戦闘準備
統一朝鮮大統領府 青瓦台地下危機管理室
「独島東の我が国領海内で、我が国の漁船を不当に攻撃していた野蛮な日本の航空機を撃墜しました。」
室内に大きな歓声が上がる。
支給された巡航ミサイルは別として、潜水艦本体については全面的に費用負担したのだ。撃沈された恨みを晴らせたのだから皆が喜ぶのも当然だ。琉球王国の潜入工作員も捕まってしまったらしいが、それは我が国とは関係無い。奴らの不始末だ。
「巡航ミサイルは残念ながら全基撃墜されましたが、想定範囲内でした。本来の目的である新型インフルエンザウイルスの蔓延については上手くいったようですね。貴国の今回の計画に対する深謀遠慮には感服せざるを得ません。」
中華連邦からの派遣武官に、李大佐は謝意を示した。
馬大佐は鷹揚に答礼した。
「貴国の協力に感謝します。」
こいつらには最低限の応対で良い、つけあがらせるのが最悪だ。我が国は、長きにわたってこの国を属国としてきた。扱いには慣れている。
それよりも、琉球王国がこちらとの通信を遮断したとの連絡が気になる。早くもこちら側の戦線が崩壊しつつあるようだ。
日本はこちらがリークした情報を使えたはずなのに、上手く対応できていないようだ。想定よりも死者数が多く日本の危機対応力に疑念も出たので、精密な観測がなされている。だが、若干の想定外はあるものの、あちら側の戦線は持ちこたえているようだった。
私達は矛と盾を提供しているのだ。それぞれが適切に使用し、成果報告をしてもらわないと次の商談が進まない。
中華連邦軍務局第14課
「ええ、今のところ上手くいっています。貴国のご協力のおかげです。」
男は相手の返事を聞き、続けた。
「結果が出るまではもう少し掛かるでしょうが、このまま進める方向で首脳部も一致しています。ええ、よろしくお願いします。」
竹島沖に到着した護衛艦山城艦橋
「上級指揮所ならびに将軍府に連絡、ただいまより戦闘捜索救難活動を開始。無制限の武器使用の許可を請う。」
「こちら将軍府、将軍の磐田です。貴艦のリクエストを許可します。市原機関連の最新情報が統合作戦本部からリンクされているはずです。確認してください。」
将軍直々の対応か、話が速くて助かる。
大将軍府将軍執務室
スクリーンを見た伊丹は、少しだけ間をおいて答えた。
「海保の巡視船は現在位置をホールドしてもらってください。これ以上近づくと対艦ミサイル攻撃があった場合、そちらに向かう可能性がありますから。」
「伝えたよ。…末永君から話がある」
末永作戦本部長が画面に追加された。
「空自からの支援も準備できている。要請有り次第5分で実施可能。EMP弾搭載のF35が4機、ECMはEP1が実施。朝鮮本土からの応援機対応で空対空装備のF35が12機空中待機している。バブルとグリッドのリンクを受け、AWACSはパッシブモードで支援する。」
「米軍はどうなっていますか?」
伊丹の問いかけに遅滞なく末永が答えた。
「パトロール中の攻撃型原潜2隻が沈底していて、この無線も含めてモニターしている。彼女達の対地装備は通常弾頭のトマホークⅡだ。」
「アンノウンは?」
「最初から沈底していたもの以外はいない。疑似アクティブでの掃海で、領海内はクリアしている。公海は実施中だが貴艦の周囲5kmはクリア。近接防御で間に合うよ。」
「将軍の意向は?」
伊丹の突然の質問に、緊張感が高まった。
「意向はハンムラビ法典だ。やられたらやり返す。ただし、多すぎず、少なすぎない。市原機クルーへの損害に応じてくれ。」
少し間を取って私は続けた。
「いずれにせよ、最終的な責任は常に将軍たる私にある。貴君らは適切と判断した行動をとってくれれば良い。」
「では参謀部からの作戦案をご覧ください。」
末永が引き取って続けた。
「竹島の統一朝鮮軍基地にECM支援下でEMP弾攻撃を実施。反撃不能状態として市原機の救助を山城搭載機が、海難船舶の救助は海保が実施し完了後は速やかに後退。上空支援に2機2編隊。その他の機は空中待機を続けます。」
末永は私の方をちらりと確認し、うなずくとそのまま続けた。
「米軍には事前に作戦を通報します。支援は現況では求めません。」
「ただ、海の中で何が起きたのかは、誰もわからない。そういうことだな。」
「そうです、将軍。」
「作戦を了承した。適宜始めてくれ。ベーカー大統領にはこちらから伝えるよ。」
私は大地君に、すぐにホットラインの準備を指示した。
「ではこれからは君たちの時間だ。私はモニターだけしているよ。良い話は後回しでもいいが、悪い話はすぐに上げてくれ。」
「了解しました。」
末永は続けて言った。
「海保の救難ヘリが予定地域まで進出次第作戦を開始する。作戦参加部隊は戦闘配備、以後指示を待て。」
護衛艦山城艦橋
「と、いう訳だ。我々は市原機の救援に向かう。航空救難及び近接防御準備、急げ。沖田副長、CICは任せた。海保の巡視船も忘れずにな。」
「了解」
沖田はすぐにCICに向かっていった。




