが、何か質問はありますか?」

 「取り敢えずは、大丈夫です」

 長い話しは苦手だ。ミーナは窓の外を見る。学校行くのか。寮かな。何にも考えず出てきたけど、お金どうしよう。働かないとな。食べ物とか、暇つぶしの道具くらいしか持って来なかったな。着替えも無いし……。死んだか、これ。

 ぼうっとしているミーナの目の前を帝都の街並みが流れていく。外には上に行くほど広くなる巨大な集合住宅であるタワーが林立する。そのタワー達の傘の下に帝都の街は広がり、大きな通り沿いには色々な店が立ち並んでいる。人通りも多い。今走っている道路も大きい。全てが大きい。ムステラで一番大きな道は入り口の門からブランクの入り口である北門まで待つ間すぐに通る通称『狩りの道』だが、それよりも広い道だ。しっかり整備され、平坦に整えられている。帝都はその大部分を超帝国時代からそのまま使用されていると言う。ムステラと少し似た雰囲気を感じる。

 「帝都は都市の規模に比べ中心の魔力塔が非常に小さく保護能力が低いのですがそれを補う為に各タワーと地下で繋がるエーテリックリザーバーを中核とした都市防衛機構、アイギスが稼働しています。これで都市全域の守っているのです」

 ミーナが聞く耳を持っているかなど御構い無しに話し続けるマーリ。

 「またアイギスは都市内の照明や水道などの動力源としても使われているんですよ」

 「へえ」

 何を考えているのかよく分からない表情で外の景色を眺めるミーナ。

 「さあ、着きましたよ。魔法庁です」

 車から降りた目の前に大きな建物が聳え立っている。

 「さ、こちらへ」

 マーリに導かれ中へ入る。

 ぼうっとしたように見えるミーナは魔法使いになれるのかよりも、サリクトに近づいたことに気を取られている。

 早く探しに行きたい。

 本当は魔法使いなんてどうでも良いのだ。

 サリクトに会いにきたのだから。

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