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再鎖国した日本と征夷大将軍  作者: 門外不出
18/21

ウイルス

 大将軍府将軍執務室


「着弾しました、予定通りの地点です。人的損害は不明です」

 モニターから末永の説明が流れている。

「警戒態勢はそのまま、自暴自棄でさらに何かするかもしれない」

「了解しました、警戒体制は継続」


 用心して警戒態勢は持続させたが、更なる軍事的攻撃の危険性は少ない。全世界に向けて警報通知をし、それが外れて自国へ落下した。これほど注目を浴びている時に表立って動くほど愚かではない。ただ、粛清が行われるのだろう。その間にこちらは確かめなければならないことがある。


「大地君、今回のウイルス解析の状況は?」

「サブモニターに表示しますので、ご覧ください」


 そこにはウイルスが4種類映し出されていた。

 先を促すよう大地君に頷いた。


「これらはすべてH5N1ウイルスです。一番上が現在我が国で対応しているものでこれをA株とします、中華連邦から情報提供があったものが2番目でB株とします」


 私がサブモニターに表示されている説明を読むのを待って、大地君が続けた。


「この2つは一部変異がありますが、基本的に同一のものです。3番目のものは中華連邦が成立する前に、四川省と呼ばれた地域で局所流行した株です。これをC株とします。C株はA株、B株の起源かもしれませんが、異なるRNA領域が多数あり断定できません」


「で、怪しそうな4番目は何だい?」

「ドイツで研究されていたという株です。もちろん公開情報ではありません。政府系研究機関から一旦論文が出て、すぐにデータに疑義があるとして撤回されたものです」


「撤回されたのは、データのせいじゃなかったってことか」

「そのようです、4番目のものをD株とします。最終的な解析結果としては、C株を元にD株が生まれ、それを改良したB株を作ったようです」


 すこし間をおいて大地君は続けた。


「ただ、B株は更に自然変異して先祖返りし、よりD株に近いA株となったようです」

「……つまり、CDBAの順でウイルスは人為と自然で変異し、我が国はB株の対処を試される予定が、未知のA株と戦ってきたってことか」


 すこし考えて、確認することにした。


「C株の研究は、我が国もしたのか?」

「はい、C株のRNAデータは防疫のため全世界に提供されました。我が国もワクチンと治療薬の開発のため研究を行っています」

「では、C株の研究自体は無視しよう。問題はD株からの発展だ」


「解析結果によると、D株のHAに改変を加え強毒性を弱めたものがB株のようです。B株は弱毒性までには落ちないものの、ウイルスの増殖場所が全身から局所的なものになるため制御可能な感染になるとのことです。情報提供のあった薬剤の有効性も確認できています」


 大地君は私の次の質問がわかっているのだろう、資料を切り替えている。


「ではA株は?」

「B株からの自然変異ですが、そもそもB株に無理があったというのが我が国の研究機関の見解です。人為的に変えた部分が脆いので変異しやすいと」

「それで強毒性を取り戻したA株になったということか」

「そのように推測されるということでした。今回ウイルスの侵入に使われた鳥及びそれによって感染した鳥類から検出されたものはB株のままです。人間に感染した段階以降でA株に変異したと推定されるとのことでした」


 ありうる話だ。人体実験できないのだから、実際に人間に感染して以降どうなるのかは難しい。まぁそれより、責任を問おう。


「で、我が国にB株が使用されたことに対する、想定される理由は?」


 大地君は少し言い淀んだ。


「先日の若年寄会議で指摘のありました、威力偵察です。我が国の対応を見極め実使用を行うための」

「腹立たしいな、我が国が実験台とは」

「今回の顛末については、アメリカを始めファイブアイズのみに共有されています。彼らの防疫体制には問題無いでしょう」

「問題はどこに使うかだが、それはわからないということか」

「そうです。中華連邦とドイツが怪しいですが、明確な証拠はありません」

「だが、ウイルスをばらまいた不審船の母艦はドイツ製だった可能性が高かったな、所属は統一朝鮮だったが」

「ええ、そうです。」


「我が国は法治国家で、疑わしきは罰せずだ。両国の様子を今後注視しよう。」

「了解しました。」


 大地君はすぐさまあちこちに連絡している。

 しっぽを出すのはどちらだろう、それとも両方だろうか。


 いずれにせよ我が国からの鉄槌は下される、私の命令で。



 中華連邦軍務局第14課


「今回投入したウイルスは想定以上の効力を発揮した。想定以上となったのは、情報提供したにも関わらず小日本が間抜けで初動に遅れたからだろう。現在沈静化しつつあるのは、合わせて提供した治療薬の効果が出たのだろう」


 課長は口の端をわずかに視認できるだけ上げて、笑顔を作った。


「残念ながら、小日本は鎖国しているため情報確認はできていない。あくまで当初のシナリオと実際の差異の理由について、協力国が検討した結果だ」


 一回り課員を見渡して続けた。


「では予定通り、反乱分子が策動中の地域にウイルスの散布を行う。ワクチン接種は事前の選別が必要で情報漏洩の危険性が高いため採用しない。今回は対象者によって治療薬を変えることで、反乱分子の殲滅を行う。質問は?」


 質問などあるはずも無い。上意下達を打ち壊すことは反逆罪に該当する。


「では、始めてくれ」


 反乱分子の鎮圧という名目の、民族虐殺作戦が始まった。

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