第10話 創造された炎
ゴーストは血を流さない。故に、割と躊躇なく殺せる相手。
第10話
『俺の独壇場だと!?戯れ言を垂れ流すのもいい加減にしなさい、人間がぁ!』
「直ぐに実感できるさ、木偶人形!」
馬鹿の一つ覚えで、一直線に向かってくる奴を前に床に手を着ける。
その瞬間、俺の身体から炎が吹き上がる。そのまま手に力を込め、俺はイメージする。
心を燃やせ。その炎で、在るべき形を創造し、支配しろ!
『なっ、炎!?しかも、魔力を感じないだと!?まさか、スキルの類いなのか!?』
「正解、『フレア・フィールド』!」
その言葉と共に、炎が津波の様に周囲へと押し寄せる。
周りにある全ての物を巻き込む様に…
『ぎゃああああああああああああ!?熱い!熱い熱い熱いぃぃぃ!』
「きゃあ!………………………………あれ?ぜ、全然熱くない。それ…所か……全く燃えてない…………」
と、両者共に全く違う反応を示す。
木偶人形の方は移った炎の熱さに悶え苦しみ、お嬢ちゃんの方は何も起きていないからだ。
まぁ、当然の結果だ。
「度々驚かしてごめんな、お嬢ちゃん。」
「………は、はい。で、でも、何で……………」
「ああ、この炎の事?大丈夫、ちゃんと燃やし分けをしてるから。君が燃える事も、熱さに苦しむ事もないさ。」
昔は燃やし分けに苦労したなぁ…
『ぐっ、人間…ごときが……この様な炎を………』
「おっと、お前の事を忘れる所だった。『クリエイト・フレア』…」
俺がこの言葉を紡いだ瞬間、周囲の炎が呼応して形を変化させていく。
その光景に、何もせず動かない木偶人形ではない。
『はぁはぁ、させるかぁっ!』
「無駄だ、木偶人形。『フレイム・エッジ』!」
炎は刃の形へと置き換えられ、奴の身体を切り裂く為に襲い掛かる。
『がぁ!?う、腕が………』
奴の右腕が切り落とされる。
よし、これなら後は楽だろう。
そして、ドミノ倒しの様に奴の残った四肢を切り裂いていった。
『あ、ああ…ぢ、ちくしょう………』
全ての四肢を切り落とされた奴は、モガく事も出来ずに倒れ伏す。
ふぅ、これでお膳立ては終了かな?
「さて、お嬢ちゃん。」
「…………は、はい。」
「一緒にコイツ、倒そうか♪」
「………………………へ?」
彼女は訳の解らなそうな顔をする。
仕方がない、教えるか…
「一緒にコイツを倒して、終わらせるんだよ。」
「な、何を………」
「君が始めた『ひとりかくれんぼ』さ。」
そう、まだ『ひとりかくれんぼ』は継続している。そして、おそらくだがそれこそが奴の不死性の正体なのだろう。
『ひとりかくれんぼ』を終わらせる方法は一つ…
『なっ、まさか!?』
「どうやら木偶人形も察したみたいだな。お嬢ちゃん、今から君は俺と一緒に奴へトドメを刺す。」
少々心は痛むが、有無を言わせない様に語気を強めて彼女へこう告げる。
「そして、堂々と奴にこう宣言するんだ!『私の勝ち』ってね!」
この下らない遊びを早く終わらせよう。
そして………
そして、裏で何かコソコソと暗躍してる奴を引きずり出すとしますかね。
異世界メモ
スキル
異世界で誰しもが持つ物で、様々な能力を持てる事が出来る。
複数を持つ人も割と居るが、全てを極めるには時間がかかるので持て余す人も多い。
しかし、結果的にそうなる物は兎も角として、攻撃的なスキルは存在せず、戦いや生活を補助する物でしかない。
が、ごく稀に攻撃的なスキルが存在するが、そういったスキルを持つ存在が良い末路を辿る事は決してない。
何故なら、そのスキルは何者かからの愛であり、祈りであり、呪いなのだから。