第7話 俺と彼女の気まずい空気
気まずくてしょうがない。
第7話
「………………………………………」
「………………………………………」
き、気まずい!
あんな強引な事をして、無理やり選択肢を潰した俺が言うのも何だけど、本当に気まずい…
アイツやあの馬鹿とか居れば楽…いや、よそう。これ以上考えたら、本当に泣いてしまいそうだ…
ん?はぁ、右と上からか…
「一旦止まってくれ、お嬢ちゃん。」
「えっ、なん『『『『ヒャッハー!獲物発見だグベェッ!』』』』きゃっ!」
異界の天井や壁から現れる悪霊達を薙ぎ払う。はぁ、弱い癖に数が多いから面倒だ。
「…攻略するまでこんな事が続くと思うが我慢してくれよ。」
「……………………………はい。」
…マジでどうしよう?
…この空気を紛らす為に、勝手に話でも続けるか?
何か変な人扱いされそうだか、もう不審者みたいな物だから関係ないか…
「どうやら、この異界は悪霊系の巣窟らしい。」
「…………………………………………」
彼女から返事はない。大丈夫かな、これ…
しかも、それと同時に空気を読まない悪霊達も襲い来る。
「はぁ、また来たな。『『『『いただきまプギャア!』』』』全く、強さの違いすらも読めないのかコイツ等は…」
お前らが出る度に彼女が『ビクッ!』ってなってるんだぞ。はぁ、本当に面倒な上に悪質な奴等だ。
「ふぅ、大丈夫か?コイツ等は徒党を組んで襲ってくる奴等でな?さっきみたいに生きてる人間を獲物としてるだ。」
「…………………………………」
「……そうやって仲間を増やすんだ。しかも、色んな派生が居てな。君を最初に襲ってた奴は化け人形と呼ばれてるんだ。」
「…………………………………………」
言葉のキャッチボールが無いのはこんなにも悲しい事なのか…
まぁ、友達は鏡花しか過去現在を通して居ないから、こんな事でめげはしないが。
ん?今度は左からか…。しかも、普通の悪霊でもなさそうだな…
『『『『…溺れ苦しめ!私達と同じよ「煩い!」グブッ!ゴボゴボゴボッ…』』』』
「まさか水亡霊まで居るとはな…。元になる家に水場が有るからか?」
まぁ、どうでも良いか。雑魚だし…
「アイツ等は水亡霊と言ってな。基本的に溺死した奴等がああなるんだ。稀に水を飲めなくて死んだ奴もなるらしい。」
本当に稀だけどな、砂漠や火山地帯の様な所は兎も角として。
「雑魚の癖に厄介な奴等でな。アイツ等に触れられるとな、溺れる感覚に襲われるんだよ。そうやって苦しめて仲間に引き込むんだと。悪趣味だよなぁ…」
「…………………………………」
あっ、ヤベ!少し震えてるし、怖がらせちゃったか?
「まぁ、大丈夫だ。俺が居る限り、そんな事は絶対にさせないから。」
「…………………………ありがとうございます。」
やった!反応が帰って来た!
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そんな調子で先を進んでいく俺達。何が良かったかは解らないが、少しは反応も帰って来るようにもなった。
そして…
「ん?喜べ、お嬢ちゃん。此処をクリアすれば最後だ。」
「きゃっ!いつの間に扉が……」
いきなり、目の前に大きな扉が現れる。いつ見ても大きい扉だなぁ…
この扉の先に異界を制御する中心がある。それさえ壊せれば、異界は崩壊する。
だが、その前に…
『ようこそ、愚かな生者達よ…』
扉を開ける。その先には、巨体な化け物が俺達を待ち伏せるかの様に立っていた。
まぁ、予想はしていた。此方側で異界が誕生した以上、奴等も産まれてくるだろうと。
奴等は…
『私は異界の主。解りやすく言い換えるとすれば…』
勿体ぶる様に、俺達を嘲る様にこう告げる。
『ラスボスです!』
異世界メモ
水亡霊 (アクア・ゴースト)
主に溺死、稀に水を飲めなくて死亡した存在から産まれる悪霊。
普通の悪霊や化け人形やよりは強いのだが、やはり雑魚の域は出ない。が、触れると溺死を疑似体験する事ができる。そうやって精神を追い詰めて仲間にするのだ。
水属性の低級魔法を使えるが威力は無いに等しく、主に溺死させる為に使用してくる。
断末魔は溺れている人間と同じ様な声を出す為、不快感が凄い。だが、無駄にイケボなので、好きな人は好きらしい。