「戒律の厳しい北の修道院」の裏話
久々の新作ラーメンだよ!!
( `・ω・´ )つ
いつも通りの感じのやつ!!
クソッ!!! 失敗した……。
どこで選択肢を間違えたのだろう。全然攻略が進まなかったからかなり最初の方に違いない。実技の授業で魔力暴走を起こして怪我人を出しつつも素晴らしい潜在魔力だと目を引くところまでは成功したのに。
最初の出会いになるカイン様が昼寝してる場所に手作りのサンドイッチ持って行ったのに食べてくれなかったし、変なものを見る目を向けられた。入学後すぐの移動教室で転んだ時にサミュエル様が助けに来るはずだったのに来ないし。そのために何度も自分からつまずいたフリをするはめになった。それでも結局イベントは発生しなかったけど。
アルバート王子も、ゲームではいなかったはずの婚約者がいてその婚約者や周りの女子に「婚約者がいる方に対して距離が近すぎる」とかなんとか言って文句つけてくるし。最初からおかしかったのよね。
しかも教会からの聖女任命もなくなっちゃったし。ゲームと違う。考えたくなかったけど……やっぱりあの王子の婚約者も転生者だったんだ。あの女が私が幸せになる道を潰したんだ。
最低……! 貴族に生まれたからってズルして、ゲーム開始より先に攻略進めるなんて……
恨みを込めて胸の中で感情が渦巻くが、首にはめられた魔道具の首輪から強引にその熱量を吸い取られてしまう。今の私には反撃の手段すら奪われて手元にない。
罪人の証として魔力を吸い取る首輪を着けさせられた私はボロい馬車で修道院に輸送されている。お尻も背中も痛いし、手枷もうざくて眠ることもできない。
悔しい……はめられた……!!
私はただゲームの通りに攻略しようと思っただけなのに、勉強を教えてと頼んだりデートに誘っただけで不敬罪だなんて。ずるい、ずるい! あの女はゲームのシステムと関係ない所で王子や他の人とも散々いちゃいちゃしてたくせに。
「警告もしたしこれでも十分猶予は与えた」って何?! アルバート王子はあんな冷たい目をするキャラじゃなかったのに。敬語あまあま溺愛が売りでしょ?! 幸せになろうとしただけだったのに、ひどいよ……
私はあまりにもつらくて涙を流した。なんで私だけこんな目に……
「イザベラ、絶対あんたの思う通りにさせないから……」
おそらく転生者だったのだろう、派手な見た目の顔だけは良い女を思い出して私は奥歯を噛みしめた。
送られた先の修道院で魔法を開発して首輪を外して復讐してやる。前世の知識があって、アニメや映画のCGを思い浮かべれば威力のある魔法は色々作れたから、きっとこれも上手くいくはず。
それとも、修道院の経営に参加して色々事業をやるのもいいかも。私、前世の三十ウン年プラス今回の十七年で知識も経験も豊富だし、まず修道女として名声高めるのもいいかもしれない。料理チートとか鉄板よね。
ゲームでは聖女になった私に嫉妬していじめが起こって、攻略対象がそれを解決してくれて、いじめをしてた女生徒が退学になるイベントがある。
その後「戒律の厳しい北の修道院に送られた」ってサラッと表示されるだけで、当時は「聖女様をいじめたんだから処刑するのが当然でしょ?!」とか腹が立ったけど、何やっても修道院送りが一番重い罰で処刑は無いって事なのだろう。
あの女に虐められたってちょっと嘘吐いただけなのにアルバート王子が「本来は処刑が妥当だが」とか何とか言ってたけど、脅かしすぎよね。
あーあ、修道院ってやっぱお祈りとかするのかな。暇そう。まぁ私は座った姿勢のまま寝るのが特技だからたぶん平気だけど……
着いた先の修道院は、お城が見えるぐらい近い城下にあった。北というか、離れたとこにあるんじゃないの?
思ったよりキレイな石造りの建物で、高い塀に囲まれて警備の兵までいる。掃除も行き届いてて結構快適だった。
おばさんのお世話係りみたいな人もついて、お風呂まである。おばさんは顔が火傷でぐちゃぐちゃで、手の指が何本かないし足を引きずっててちょっとキモいけど……。部屋は狭くてショボいけど、掃除も料理もお祈りも何もなくて拍子抜けしてしまった。
これなら私、ここでもやっていけるかも。見てなさい、私のここからの活躍を。間違いを認めて土下座しても許してやらないんだから。そうねぇ、自分達が間違っていました、罪滅ぼしさせてくださいって下男よりひどい扱いをしていいならそばに置いてやってもいいかな。
ただ、ここ……他にも私みたいな若くて綺麗だったり可愛い子はたくさんいるけど、その子達はずっと暗い顔してるし、時々あたおかな感じのヤバそうなのもいて怖い。それだけ嫌。
「え? 今日は違う部屋で寝るの? わー、すごい素敵な部屋。ねぇ今日からこっちの部屋を私のにしたいな。ダメ? 何で? 仕事がある日だけ? 仕事って何……? きゃああっ!! 誰あんた!!
今日寝る部屋、と火傷のおばさんに案内されたとこにお風呂場から出てきた太った男が現れた。
イボガエルみたいな顔、正面から見て潰れた鼻の穴が見えるし目は両方外側向いてて顔も体もブツブツだらけ、普段なら口もきかないし目も合わせない、そんな男がバスローブ一枚でこの場に現れたのだ。
私は悲鳴を上げて火傷のおばさんの後ろに隠れようとしたが、ぐっと腕を掴まれて止められてしまう。首輪に魔力を奪われて常に体に力の入らない私はそれに抵抗する事ができずに男の前に突き出されてしまった。
何、なになになに?!!
「あー、その子か? 新顔って。いやぁ初物っていいねぇ。理解してないのが絶望して泣き叫ぶのがたまらないよなぁ」
ニチャッと笑ったその男の言う事は何も分からなかったけど、これから最悪な事が起きるって突きつけられて鳥肌が立った。
「なぁ、今度王都外れにある娼館に行かないか? 安いわりに良いのが揃ってるんぞ。それに今新規紹介キャンペーンがやっててなぁ」
「いやぁ、俺は恋人がいるからそう言うのは……え、このチラシに書いてある地図の場所にあるの……修道院じゃなかったか?」
「店名だよ、『戒律の厳しい北の修道院2号店』って国営の娼館だ」
「何でまたそんな名前を……修道院って毎週安息日にクッキーなんかのお菓子や手芸の品を売るマーケットをやってたり、平日は近所の子供を集めて勉強を教えたり……薬草の研究したりする場所じゃないか。俺シラフカ修道院の作るチーズやワインは大ファンなんだぞ」
「それは『ちゃんとした本物の修道院』の話だろ」
「ちゃんとした……?」
「ここは普通の教育で更生が望めないワケアリ女がまとめられてるんだよ。問題児を受け入れて再教育してる修道院だってあるが、それもここらとは別のまともな修道院達だな」
「えぇ……?」
「当然、貴族令嬢が行儀見習いに期間を定めて修道院に見習いとして入る事があるけど、それに使われるのもまともな修道院だけだぞ」
「まともとか、まともじゃないとか……何でそんな、娼館に修道院なんて名前を使うんだ。迷惑だろう、修道院に」
「むかーし昔は罪を犯した貴族令嬢や夫人を押し込む先がマジで修道院しか無かったらしくてな。犯罪者とはいえ刑務所なんかに入れたら残った家の名誉に関わるし……でも犯罪者の面倒見ろ、なんて言われても修道院側だって勘弁してくれってなるだろ?」
「それはまぁ分かるが」
「表向きを取り繕ってる訳よ。お貴族様は評判とメンツが何より大事だからな。あと『修道院』の文字が微妙に違うから実は知ってれば見分けがつくんだ」
「ほんとだ……一文字つづりが違うな」
俺は同僚に渡されたチラシを思わずしげしげと眺めてしまった。愉快な話ではないが、労役の一種と言うことらしい。
嫁いびりするような厄介な婆さんが代替わりした息子に押し込まれる、本当にただ戒律が厳しいってだけの修道院もあるぞと同僚が教えてくれる。話の娼館の方は年齢制限もあるが、まともなところは普通寄付金を積まないと入れてもらえないのだと。
家族に見捨てられた、寄付金の無い貴族女性は自活するスキルが無ければ後味の悪い事になるのも初めて知った。
雲の上の人たちは着飾ってパーティーに出るくらいしか何をしてるかを想像できなかったが、そんな厳しい話もあったのか。ただの兵士でしかなく気にしたこともなかった俺は初めて貴族のリアルな話をまともに聞いた。
「普通の貴族令嬢ならその行儀見習いや、貴族家の義務としての支援なんかでまともな修道院を知ってる訳だよ。それで『罪を犯してもこんな所に入る程度で済む』と思ってか、ブレーキが効かなくなるんだってよ。うまく猫かぶって陰で問題起こされるより早いうちに炙り出そうって事なんだろうな。まぁ俺は……本物のお嬢様って奴が抱けるからありがたいんだがね」
「そうかい」
「で、どうだ? 次の安息日にでも」
「だから俺は恋人がいるから。ここじゃなくても当然行かないぞ」
「お堅いことで」
チラシを突き返された同僚は「他に行ったことなさそうなのいたっけか……」ともう意識は他の奴に向いているようだった。やれやれ。
当店「戒律の厳しい北の修道院」は本物の元貴族令嬢が主に在籍する元令嬢専門娼館です。たまに元聖女候補など、より特別な経歴を持ったキャストもいます。
風俗店にありがちな経歴・年齢詐称や、過度な写真の修正等は一切行っておりませんので、画像を見てお客様が抱いた事前のイメージを壊すことなく、サービスをお楽しみいただけます。
同じ元貴族令嬢でも、悪役令嬢、玉の輿狙って失敗した自称ヒロイン、姉のものを奪ってきた妹、正妻の毒殺を企んだ元下級貴族の愛人、綺麗系や可愛い系など様々なタイプの女性が在籍しており、巨乳・スレンダー・高飛車・愚か者等であっても全員ルックスにおいては高レベルな女性を採用しております。
またこれらの経歴から扱ってる従業員全員の性格には何らかの難があることをご承知ください。
貴族令嬢を手籠にするなどの日常で味わえないシチュエーション、聖女陵辱プレイ・女騎士屈服プレイ・高貴で生意気な悪女の調教などの背徳感溢れる疑似体験で非日常を味わってみませんか?
「素人が好み」という方もご満足いただけるよう、当店では常に新鮮な反応を返せる新入りの補充に余念がありません。
写真パネルの下のネームプレートで、未経験表記になっている女性は、追放されてきて当店での勤務が初めての女性です。
完全未経験の表記の女性は、未婚で婚約者や恋人がおらず、または居ても経験がない完全な初物で罪を犯し追放された女性です。新鮮さを提供するため、「戒律の厳しい北の修道院」の本来の業務内容も伝えておりません。当店はお手頃な価格帯で手軽に遊べる娼館としてもとても有名なお店です。
また、当店での勤務は労役を兼ねているため、通常の娼館では禁止行為にあたるキャストへの傷害もある程度許可されています(※殺害は禁止)(※傷の程度によって別料金がかかります)
さらに就業終了を控えたキャストは、通常当店でも制限されているプレイも……?!
当店の在籍一覧をご覧いただき、好みのキャストをお探しください。
【チラシの右下には王都の歓楽街にある、高い塀に囲まれた、娼館にしては異様な外観の建物を指し示した地図が記載されている】
姉妹店で『戦闘の多い辺境砦』もあってそっちは一方的に国の決めた婚約を破棄した良いとこの坊ちゃんとか婿入り予定なのに浮気した次男とか騎士を名乗ってるくせに無実の女性の腕を捻り上げた元王子の護衛がいるらしい。
利益は国の公共事業のために使われています。
よく見る結末ですが修道院側はたまったもんじゃないだろうなと思って……
他にも色々短いの中心に書いてます。評価の⭐︎もぽちってくれると嬉しい