光の残響
雪誠は壇を降りた後、振り返ることはなかった。 彼は人々の中へと歩み、まるで一滴の水が川に溶け込むように消えていった。 自分の言葉が痕跡を残したかどうかも知らず、拍手や反応を期待することもなかった。
だが、彼が見なかったものがあった—— 彼が背を向けたその瞬間、広場のキティ神像の前で、一人の若きエルフの神職者が静かに立ち上がった。
「彼の言葉は、正しい。」 その声は大きくはなかったが、澄んでいて、広場に届いた。
「私たちはいつも神の選びを待っている。 でも忘れていた——私たちも、神を選ぶことができる。」
一人のドワーフの鍛冶師が低く呟いた。 「鉱山が崩れた時、祈ったけど誰も応えてくれなかった。 でも、生き延びた。自分の力で這い出した……それが、神のやり方なのかもしれない。」
一人のドラゴン族の戦士が神像の前に進み、兜を脱ぎ、片膝をついた。 「キティは人間だけを見ていると思っていた。 でも、あの言葉……『光は、歩こうとする者を照らす』…… 僕も、歩きたい。」
その夜、キティ神像の前には数十の灯火が灯された。 それは神殿が用意した儀式ではなく、信徒たちが自ら捧げた祈りだった。
彼らは互いに物語を語り始めた—— 絶望の中で善を選び、孤独の中で信じ、闇の中で歩みを選んだ者たちの声。
市場では誰かが雪誠の言葉を語り、 神殿の外では誰かがあの経典の一節を描き、 異なる種族の間で、古びた経典の写本が静かに広まり始めた。
誰も、その語り手が誰なのか知らなかった。 彼には名もなく、聖印もなく、神職でもなかった。
だが、その言葉は火種となり、眠っていた信仰に火を灯したのだった。




