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再鎖国した日本と征夷大将軍  作者: 門外不出
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帰還

お久しぶりになります、すみません。 


 島根大学出雲キャンパス みらい棟


 ここは、どこだ?

 いつもの部屋ではなかった。出張だったっけ?

 松岡は起き上がろうとして、力の入らない身体と病院のベッドにいる自分に気が付いた。

「そうだ、助けが来たんだった。」

 ベッドの傍らには点滴の袋がぶら下がっていた。

「助かったんだ。」


「松岡さん、入りますね。」

 返事を待たずにカーテンを開ける音がして、看護師さんが入って来た。

 目覚めている松岡と目が合い、少しだけ驚いた顔をしたがすぐに落ち着いて言った。


「おかえりなさい、松岡さん。」

 岡本はバイタルを素早くチェックし、中林を呼びに行った。



扶桑型イージス艦山城 士官用食堂


「市原さん、この先どうなるんでしょうか。」

「さっきの館内放送通り、ミサイルを発射した国に弾頭が戻るんだろうな。違いますか、磯島さん?」

 失われた『ウッディー』クルーは、非番時は階級無しの年齢順だけで話をする。最年長の磯島がご意見番だった。

「弾頭の種類次第だろうな。あいつらなら核弾頭の可能性だってある。それなら自爆して核物質を飛散させるわけにもいかないし、もちろん起爆させるわけにもいかないからそのまま落とすんだろう。」

 長田と市原の顔を見渡して磯島が続けた。

「自爆させて欲しいね。」

 少し間を置いて続けた。

「それなら少なくとも、俺たちに核を撃った訳じゃない。」


 青ざめた長田と市原を見て、磯島は大きな声で笑った。

「俺たちは今、山城乗艦中だ。少なくともミサイル攻撃には対応してくれる。どうせ員数外で機体も無いしやることも無い。…前回の続きをしようじゃないか、今回は勝つ!」

 磯島はポケットからトランプを出した。

 長田と市原は血色を取り戻し、提案に頷いた。


 士官食堂で真剣にインディアンポーカーをしている市原機クルーを見て、山城乗員は尊敬の念を新たにするのだった。



 ホワイトハウス 大統領執務室


「大将軍府からの連絡通りのコースで落下中です。自爆しない場合の着弾まで2分。」

 首席補佐官からの報告に頷きながら、ベーカーは独りごちた。


「前回は勝てたが、次は無理かもしれんな。…味方で良かった。」


 集まった視線に気が付いたが、悠然と続けた。


「日本を敵国とした武力使用シミュレーションの改定を早急に実施。今回の宇宙空間で行われた事象の解析と影響を早急に調べて欲しい。」


 我が国は全ての国を敵国としてシミュレーションしていて結果が不利となる対象はほぼ無いが、日本は例外だ。だが、何もしなければ日本から仕掛けてくる事は無い。彼の国が理性的で野心を持たないことは大変喜ばしいことだ。



 統一朝鮮大統領府 青瓦台執務室


「最終落下コースの算定終了しました。最も確率が高いのは、金日成広場付近です。」

 渡された紙片をそのまま読み上げた側近は、言い終えると内容を確認しなかったことに対する後悔とこの後に起きる不幸に沈黙した。


「君は自分が言ったことの意味がわかっているのか。」


 金大統領が静かに話し始めたので、自分への死刑宣告が始まったのだと悟った。逆らっても親族に不幸をもたらすだけだ、おとなしく受け入れるしかない。


「もちろんですとも、同志大統領。」

 このメモを渡した奴も含めて道連れにしてやる。


「我々執務室要員の無能と不見識によって、我が国に重大な損害を与え、同志大統領にいらぬご心配をおかけしたこと、万死に値します。」


 金大統領は満足そうにうなずいた。

「君はなかなか見識が高いな。名前は何だったかな?」

「趙 容国です。」

「今回の不手際は、君以外の責任ではないのかね。」


 これが罠であることは、旧共和国人民なら誰でも知っている。

「同志大統領以外に、見識が高い者などはおりません。愚かな私どもにはふさわしい処罰のみが値します。」

 最善の回答はした。…結果はわからん。


「ふむ、君の忠言は考慮に値するな。」

 金大統領のその言葉で安心したものは誰もいなかった。この失態の生贄は誰になる?


「今回の不手際は、祖国に対する反逆も同罪だ。関係者に対しては重い処罰を与えざるを得ない。」

 静まり返った現場を見渡し、金は満足して言った。

「先ほどの君に処罰の提言を命令する。今回の不手際を起こし偉大な祖国に重大な損害を与えた愚かな犯罪者に対して、君が適切な処分を下すのだ。…処分の内容は私にだけ知らせれば良い。」

 少し間を置いて続けた。

「君の処分内容が適切でなければ、まず先に君の処分を私が決めるからね。」

 それだけ言うとモニターの方に向き直り、衛兵を手で呼んだ。全ては終わったのだ。


 銃を構えながら近づいてくる衛兵をうつろな目で追いながら、趙は考えていた。


 道ずれになった奴らに恨まれるのは俺で、自分は安全なところに居続ける。どうせ俺が決めた決めた処分内容なんて全部変えてしまうんだろう。こいつは粛清の天才だ。いずれ誰もいなくなってしまうんじゃないか。


 衛兵達に両手を捕まれ連行されていく趙に、目を向ける者は誰もいなかった。



 統一朝鮮旧北朝鮮領 金日成広場


 当面式典の予定も無く、広場は閑散としていた。警備兵の他には散歩をしている老人くらいしかいなかった。

 静寂はいきなり破られ、周囲を圧する轟音と巨大な水柱が突如現れた。付近のものは吹き飛ばされ、落ちてきた水が容赦なく叩いた。

 晴れわたった空には虹が掛かり、生き残ったものを祝福しているかのようだった。もちろん誰も虹には気が付きもせず、負傷者の収容と事態の把握に追われていた。


 金日成広場東側の大同江には巨大なクレーターができ、両側から水が流れ込んで急速に湖となっていった。


 空襲警報がようやく鳴り響き始め、何かがあったことを知らせたが遅すぎた。


 全てを知っていた青瓦台からは、空襲警報以外には何の連絡も来なかった。

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