第3話 現実世界での家族②
もう二度と味わう事のなかった筈の幸せ
第3話
「ただいま~って何をしてるの、剣君?沙織ちゃん?」
そんな俺の後悔や懺悔を遮る様に、この家にもう一人の家族が帰ってくる。
「いつも通りだよ、香織姉ちゃん。」
「ええ、剣兄さんの言う通りですよ香織姉さん。」
「成る程、ちゃんと反省するのよ剣君。」
「…解ってるよ。」
メッと俺を叱る彼女の名は高橋家の長女であり、俺の義姉である高橋香織。
俺と同じ高校に通う二年生であり、生徒会に入ってるとか。何の役所かは知らないが…
「何よ、その一瞬の間…。まぁ、いいわ!」
「うっ、ですよね…」
「えへへ、剣君成分の充電だぁ~」
キャラ(出てきたばかり)を崩壊させながら、我が義姉は俺に抱きつく。沙織ちゃんや詩織ちゃんとは違い、とある豊かな部分で窒息させてくるので実に危険な行為だ。
まぁ、止める気は全く無いのだが…
「チッ、まだ足りないのですか、剣兄さん。」
怖い、怖いよ沙織ちゃん!異世界に居たそこらの魔族や魔物より怖いよ沙織ちゃん!
何か『堕肉は消えされ…』って呪詛呟いてるし…
「いえ、満杯です。ほら、そろそろ沙織ちゃんが限界だから、離れて…」
「むぅ、まだ30%…」
あれ、ちゃんと数値化してたんだ…意外。
「はぁ、解りました。私が折れてあげます。晩ごはんを食べた後に、じっくり充電して下さい。」
「ありがとう、沙織ちゃん!」
「ですが、終わったら私の番ですからね!」
「解ってるよ、沙織ちゃん!」
本人を置いてけぼりにして、取引を進める姉妹。
まぁ、そんな光景すら今の俺にとっては…微笑ましく、素晴らしい景色なのだろう。
俺はこんなにも大切な景色を…
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その後、沙織ちゃんが作ってくれた晩ごはんを皆で仲良く食べ、香織姉ちゃんの充電に付き合う。
そして…
「やっと二人きりになれましたね、剣兄さん♪」
「それは良いんだけどさ、沙織ちゃん…」
俺は彼女のベッドに寝転がりながら、冷や汗を書いている。
「毎回毎回、俺を縛る必要ある?」
「縛らないと剣兄さんが逃げてしまうもの。これは仕方のない事なのです。」
「そうか。確かにそれは仕方がないな。」
しかし、何で俺は彼方でも此方でも縛られるんだろうなぁ?
まぁ、その中でも沙織ちゃんは可愛い方だ。あの粘着ストーカー焼き鳥女に比べれば…
「はぁ、幸せ…」
「せめて立たせてくれ。流石に重「剣兄さん?」くはないですね。軽すぎて天使の羽かと思う位には。」
俺を脅しながらも、全力で乗っかりながら抱きつく沙織ちゃん。
全く…何で甘え方とかも似かよるんだよ、この3姉妹達は…
ん?そう言えば、アレの事を忘れてたな…
「なぁ、沙織ちゃん。お前の中学で『ひとりかくれんぼ』って流行ってるのか?」
「『ひとりかくれんぼ』?そう言えば、友達がそんな話をしてましたね。」
どうやら、本当に流行ってるらしい。
…嫌な予感がするな。本当なら杞憂であって欲しいのだが…
「それがどうかしたのですか、剣兄さん?」
「俺が所属してる部活で色々とな。今、少し調べてるんだ。」
「部活…そうですか…。最近、別の女の匂いがするのはそのせいですか(ボソッ)…」
何か怖いし、寒気がする。女の子って皆が氷属性の魔法でも使えるのかな?
「まぁ、良いでしょう。後でどうにかしてやれば良いだけの話です。それで、剣兄さん…」
「ん?どうした、沙織ちゃん?」
うわぁ、何か悪そうな顔してる。アレは彼女が俺に何かを頼もうとしてる時だ。
俺の事を読みやすいとか言ってるけど、あの力すら必要ないレベルで解りやすいぞお前さんも。
まぁ、身内には元々効かないけど…
「私の知る限りの情報を渡しましょう!その代わり、交換条件として日曜日に私と…その…で、で、デートしてくだひゃい!」
最後、噛むなよ…。色々と台無しだな、おい。
まぁ…可愛いからいっか!
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周りが寝静まった夜。丑三つ時すらも越え、静寂の闇だけが世界を支配する時間。そんな世界にただ一人…
「さぁ、始めよう。最高の虐殺ショーを!」
平和に溺れ、当たり前に享受する者達を嘲笑う存在が立っていた。
異世界メモ
ヒロイン候補? 高橋沙織
性別 女
家族構成 高橋詩織と一緒(詳しくは第2話)
自他共々認めるブラコン。但し、他の姉妹の前や外(比較的)では控えめ。
最近、剣が自分達の前から逃げない様にする為に偏った努力をするヤンデレっぷりを発揮している。だが、剣からしてみれば可愛い方らしい。
3姉妹の中で胸が一番無いのがコンプレックス。姉に負けるのは悔しいけど、悔しいけど、悔しいけど納得はできる。でも、何で詩織ちゃんにまで負けるの!?