表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再鎖国した日本と征夷大将軍  作者: 門外不出
16/21

5分前

 統一朝鮮大統領府 青瓦台執務室


「大統領、ベーカー大統領から緊急連絡です。つなぎますか?」

 行方不明になったミサイル弾頭について続報は無く、独島からは通信が復旧して日本の占領行動は全く無かったと判明した。日本は救助を終えて撤退していったとも。


 空回りして核ミサイルまで発射してしまった高揚はすっかり消え、誰も発言せず沈んだ空気だった執務室に、再び動揺が走った。

 今まで沈黙していたアメリカが、一体何を。


「つないでくれ。音声はオープンで良い。」

 側近達はヘッドホンを付けた。


 一つ咳ばらいをして、受話器を取った。

「ベーカー大統領、お久しぶりです。緊急連絡との事ですが、何でしょうか。」

「久しぶりですな、金大統領。近況なども話したいところですが、何せ時間があまり無いの簡潔にしましょう。」

 時間が無いと言っておきながらゆっくり話すベーカー。


「貴国が発射したミサイル弾頭の追尾を行っていました。」

 金が息を飲む音が、側近達にも聞こえた。


「不可思議な軌道変更を繰り返し、現在インド上空を通過しているようです。」

 金は側近達に目で合図した。そこまでわかれば、こちらでも探知できるかもしれない。


 ベーカーは相変わらずゆっくりと話した。彼らは大慌てで対応し始めているのだろう。そろそろ鉄槌が見えてくる。


「計算ではあと10分以内に落下するようです。」

 ベーカーは相手がその先を聞くのをじりじりと待っている様子をしばし楽しんで、続けた。

「日本海。ああ、貴国では東海と読んでいる海域に落下するようです。ただ、通常の放物線軌道からは随分異なっているので、確度はあまり高くはありませんが。」


 金は側近から壁面のモニターを見るように促され、ベイカーの情報が間違いないことを確認した。

「ベーカー大統領、連絡ありがとうございます。こちらでも確認できました。」

「それは良かった。では、落下予想海域に貴国から警報を出してもらえませんか。我が国と友好国の航空機と船舶には既に警報を出したのですが、貴国のミサイルなので全世界向けには貴国から警報を出してもらわないといけませんのでね。では、よろしく。」

 そこまで言ってベーカーから回線を切った。



 ホワイトハウス 大統領執務室


「もうだめだ、こらえきれない。」

 受話器を置くと同時に笑い出したベーカーが、少し落ち着いたタイミングで主席補佐官が報告した。

「友好国にも朝鮮半島を含む黄海、日本海を警戒区域として通知済みです。」

「確率は?」

「朝鮮半島が90%、黄海が9%、日本海が1%です。日本から伝えられた条件で再計算しています。」

「すばらしい。では、リアルタイムで見学しよう。彼らが自分たちのものと認めた弾頭が、果たしてどこに落ちるのかを。」


 モニターが切り替わり、追跡中の衛生軌道や熱源探知衛星からの映像、その他陸海空の探知追跡システムからの映像が表示された。



 統一朝鮮大統領府 青瓦台執務室


「大統領、各国への警報通知は完了しました。」

 金は鷹揚に頷き続けた。

「よろしい。最終落下地点はどうなっている?」

「東海中央、ウラジオストックの南400km付近です。」

「ではそのまま落とそう。それならば弾頭の放射性物質も海底行きだ。」

 願望通りなので非常に満足そうな大統領を見て、側近達は目くばせを交わした。今回は粛清されるものが少なくて済む。


 モニターに表示されている予想軌道に、実際の弾頭軌道も寸分違わず乗っている。波乱の幕開けだったが、幕引きは静かに済みそうだった。



 大将軍府将軍執務室


「将軍、そろそろ時間です。」

 大地君が腕時計を見ながら、予備受話器で話している。統一朝鮮大統領への通信回路を開く指示だった。

「お願いします。」

 大地君から受話器を受け取った。大地君はそのまま予備受話器でモニターしている。


「金大統領、大至急お知らせしたいことがあります。」

「何ですかな? 貴国が知っていることは、我が国は貴国より先に大概知っていますが?」

 冗談で言っているなら面白いが、為政者としてこいつは馬鹿だ。本当にそうでも、手の内をばらす必要は無い。


 末永が最終軌道変更が終了したとのメモを表示した。鉄槌は下る。ブーメランは完璧には戻らず、もっとダメージが大きい場所に戻る。


「貴国が発射した何かは、軌道を変更して最終落下に入りました。」

「軌道変更?」

「ええ、我が国は常時追跡できていましたが、その間に何度も不可思議な軌道変更を行っていました。先ほどもその事象が観測され、今度こそ地球圏に戻ってきます。」



 統一朝鮮大統領府 青瓦台執務室


 金は側近達を見て真偽を確認しようとしたが、答えは返って来なかった。


「東海に落ちると聞いていますが?」

 正確な落下地点を日本に伝える必要は無い。弾頭は引き上げられずに、海底に留まる必要があるからだ。


「その情報は古いようですね。」

 将軍は続けて言った。

「先ほど何らかの事象があり、従来の軌道から変わりました。平壌に落ちる可能性が高いと我が国の技術者は警告しています。」

「平壌、そんな馬鹿な。」

 動揺を隠せず、金が答えた。側近からの答えは無い。


「あと5分程で最終落下軌道に入るようです。我が国も万が一に備えて迎撃体制を取っています。貴国のロケットですが、我が国の領土領海領空に入る可能性があれば撃墜しますので、これをもって通告とします。」


 将軍からの通話は切れた。金はしばらく受話器を持ったままだったが、残り時間に気が付き慌てて指示を出し始めた。

「弾頭の落下予測はどうなった。」

「日本の話の通り、軌道は変わっています。平壌中心部へ落下します。」

「撃墜できないのか?」

「我が国の迎撃兵器では対応不能です。」

「自爆した場合はどうなる?」

「弾頭の放射性物質が市内に拡散されます。」

「自爆しなければ?」

「弾頭は損傷しますが、放射性物質の拡散は最小限になります。」


 少しの沈黙の後で、金は決断した。


「自爆はしない、このまま着弾させる。平壌に空襲警報を出せ、大至急だ。」

 今の平壌は旧市街で住む人も少ない。それでも被害は少ない方が良い、例えそれが自分たちが空に放ったものだとしても。

 速やかに実行される様子を見ながら、金は責任を取らせるべき人間の名前を、手元のメモ用紙に次々に加えていった。これは大変な失態だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ