第5話 悪霊はスライム枠
雑魚はやっぱりかませ犬
第5話
「って、不審者!?えっ、ちょっ、待って、誰か助けて!」
…泣きそう。
まぁ、当然の反応ではある。目の前に現れた人物は変な仮面(本人は割と気に入ってる)を着けた不審者だ。
『…大丈夫?』
「黙れ、悪霊!何でお前に同情されなきゃならんいけんのんじゃ!」
おっと、危ない。一旦落ち着け、俺。目から汗が溢れてるけど、落ち着け俺!
「それにしても、悪霊どもが人形の中に入って暴れてるとはな…」
『あれ、解るの?凄いね、不審者くん♪』
…刃物を持った喋る人形。おそらくは『ひとりかくれんぼ』から生まれた存在。まるで、化け人形だ…
全く、悪霊といい目の前のコイツといい…俺への嫌がらせか?
「当たり前だ。お前みたいな奴を嫌になる程に見てきたからな。」
『ふーん、まぁ別にいいや。邪魔だし、死んじゃえ♪』
「はぁ、それは此方でも一緒なのか…」
全く、本当に元は人間だった存在なのか?これじゃあ、まるで…
…唯の雑魚な能無しだ。
『なっ!?は、離せ…』
「動きが単調すぎる。一直線に斬りかかるとか、小鬼の奴ですらしてこなかったぞ。」
奴の身体を片手で掴み、拘束する。小さな人形の身体だから楽チンだな。
まぁ、コイツが馬鹿なお陰でもある。感謝感激雨霰って奴だ。
…少し古いか?
『くっ、ふざけるな!早く、離せ!』
「煩いなぁ…ほら、離してやるよ。」
『ふっ、馬鹿だね!僕を舐めると痛い目に合「いちいち煩い、燃えてろ…」なっ、ぎゃあああ…』
あっ、つい俺のスキルで燃やしちゃた…
…うーん、化け人形がいちいち煩いので燃やしてやった件。
動画サイトにアップしたら、高い再生数とか取れるかな…
無理?だよね…
「ふぅ…まぁ、これで一件落着か。おい、そこのお嬢ちゃん。終わったから、安心しな。」
「ひっ…」
完全に怯えられてるな、こりゃ…
まぁ、仕方がないか。化け物に襲われ、目の前に不審者が現れりゃあな…
でも、聞かなきゃいけない事がある。仕方がないし、心を吸血…………鬼にして…
「ああ…えっと…その…怯えてる所申し訳ないが、君に聞きたい事が…」
しかし、その会話は遮られる。
まるで、地震かの様な大きな揺れによって…
「きゃあ!じ、地震…」
「いや、違う!これは…」
マジか、何でこの現象が此方で起きるんだ!?
クソが…嫌がらせか!嫌がらせなのか!本当にふざけるなよ!
「お嬢ちゃん、すまんが緊急事態だ!後でセクハラとかで訴えないでくれよ!」
「えっ、ひゃっ!?ちょ、やめて!」
俺は声をあげて抵抗する彼女の意思を無視し、無理やりに抱えあげる。そして、窓を開けて外へと飛び出すが…
「ちくしょう、遅かったか…」
飛び出した途端、俺達は家の中へと戻される。しかも、それだけではなかった…
「何で家の中に…それに部屋や家具がひっちゃかめっちゃかになって…」
「異界…」
ああ、懐かしい。懐かしすぎて泣きそうだ…
「端的に言うぞ、お嬢ちゃん。俺達は閉じ込められた。」
「…………はい?」
血が滾る。興奮が冷め止まない。不謹慎だし、このお嬢ちゃんに申し訳ないが、どうしようもなく喜ぶ自分を止められない。
「異界化した、この家にな…」
ああ、本当に最高だぁ♪
異世界メモ
悪霊 (ゴースト)
現実世界でも割とそこら辺に居る雑魚な魔物。要するにスライムと同じ立場。
大抵は生者に恨みや妬みを持ち、普通の人間に害を成してくる。普通の人なら肉体的にも精神的にも害悪な存在だが、戦える人達からは唯のサンドバッグ扱いされている可哀想な子。
でも、慈悲はない。雑魚の癖に、良い素材取れるし。殺したかったけど、死んで欲しくはなかったよ…
化け人形 (パペットゴースト)
複数のゴーストが人形にとり憑いた魔物。多少は強いし、武器は扱えるが雑魚は雑魚。
厄介な事にピンチになると仲間のゴーストを呼び、新たな化け人形を作ろうとする性質を持つ。
まぁ、大概は瞬殺される為、成功率はたったの10%。
しかも、素材はとり憑いた中身しか落とさないので普通に嫌われている可哀想な子…でもないね。