3.小説書きます
そこからは死に物狂いだった。
まず最初に、評価点狙いで短編を書こうとしたのがまずかった。
鈴は『そんなインチキはダメ』と吐き捨てるように言った後、物語のジャンルに至るまで注文をつけてきた。
「ジャンルは現代恋愛。テーマは幼なじみと付き合う話」
年齢=彼女居ない歴の俺に……恋愛だと!?
無理だ無理、絶対に無理!!
「鈴……さすがにそれは……」
「いいからやる。出来なければ3億円は遠のく」
くっ……こちらの立場が弱いとはいえ何たる仕打ち。
上等だ、俺は今から恋愛のプロだ。そう自分に言い聞かせる。
さて、まず考えるべきはヒロインか。少し考えてみるもののピンと来ない。金髪ツインテールのツンデレ……なんか違うな。
黒髪の清楚お嬢様……も違う気がする。
もっと身近な……そうだ、鈴をイメージしよう!!
少し時間が空いたとは言え、幼少期の思い出はそれなりにある。
設定は幼なじみの男の子にベタ惚れのストレートボブの女の子。
1時間経過……。
「出来たー!!とりあえず1話目が出来たー!!」
パソコンに打ち終えたテキストを鈴が目で追う。
読み進めていくうちに、どんどん表情が曇っていく。
「駄作臭漂うからボツ。あと、惚れているのは男の子の方。書き直し」
そう言うと彼女は、全て消した……。
俺の1時間分の努力がぁぁぁぁぁぁぁ!?
その後、何度も書き直し気づけば2時間が経過。
ようやく鈴の納得するものを書き上げた。
「うん、この調子で書くように」
最初の1話を投稿し終えると、今日はもう帰っていいと言われた。
俺はパソコンを持っていないので、これから先はスマホで投稿しようとしたが、鈴の部屋で続きを書くことを強制された。
翌日からも作業に没頭する。
毎日1話更新、学校が終わると鈴の部屋での執筆作業。
2日目からは何故かアップロード作業は鈴が行うと言い出した。
別に大した作業でもないので自分でやると何度も伝えたが書く方に集中しろと言われ、首を傾げながらもその指示に従った。
数日経った頃、今日も作業に取りかかろうとしたとある日、鈴が驚きの声を上げた。
「雄、感想欄がえげつない事になってる……」
「な、なんだと!?俺の描く幼なじみとの甘く切ない駆け引きは完璧のはずだ。どこに文句を言われてるんだ!?」
俺は予想外の言葉に、つい反論してしまう。
「落ち着いて。糖分が足りないという声が多い。もっと幼なじみを甘やかして」
「こ、これ以上だと!?そんなの誰が見て楽しいんだ!?そんなんじゃ1位は取れな……ひっ」
鈴は笑顔を浮かべているだけなのだが何故か寒気がした。
こういう時は自分の直感に従うべきだ、触らぬ神に祟りなし!!
「ま、任せてくれ。俺の滾る妄想をこの作品にぶつけてやるぅぅぅぅぅ!!」
「うるさい、口よりもさっさと手を動かす」
「あっ、はぃ………」
その後も暫くの間、黙々と作業を続けたのだった。
自分の作品をサイトで確認したらその時点で失敗と見なすと脅され、自分の作品がどんな評価をされているかは分からないまま月日が流れた。
そんなある日……ついに事件は起こった。
「雄、あなたの痛い妄想を垂れ流した作品はこれ以上頑張っても結果は得られそうにない」
「え……。俺の作品ダメだったのか……そうだよな、恋愛未経験の童〇が書く話なんて誰も読みたくないよな……」
「落ち込まなくていい。雄はよく頑張った。今回は失敗だけど頑張ったご褒美に成功にしてあげる」
「マジで!?いいのか!?おお、ありがとう鈴様。俺、次も頑張るから」
「気にしなくていい……」
鈴は、もしかしたら俺のこと好きなのかもしれない。
失敗しても、スタンプくれるとか俺の事好き過ぎだろう。
これは3億円は案外簡単に手に入るかもしれないな……俺は込み上げてくる笑いを抑えるのに必死だった。
【現在、鈴のお願い1つ達成】




