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仮面の下の問いかけ

黄昏の時、雪誠とリーヴは谷からようやく撤退してきた。 彼らは罠にかかった風尾獣を救い、負傷した村人を安全な場所まで送り届けた。 疲労はあったが、心は静かだった。 川辺で野営の準備をしていたそのとき——


林の奥から、一筋の光が閃いた。 白い法衣を纏い、杖を手にした神殿の使者が現れた。 その眼差しは刃のように鋭く、空気が張り詰める。


「魔王の使者。」 冷ややかな声が響く。 「お前の行いは、すでに各地に知れ渡っている。 神殿は問う——魔の名を掲げ、善を為すその意図は何だ?」


雪誠は立ち上がった。 銀灰の獣面が夕陽を受けて光り、沈黙のまま佇む。


リーヴはわずかに身をずらし、警戒の眼差しで使者を見つめた。 これはただの問いではない。 信仰そのものを賭けた「審判」だった。


「お前は魔獣を救い、人間も救う。」 使者は続けた。 「どの陣営にも属さず、秩序を乱している。 お前は一体、何者なのだ?」


雪誠は仮面を外さなかった。 ただ静かに歩み寄る。 使者の光が仮面に反射し、獣の輪郭と沈着な瞳を浮かび上がらせる。


彼は低く語り出した。 その声は仮面の奥から響き、抗いがたい重みを帯びていた。


「お前たちの言う秩序とは—— 魔獣を罠で死なせ、人間を恐怖の中に放置することか?」


使者は言葉を失った。


「お前たちの言う善とは—— 選ばれた者にだけ与え、他を見捨てることか?」


雪誠は一歩、前に出た。 その声はなおも静かだった。


「お前たちの神とは—— 祈りの声だけを聞き、痛みの声には目を背ける存在か?」


使者の手が杖を強く握りしめる。 その眼差しが揺らいだ。


雪誠は足を止めた。 光と影の境界に立ち、静かに言った。


「僕は、お前たちの承認を求めてはいない。」 「ただ一つ、問いたい。 お前たちの信仰は—— まだ『憐れみ』という言葉を覚えているのか?」


彼は背を向け、リーヴと並んで夕闇の中へと歩き出した。 仮面の奥の瞳には、怒りではなく、静かな哀しみが宿っていた。


使者はその背中を見つめ、 長い間、何も言えずに立ち尽くしていた。

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