第5話:鉄砲より味噌汁が強い説
醤油づくりの成功に味を占めた俺は、次の挑戦に出た。
「……味噌だ!」
醤油の副産物として、味噌もできる。
いや、正確には大豆を加工する段階で分かれるんだけど、細けぇことはいい。
「大豆をこうして……こうして……」
仕込みを村人に説明するも、半分以上は「殿、また変な遊びしてる」扱い。
でも一部の主婦層は目を輝かせていた。
「もし本当に“塩気のある豆の保存食”ができるなら、冬場に助かるねぇ」
主婦パワー恐るべし。
こうして俺の味噌計画は、村のおばちゃんネットワークに支えられる形で進行した。
―――
数か月後。
ついに味噌が完成した!
見た目は茶色のドロドロ。匂いは……うん、発酵臭。
「ほ、本当に食えるのか?」
「殿、危険な遊びはやめてくだされ」
不安げな村人たちの視線を受けて、俺は木の椀を手に取った。
「だいじょうぶ!みそしるにする!」
大根、人参、芋を鍋に入れ、味噌を溶かす。
ふわっと立ち上る香りに、村人たちは目を丸くした。
「な、なんだこの匂い……」
「おなかが……ぐぅ……」
完成!異世界初の味噌汁だ!
―――
「いただきます!」
俺がずずっと啜ると、口の中に広がる懐かしい味。
あぁ、これだ。実家の朝の味。戦国でも異世界でも、日本人の魂は味噌汁なんだ。
村人たちも恐る恐る飲んでみる。
「……うまい!」
「体が温まる……!」
「殿!これは……革命だ!」
味噌汁で革命て。
だが、村人たちの頬は紅潮し、皆が笑顔で汁を啜っている。
「おかわり!」「こっちにも!」と鍋はすぐに空っぽになった。
―――
その夜。
村の広場で焚き火を囲み、味噌汁を啜りながら語り合う村人たち。
子供も大人も、誰もが幸せそうだった。
俺は思った。
鉄砲があっても、魔法があっても、天下統一に必要なのはまず「飯」だ。
味噌汁は民をつなぐ。
味噌汁は戦より強い。
布武丸、3歳。
味噌汁で天下布武の一歩を踏み出した春の出来事である。




