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再鎖国した日本と征夷大将軍  作者: 門外不出
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はじまり

日本国 自衛隊統合作戦本部地下指揮所


「EEZ内の海上に複数の高熱源体探知。」

「目標は?」

「軌道の概略解析では、我が国を目標とするか上空を通過するものです。すでにセミオートモードで迎撃スタンバイ。」

「了解、現況を上級司令部へ伝達。セミオートモードのまま待機。ミサイル発射地点に艦船か航空機の探知は?」」

「海上、空にはありません。継続監視中の潜水艦から発射されたミサイルと推定されます。燃焼終了したミサイルの軌道検証終了。」

「推定落下地点は?」

「東京、大阪、名古屋、仙台、福岡その他です。同盟国、国連及び周辺諸国への自衛戦闘の通知終了。オートモード迎撃開始可能です。」


「上級司令部より迎撃命令を受領。ミサイルを発射した潜水艦への攻撃命令も発令。」

「そっちは早い者勝ちか。ABC弾頭対応でミサイル迎撃を開始。」

「了解、オートモードで防衛衛星から電磁誘導弾による迎撃中。地上及び海上からの迎撃ミサイルの発射準備完了。」


『飛翔弾頭16。電磁誘導弾で12基完全破壊、不完全破壊2基、迎撃失敗2基。』


『再迎撃実施、電磁誘導弾で4基破壊。迎撃完了。』


 戦術防衛システムの合成音声が静かに流れた。安堵のため息も混じっている。

 モニターに映し出されている画像とスピーカーから流れている音声にも、指揮所は静かなままだった。



日本海 EEZ境界付近 海中


「16基発射完了しました。」

「よろしい。最大深度まで急速潜行。最大深度まで達したらトリム合わせし、進路このままで最大戦速15秒。」

「了解。最大深度まで急速潜行。トリム合わせし、進路このままで最大戦速15秒。」


 最大俯角で深度を取っていった。ソナー探知は無く、変温層を2つ超えたので、まず探知はされないだろう。速度を出してから無音航行で進路を変え、潮の流れに乗ってここから逃げ出す算段だ。…完璧な作戦のはずが、ソナー室からの警報でそれが夢想だったことを思い知らされた。


「ソナー室。至近距離から高速スクリュー音複数探知。魚雷と思われます。」

「機関全速。デコイ発射準備、マスカー作動。」

「ソナー室。…雷速60ノット以上、2基探知。」

「機関停止、デコイ発射。無音航行。アップトリム最大。」

「デコイ発射。」

「機関停止、無音航行。アップトリム最大。」


「ソナー室。魚雷からのソナー音、急速接近中。」

「取り舵30度!」

「取り舵30度。」

「ソナー、魚雷進路に変更は?」

「ソナー室。…魚雷進路変更あり。こちらに向かってきます。」

「ブロー最大、最大戦速。海面へ急げ。」

「ブロー最大、最大戦速。」


 巨体を海上に向けたところで、先行魚雷が通知音を2度鳴らした。

「被害判定。機関室浸水。」

「機関室、急速閉鎖。」

 その時2発目が船体中央至近で通知音を2度鳴らした。

「被害判定。沈没。」

「…負けたか。演習終了。」

「各員、演習終了。繰り返す、演習終了。」



日本国 自衛隊統合作戦本部地下指揮所


 今度は音声だけだったが、十分緊迫感は伝わった。

「すばらしい。ロフテッド軌道の弾道弾攻撃を無力化し、発射した潜水艦まですぐに撃沈するとは。一体どうやって潜水艦の追尾を…、聞いても無駄ですね。」

 発言したのはロシアの観戦武官だった。

「ええ、防衛機密なのでお答えできません。」

「貴国が核兵器を持たず戦略攻撃兵器も持たずに、自立できている『力』を見せていただき光栄です。」


 共産党独裁だった中国分裂のドサクサに合わせて、北海道に工作員上陸を試みて撃退された過去のことを全く無かったかのように振舞っている。工作員を載せた潜水艦が全て撃沈された状況がこれでわかっただろうに。


「太平洋の反対側に貴国がいてくれて本当に助かるよ。」

 ハワイのアメリカ太平洋軍司令部からはいつものマクリーン少佐が来ていた。

「われわれも貴国との同盟こそが太平洋の安全を担保しているのを実感しますよ。」

「山口少佐、この防衛兵器を我が国に輸出してはくれないのですか? 我が国も防衛にしか使用しませんよ。」


 イギリスからもいつもの武官が来ていた。

「ハロルド少佐、改造すれば攻撃にも転用できますから。我が国は憲法で自衛以外の戦闘を禁じられていますので、国際的に信用されているわけです。」

「憲法9条第3項ですか。『本9条は自衛権の発動を妨げない』 つまり自衛権の発動以外では使えない。そもそも憲法を全面改正すれば良かったのに、ほんの少しの変更だけ。歴史が長いせいなのか、貴国はなかなか融通が利きませんね。」

「マグナ・カルタを未だに残している国に、そう言われるとは思いませんでしたよ。歴史の長さもね。」


 お互いに笑いあい握手を交わした。相変わらずユーモアのある人だ。オーストラリアとインドの観戦武官は少し離れたところで、静かに見ている。同盟を結んでからの時間の長さがお互いの距離感として出ている。彼らもいずれマクリーンやハロルドの様に親しい友人となるだろう。…残念ながら、ロシアとは常に緊張感を持ってお互い対峙することになる。


 隣国というのは難しい。今回来ていない中華連邦と統一朝鮮も油断ならない隣国だ。琉球王国も隣国だが無力なのでこれまで無視してきた。

 観戦武官を派遣している5カ国以外にも国籍不明の潜水艦1隻がEEZ内にいることは探知できている。

 琉球王国はこれまで潜水艦を保有していなかったが、どこかから提供を受けたか購入した可能性もある。もちろん仮想敵国の統一朝鮮と中華連邦の可能性も否定できないが。

 時計を見るといい時間だった。


「本日は観戦いただき、ありがとうございました。これよりレセプションがありますのでご案内します。」


 今日は将軍の交代式がある。モニター越しだが同盟国武官に新将軍を紹介する良い機会だ。

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