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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

どりヰむラヂオ

作者: 小林ミメト

俺は、どこにでもいる高校生だ。ある日下校中に奇妙なものを見つけた。


それは、いつ崩れるかわからない木造の家屋だ。看板を見る限り中古品店のようだ。


「面白そうなものを売っているかもしれねえな。」


そんな気持ちで入った。朽ちたフランス人形に顔が彫られた変なツボ、品ぞろえは一言でいえば不気味だった。その中でも目を引いたのは、税抜き194円とかなり安い値段で売られていたラジオだった。


ラジオはコンセントにつながれていた。そのラジオは音量を調節するつまみが取れていて、あちこちにシールを張ってはがしたような跡があった。


でも俺は、話のタネになればいいという気持ちで買おうと思った。


「すいません!誰かいませんか?!」


すると、どこからともなく少女の声が聞こえてきた。


「だれか、そこにいるの?」


その時、暗闇からぬっとやせた禿の爺さんが出てきた。そして、コンセントを抜いて話しかけてきた。


「これが欲しいのか小僧?」


「は、はい。」


迫力に気おされそうになりながらも俺はそう答えた。


「194円だ。」


俺は財布からお金を出して爺さんに渡した。


「大事にしなよ。」


俺は家につくと早速、ラジオをコンセントがある窓のそばに置いた。


コンセントにつないで聞いても、ふつうにラジオ番組で放送されているものが流れていて、特別何かが起こるというわけではなかった。


「なんだ。つまんねー。」


数日たってから夜中にトイレで目が覚めて、自室に戻ると「たすけて」というか細い女の子の声が聞こえてきた。


窓の外を見ても誰もいない。ましてや俺に姉や妹もいない。俺は背筋がぞっとした。


「き、気のせいだよな。」


その日から変な夢をみた。どこまでも続く暗闇に一人で泣く子がいた。その子は、おさげ頭で赤い釣りスカートに白ワイシャツという昭和感丸出しの女の子だった。


「たすけて、おにいちゃん。」


少女が振り返る寸前で目が覚める。それが毎日だ。


翌日、珍しく学校の仲間内でラジオの話題で盛り上がった。というのも声に特徴のある有名配信者たちが、今夜のラジオ番組に出演するらしく、ボイスデスゲームというのをやるらしい。


俺は早速教えてもらったチャンネルに合わせて番組を聞くことにした。


しばし、ラジオ番組を楽しんでいると電波が悪くなったのか砂嵐の音が混じるようになった。


「ん?壊れたかな?」


だが、砂嵐の中で少年、少女の「助けて、お願いここから出してー。」とか細くも必死に生にしがみつこうとする声が聞こえてきたので断片的にだが内容は読み取れた。


「ま、安い買い物だったし贅沢は言えんよな。」


しばらくつまみをいじっていると、電波が正常に届いたのかようやくはっきりと聞こえるようになった。


眠くなった俺は、ラジオ番組が終わるとすぐに電源をオフにして眠りについた。


また、あの夢を見た。


今度は、今どきの子供たちの同じような格好の男女2人組が後ろ向きで立っていた。


相変わらず背景は暗いままだ。


その子たちは振り向かずに口々に言った。


「いつになったら出してくれるの?」


「ぼくたち、このままずっと・・・。」


「いやだ!そんなのいやだ!」


「「「だしてだしてだしてだしてだしてだして!!!」」」


「うわああああ!!!」


目が覚めるともう夜明けだった。


汗はぐっしょりで布団にも汗が染みついていた。


ふとラジオの方向から視線を感じてバッと振り向いた。


当たり前だがそこになにもいなかった。


「き、気のせいだよな・・・。」


翌朝、俺は、学校の友達に雑音で聞き取れなかった場面を聞こうとしてあの子たちのことを話した。


ところが皆が口をそろえて「そんなシーンはなかったよ」と言った。


「違う番組を見てたんじゃねーの?」


「そんなはずはねーよ!ちゃんと教えられたチャンネルに回したよ。」


そう言って俺は、最初はどんな流れだったかを的確に話した。


最初はみんなも同じだったのかうんうんと頷いていた。


「途中で寝ちまったんじゃねーの?」


「最後の方、覚えてる?」


「ああ、最後は胸糞だったぜ。参加者が彼らのほかにもいてさ。子供の男女2人組なんだ。で、『助けてー!』だの『だしてー!』だの言っていたのに終始無視されていて、主催者もあたかもその2人だけはいないように扱ってたんだ。その2人は脱出できずに放置されて終わりよ。おかげで夢にまで出てきてさー・・・ってあれ?」


みんなは訝しげに俺を見た。一部の女子たちは青ざめていた。


「な、なんだよお前ら?!」


「配信者以外だれもいなかったよねー。」


「ああ、ネタバレになっちまうが全員脱出できて終わりだったぜ。」


夕飯を家族と一緒に食べていると親父が帰ってきた。


親父は席に着くと俺にリモコンを要求してきた。


ほかの家では違うと思うが、俺の家ではリモコンの主導権は親父が握っていて絶対だった。


小さいころからそうだったので、多少の不満はありながらもリモコンを渡した。


親父はニュースが好きでその日もバラエティからニュースに替えられた。


そこで俺は、衝撃的なニュースを見た。


近所の行方不明者に関するものだが、そこに映っていたのは、俺が昨日の夢で見た男女二人組だった。


ニュースによると男の子は半年前に、女の子は1年前に行方不明になり、捜索願が出されていたそうだ。


そして、ニュースでその子たちそれぞれの行方不明当時の部屋が映し出されていたのだが、一つだけ共通点があった。それは、俺が持っているラジオと全く同じものが部屋の隅に映し出されていたのだ。


「ぐ、偶然だよな。」


「どうした?」


「なんでもねーよ。」


「やーね、物騒になったものだわ。」


また夢を見た。相も変わらず男女二人は俺に背を向けて立っていた。


だが、今回は一言も発さない。


「おい!何か言えよ。俺が助けてやるからさ!」


「無理だよ。」


「もう、遅い・・・。」


すると誰かが袖を引っ張った。赤い吊りスカートの女の子だ。


「なんだよ?」


「ここからあんたはもう出られないよ。」


「・・・え?」


なぜか女の子の声はしわがれていた。


彼女はぬっと顔を上げた。


その顔は女の子の顔ではなく、目が窪んだしわくちゃの老婆だった。


彼女はいびつな笑顔でケラケラと笑った。


「餉家毛気卦化祁懸袈仮華!!!!」


この世の物とは思えない笑い声に俺は思わず叫んだ。


「ぎゃああああ!!!」


目が覚めるとそこは元の家、両親が起こしに来たもののなぜか自分に気づかない。


何より、俺がベッドにいないのだ。


怖くなって叫ぼうとしてもなぜか声が出ない。体が動かない。ようやく親が自分に気づいたものの。


「古いラジオね。」「捨てちまえこんなの。」


どうやら、コードを抜こうとしているようだ。いよいよもってまずい!!


「まって!お願いたすけ・・・・。」


意識が戻りあたりを見回すと、あの中古品店だった。俺はここで商品として生きていくことを悟った。


数日後、両親がここを通りかかった。幸い電源コードがつながっているようだ。


僕は覚えたての技で必死につまみを回して言葉を作った。


「パパ・・・ママ・・・ボクハココニイルヨ。」


ママは言った。





「この空き地って何が建っていたのかしら?」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 呪いのラジオの発信先が呪いの本体というネタは山のようにあって食傷気味ですが、そんな中にあって、他人には普通に聞こえる番組に紛れ込む形で心の中に入り込むという系統は今企画ではあまり見かけませ…
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