第9話 此処から先は
遊びの邪魔をする奴は死んだ方が良い
第9話
「ふぅ、これで終わりっと。」
すっと、腕を奴の身体から引き抜く。
奴は殺したし、後は中心を壊すだけ…
……………………………はぁ、そう上手くはいかないか。
「立てよ、木偶人形。まだ、生きてるんだろ?」
『ふふっ、気が付いていたんですね。」
身体を貫いて殺した筈の奴が、気持ちの悪い笑顔と共に立ち上がる。
『どうです?驚きましたか?どうやら貴方は強い様ですが、この遊戯からは逃れられない運命にあるのです。さぁ、死の運命を受け入れナブッ!』
「煩い、さっさと死ね。」
何か煩かったので、硬質化を纏った拳で頭をぶっ飛ばす。
これで死ねば良いんだが……
『ははっ、良い一撃ですね。しかし、私は死なないのでビュ!』
「ウザい。」
今度はアッパーでぶっ飛ばす。
しかし…
『はぁ、問答無用という訳でグブッ!』
もう一回殺す。
『何度やっても無意ビィ!』
無視して殺す。
『だから、無駄だと言ってブハッ!いい加減にしなさブグッ!この…調子にのグゥ!』
何度も何度も殺してみるが、奴は死なない。
覚醒種は覚醒前の種が持つ能力の発展系を得る事が出来る。つまり、化け人形にである奴が不死性を持つ事はあり得ない。
…………何か別の力が働いている?
『はぁはぁ、いい加減にしなさい!』
立ち上がった奴が攻撃を仕掛けてくる。ん?一直線なのは変わりないが、さっきよりも早い!
「………急に強くなったな。」
『ふぅ、気が付きましたか?遊びの邪魔をされれば誰でも怨み辛みは溜まる物。当然の結果ですよ。』
成る程、殺せば殺す程に強くなるという事か。
生き返る上に、強くなるとかクソゲーにも程があるぞ、その遊び……
ん?遊び…今は奴は遊びと言ったのか?
「お前…殺し合いを遊びというタイプか?」
『はい?何を言っているのですか?今、現在進行形で呼び出した人や周囲の人間を虐殺する「ひとりかくれんぼ」の真っ最中じゃないですか!』
成る程、まだ『ひとりかくれんぼ』は継続中という事か。
お嬢ちゃんを襲っていた化け人形を殺したから、既に終わっている物だと思っていた。
…待てよ?つまり、奴に働いてる力の正体は……
仕方がない。使うか……
「起きろ、ルティ!」
『はい!呼ばれて飛び出てジャジャジャン♪』
「きゃっ、剣が…」
『喋っただと!?』
いや、お前も喋る熊で人形じゃん。
しかし、お嬢ちゃんを驚かしちまったな。まぁ、もっと驚く様な事を今からするつもりだし、後でちゃんと謝ろう。
『………その剣、まさか!?』
「ご想像にお任せするさ。それよりも覚悟した方が良いぞ、木偶人形。」
『何!?』
「此処から先は……………」
これから先の奴の末路を想像し、嘲る様な笑みで言葉を紡ぐ。
ああ、駄目だ。高揚が止まらない。懐かしさと嬉しさが溢れだす。
あの化け人形を殺す時に一瞬だけ使ってしまったけど、その時以上の物を見せてあげよう。
それこそが、奴が地獄へ落ちる前に俺からの送り火となるだろう。
「……………………此処から先は俺の独壇場だ。」
文字通り、そのままに……
異世界メモ
フェニックス・スピア
唯のパンチ。
剣が最初に考えついた技で、色々と思い入れの有る技。
雑魚より少し強い雑魚を殺す時によく使うが、別に強い奴に効かない訳ではない。
その時のノリによって、様々な無属性魔術によるバフをかけて使う事もあるので注意。
フェニックス・スピアという名前は、異世界での悪質な彼のストーカーが名付けた物である。