永遠に愛することを誓います
最終話になります。
ジャンポール城の隣の森の奥。
動物たちも集う、この湖は、クロエ様の魂を宿しているかのよう。
初めて訪れたときから、ずっと私のことを、見守っていてくれたように思う。
シャノンが持っていたクリスタルは、玉座の隣に置かれることになったらしい。
クリスタルは、増幅装置のようなものらしいけど、私には不要だし。
思いを馳せれば、どこまでだってこの声を、響き渡らせることができるから。
陛下は、私を聖女として認定しないでおいてくれた。
ジャンポール領に代々伝わる、不思議な癒しの歌を歌う侯爵夫人と、触れ回ってくれたのだ。
……素敵な称号だわ。
ユリウスのお母様と一緒。
レオナード様からは、「来年の春、ローズゼラニウムの苗を送る」と連絡があった。
あの街のローズの香りには、本当に癒された。
きっとこの子も気に入ると思う。歌が好きな子に育つといいけれど。
お腹はまだぺったんこで、命が宿っていることは、外見からは分からない。
リュカとエメは気づいているみたいだけど、ユリウスにはいつ言おうかしら。
「また、ここか。お前は本当にこの湖が好きだな」
ユリウスのことを考えていたら、やって来たわ!
「うふふふ。だって、一番落ち着く場所だもの」
ユリウスは大袈裟に眉を吊り上げてみせた。
「俺の側よりもか?」
……始まったわ。
「もう、場所の話よ。もちろん、この世で一番落ち着くのは、あなたの側よ」
よしよしと満足げにうなずいてから、ユリウスが真面目な顔で本題に入った。
「俺たち、あんな始まり方をしただろ。その――」
ユリウスの目が少し潤んでいる。
「ちゃんと誓いの儀をやっておかなきゃな」
「え? まさかリュカを呼んでくる気?」
「いいや。そんなことであいつを呼んだ日には……。と、とにかく、俺はお前に誓う。だから、お前も俺に誓うんだ」
「うふふ。分かったわ」
ユリウスと向かい合って、両手をつなぎ、見つめ合う。
「じゃあ、聞くわね。私を永遠に愛することを誓いますか?」
「ああ、誓う」
ユリウスったら、今更照れているの?
「お前の番だぞ。いくぞ。――永遠に、俺を永遠に愛することを誓うか?」
「はい。誓います」
ユリウスはそれだけでは満足できないとばかりに続ける。
「お前は生涯、俺の側にいるんだぞ」
「はい。もちろんです」
「本当だな」
「だから、誓いますってば」
「絶対だぞ」
「もう」
……おねだりね。
私の唇で、その口をふさいでほしいんでしょ。
「こらっ」と叱るように唇を押し当てると、ユリウスの方から押し戻された。
「……ううん」
ユリウスが、その大きな手で、私の両頬をそっと包み込む。
そうして私たちは、いつまでも離れずに、永遠に続くキスを交わした。
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日常回を挟もうかな、などと悩みましたが、サクサクと進める方を選びました。




