第4話:醤油を仕込め!殿の新たな戦
農地改革の成果で、村は豊かになった。
米も野菜も収穫が増えて、村人は「殿すげぇ」って笑顔を向けてくれる。
だが……俺は満足しなかった。
「米があれば……次は味噌!醤油!」
戦国時代オタクとして、絶対に欠かせないアイテム。
武将の胃袋を掴む調味料、戦の勝敗を決める兵糧の要……それが味噌と醤油だ!
―――
問題は――どうやって作るか。
2歳児(もうすぐ3歳)には難しい課題だ。
でも、幸いなことに俺の中には現代人の記憶がある。
「えーと……大豆を蒸して、麹を混ぜて、塩水に漬ける……」
うろ覚えだが、多分そんな感じだ!
俺は大豆を持ってきて、村人のおばちゃんに頼んだ。
「これ!ふかす!」
「蒸す、ってことかい?おやまぁ、殿はまた変な遊びを……」
次に、麹っぽいものを探す。
ここはファンタジー世界、麹カビがあるかどうか分からんが……
「おばちゃん、この白いカビ、ちょうだい!」
「殿!?腐った豆なんて食べちゃダメ!」
「ちがう!これ!だいじ!」
必死にアピール。最終的に「殿の遊びだから仕方ない」と、村の隅っこで仕込みを許された。
―――
で、数か月。
木樽に仕込んだ大豆と塩水は……見事に黒い液体を生み出した。
「な、なんだこれ……?」
「黒い汁……こわっ」
村人たちがざわつく中、俺は勇気を出して舐めた。
「……うまい!」
しょっぱさの奥に広がる深み。これぞ――醤油!
「みんな!これで煮物つくろう!」
鍋に醤油を入れて、野菜を煮込む。
香ばしい匂いが村中に広がった。
「な、なんだこの香り!」
「うめぇ!うめぇぞ!」
村人たちは大喜び。
そして口々に言った。
「さすが殿!また変なものを作った!」
「これも“かいかく”か!」
―――
こうして村に「醤油文化」が誕生した。
赤ん坊布武丸、3歳。
醤油で天下統一への道を一歩進めた冬の出来事である。