『少し先の未来にて。』
高校を卒業してから、あんなにべったりだった幼馴染み達もバラバラになり、それぞれの時間を歩み始めていた。一人だけ取り残された様な気がしてる彼だが、あいも変わらずそれぞれのペースでアプローチしてくる幼馴染み達。
これは、そんな少しだけ先の未来のお話から始まる学生生活のプロローグである。
「湊川さんー!湊川夏樹さんー!3番の診察室までお願いします。」
「はーい。って1時間以上かかっちまったなぁ。次の約束までに間に合うかな……」
病院ってのはいつまでたっても慣れないものだ。消毒液の匂い、沈んだ空気、そして妄想の中ばかりでしか拝見しない白衣の天使たち。
「なーんで若くて可愛くてピッチピチの看護師ってのは実在しないもんなのかねぇ?」
露乃「バカなこと言ってないで早く座りなさいよ。」
「うわぁ!!びっくりした!ってお前かよ!随分久しぶりなのになんだよ冷たいなぁ。」
暗い茶色の髪はしっかり止められ、病院だから化粧も薄めだが美少女というものが持つ要素を存分に発揮した顔立ちの白衣の天使がそこにいた。『朝霧露乃』だ。
露乃「その後、胸の調子はどう?ってあんたはそのまま頭もしっかり見てもらった方がいいんじゃない?」
「相変わらず手厳しいこって。久しぶりに会ったんだからもう少し優しくしてくれても……。」
露乃「その調子なら大丈夫そうね。心配して損した。もうすぐ先生来るからしばらく待ってなさい。」
去年の冬、俺は原付で大学への登校中、静かに忍び寄る悪魔の存在に気づかず後ろから車に追突されたのだ。そう、最近ニュースを賑わせているあの星の名前のような車だった。
幸いプrもとい星の名前のような車はスピードも控えめだったので大事には至らなかったが、強めに胸部を殴打し入院、その後の経過観察といった形でこの病院にお世話になっていた。
そこでまさか、あいつに再び会えるなんて思っても見なかったが、あいつがいたお陰で病院という苦手な場所にも耐えられていたのだ。
医師「よし、もう大丈夫なようだ。もう通院も必要ないだろう。もし何かあったらまた来てくれればいい。」
「ありがとうございます先生。長い間、お世話になりました!」
露乃「じゃあまたね。たまには連絡してあげる。後、ナース服、少しくらい褒めてくれても良いじゃないの!」
病院を後にして、次の約束の場所へ向かう。ここから20分程電車に揺られれば慣れ親しんだ街に出る。東京や大阪ほど賑わってもいない、だが、決して田舎というわけでもない、いわゆる第二都市というやつだ。
「よっし、到着。待ち合わせ場所は西口のラクドバーガーの前だったな。昔は待ち合わせといえばパイ山ってのがお決まりだったのに随分と街並みも変わったなぁ。」
街も変わる、流行りのモノも変わる、身分も、付き合うツレも変わる。
最近の女子達はカエルの卵みたいな飲み物をSNSにUPするのに躍起になっているようだ。うぽつです。
凛「ナツ、待ったー⁉︎」
「いや、10分くらい前に着いたとこだけど、少しくらい急いでるそぶり見せろよな……。」
凛「いいやん固いこと言わんと!固いのは殿方のソレだけでいいんよーあははは!それよりさ!行きたいとこあるんよねー!」
「あぁ、カエルの卵か?」
凛「いや、タピオカやなくて。ペンタブが欲しくて−!」
「なにそれ?」
凛「うち、そろそろアナログな絵描きから卒業したいんよ!実際の紙もペンもトーンもいらないんよー!すごくない??すごくない??これで妹ロリ美少女のパンツ舐めたい。」
「お…おう……。よくわからないけど色々と進化してるんだなぁ。それで仕事の方は順調なのか?」
凛「まだ居酒屋のバイトも続けてるけど、いろんな案件が入ってくるようになったからそろそろ絵だけにしたいんだよね!まぁまだしばらくは無理…かな…あははは……。」
母の姉さんの娘、『大倉山凛』は相変わらず、しっかり現代の街に溶け込むような、抜かりのない服やメイクで街ゆく男どもを振り返らせてはいるが、こいつはいわゆる世間で言うところのヲタクと言うやつだ。だがその自分の好きなことをしっかり追いかけて仕事にしているのは本当に尊敬している。
「よし!買い物も済んだし、そろそろ帰るか!」
凛「じゃあうち電車こっちやからー!バイバーイ!ありがとねー!風鈴ちゃんにもよろしくね!今度は風鈴ちゃんとデートする!お持ち帰りする!絶対!」
「はいはい、伝えとくよ。気をつけて帰れよ。」
凛「あと、久しぶりに会えて、今日楽しかった。ナツ!またデートしようね!」
「6時か。もう結構暗くなってきたな。風鈴のやつ絶対お腹すいたって
駄々こね始めてる頃だぞ。」
美樹「あれー?なっちゃん?おかえりー。今日も晩御飯作りに来たよー。」
こいつは隣の家に住む、『新長田美樹』。優しさにかけて右に出るものはいない。海外出張で家にいることの少ない両親の代わりに、家族ぐるみで色々とお世話になっている。地味目だが気立ても良い、どちらかというと薄幸の美少女と言われるようなタイプだ。
「いつも悪いな。美樹。」
美樹「んーんー。美樹がしたくてやってることだからいいのー。あ、今日はねー、チキン南蛮にしようと思うのー。どーかなー?」
「いいじゃん!俺も風鈴もチキン南蛮めちゃくちゃ好きだし!」
美樹「よかったー!じゃあ家入ろっかー!」
玄関のドアを開けるとそこには不貞腐れた妹の姿があった。
風鈴「遅い!遅い!!おっそーい!!!!こんな時間までなにしてたのよお兄ちゃん!!!可愛い妹ほったらかしでまた泥棒猫と会ってたの!?ってなんでまたこいつがいるのよ!!もう!」
こいつは俺の妹。『湊川風鈴』だ。確かに家族の贔屓目なしに見ても学園のアイドルになれるほど可愛い。でもそれを自分で言うか?
美樹「風鈴ちゃんごめんねー。ご飯作りに来たんだー。今日はチキン南蛮だよー。」
風鈴「くっ……。じゃあ、まぁ家に入るの許してあげるわ。もう…お兄ちゃんとの誰にも邪魔されない時間なのに……。」
「ん?なんだって?」
風鈴「うるさい!このラノベ主人公!エロゲ主人公!」
美樹「ふふふ。相変わらず仲がいいねー。」
「ご飯も済んだし、大学の課題しなきゃなー…。」
美樹「あ、なっちゃん!課題にする?お風呂にする?それとも、ワタシ♡?ふふ、こういうのやってみたかったんだよねー。」
「はいはい、風鈴ー?俺先に風呂入るわ。」
風鈴「わかったー。今日は疲れてんだろうしゆっくり浸かっていいよ。」
「ありがとな。美樹もありがとう。風鈴も今日はご機嫌だな。」
美樹「じゃあまた作りに来るねー。いつでも遠慮なく言ってねー?なっちゃんが求めてくれるならいつだって美樹は駆けつけますー。おやすみなさい。」
お風呂あがりのコーヒー牛乳は格別だ。これの為に生きてると言っても過言ではない。あぁ、生きることは素晴らしい。
「あぁ、そういや凛が風鈴に会いたがってたぞ。お持ち帰りするんだーって。」
風鈴「お兄ちゃん今日会ってたの凛ちゃんなの⁉︎絶対ヤダ!あの人ホントにやりかねないから怖い……。」
「おいおい、昔は凛お姉ちゃん〜!ってべったりだったくせに。」
風鈴「それはまだ小さかったからで、あの人も今みたいにヲタク道まっしぐらじゃなかったもん!今や私の全細胞が拒否してる……。」
「従姉妹なんだから嫌でもたまには顔合わせるし、仲良くしてやれよな……。」
「おっと不在着信入ってる。じゃあ風鈴、ちゃんと風呂入って歯磨きしてパジャマに着替えて寝るんだぞー。」
風鈴「もう子供じゃないし、この過保護シスコンバカ兄貴。」
部屋に入り、不在着信に掛け直す。このコール時間はどうも苦手だ。
「もしもし?司沙か?こんな時間に電話なんてどうしたんだ?」
司沙「よー夏樹!明日さ、夕方から暇してない?サークルの練習試合があるんだけどさ、一人熱出しちゃって人数足りないんだよ。んで、満を辞して君の出番ってわけさ。」
「いやいや明日は講義の後はなんもないけど、女子バレーに男が混じっちゃマズイでしょうよ……。」
司沙「その辺はご心配なく!相手のチームにも了承はとってるし、冴香も見にくるってよ!お前、昔『あの人こそ俺の憧れ人だー!!うおおおお!!』って言ってたじゃん?スケジュール空けるの苦労したって言ってたよ!んじゃよろしくー!」ガチャ。ツー、ツー、ツー。
「って勝手に切るなー!まあいいや。冴香さんか……。あの一件の後まともに話すらしないまま卒業して、今やテレビや雑誌に引っ張りだこだもんなぁ。ま、しゃーねえ、久しぶりに体動かすか。」
ピンポーン!!!
「んん…なんだよまだ朝の9時半だぞ……。」
ピンポーン!!!ピンポーン!!
「くそ、大学は昼からだからゆっくり眠れると思ったのに…はいはいはいどちら様ですか?」
ガチャ。ドアを開けるとそこには可憐な黒髪キューティクル少女が立っていた。
『芦屋伊吹』だ。
伊吹「あら、お兄さんおはようございます。風鈴ちゃんと遊びに行くので迎えに来たのですが。」
「あぁ、そうなのか。多分あいつまだ寝てるぞ?とりあえず起こしてくるから、リビングで待ってな。お茶は入れねーぞ。」
伊吹「ありがとうございます。では、お邪魔します。」
階段を登るとそこには妹の部屋がある。
「妹の部屋に入る趣味はないし、あいつ怒るからあんまり入りたくないんだがなぁ…風鈴ー!おい風鈴!伊吹が迎えに来たぞー!」
起きない。
「入るぞー。」
妹の部屋は自分の無機質な部屋と違って、まさに女子です!と言ったように服や化粧道具が並んでおり、年齢的には合わないようなぬいぐるみも多く陳列されている。
「風鈴ー。伊吹が来てるぞ。ほら早く起きな。」
風鈴「んー……。」
「もう体ごと起こすぞ。よいしょっと。って、ん?」
な ん で こ い つ 服 着 て な い ん だ
小さな、だが確かに主張してくる綺麗な2つの膨らみがそこにはあった。細くて白い肌、綺麗なおへそ、そして辛うじて布団に隠れているその下は……
「ってちがーう!!!少し胸触っちまったじゃねーか!あいつお風呂上がりにまたそのまま寝やがったなぁぁぁ!妹の体で興奮するような趣味は持ち合わせてねえ!でもこれはまずい!絶対こいつの事だから『お兄ちゃんが私のこと好きすぎて胸を〜あんなことやこんなことを〜』って言いふらしかねない。ただでさえ風鈴はブラコンなのに俺までシスコン認定なんてされてみろ、ご近所の晒し首じゃねーか!社会的に死んじまう!とりあえず布団をかけて。っと。よし。」
起きろー!と声を出す直前、イタズラっ子な表情で
風鈴「お兄ちゃん私のおっぱい、気持ちよかった?もっと触ってもいいんだよ?えへへ///」
「誰が触るかぁぁぁ!って起きてたのかよ!!もう伊吹が来てるんだからくだらない事やってないで早く準備しろー!!」!
風鈴「はいはい。ふああああ……。」
いくら妹だとはいえ、年頃の男子にあの体は毒だ。そう思った。
「伊吹、ごめんな。今起きたみたいだから少し待っててやってくれ。」
伊吹「全然大丈夫ですよ。それより、お兄さんに会うのすごく久しぶりですね。」「そう、だな。元気だったか?」
伊吹「んー、当時はやっぱりすっごく凹んじゃってましたけど、もう大丈夫かな。」
「そっか。風鈴もそろそろ支度できただろうし、俺も部屋に戻るわ。」
伊吹「はい。あの…またお家に遊びに来てもいいですか?」
「あぁ、風鈴も喜ぶだろうしな……。」
伊吹「風鈴ちゃんが居ない時でも、良いですよね?」
大学が終わり、半ば無理矢理に背負わされた任務のである遂行のため、自分の母校であるS学園高校へ向かう。今日は母校の体育館を使わせてもらうらしい。
司沙「おー!夏樹、きたな!ちゃんと服とシューズも持ってきたか?」
「あぁ持ってきたよ。いつも講義には筆箱くらいしか持ってかねえのに今日は大荷物だよ、まったく。」
司沙「あ、そういやさ、冴香が少し遅くなるみたいだから後で迎えにいってやってくれよ!あと、すぐ体育館の鍵、もらってきて?」
「なんで俺なんだよ!」
司沙「だって新開地先生、お前の親友の姉貴だろ?私、授業受け持ってもらったことすらないもん!頼むよー!なんかちょっと怖いんだよあの先生…近寄りがたいっていうか。」
「もう、わかったよ!もらってきてやるよ!」
司沙「お、さすが!帰ってきたらよしよししてやろうか?」
「いらねーよ!!」
司沙「膝枕のがいい?なんてな!にゃははは!」
『御影司沙』は一つ上の先輩だ。少しボーイッシュな雰囲気でスポーツ万能、勉強は苦手、誰とでも仲良くなれる明るい人だ。ちなみにここだけの話、中学時代にはすでにFカップという恵体の持ち主だ。だが決して太っているといったことはなく、まさに男が好きそうなボディをお持ちである。
来賓用の玄関から入り、少し進んで階段上がる。左に曲がって突き当たりを右に曲がれば職員室が見えてくる。3年通った高校は自分にとっては庭みたいなものだ。
職員室のドアをノックし、ドアを開ける。
「失礼します。新開地先生はいらっしゃいますか?今日体育館をお借りする予定で鍵を頂きに参りました。」
高砂先生「おおー、湊川久しぶりじゃないか!大学はどうだ?ところで少し前に事故にあったと聞いたが。」
「高砂先生!お久しぶりです。大学はまあ程々に、といった感じですね。ははは。事故の件はもう大丈夫です。すっかり元気です。」
高砂先生「そうか、なら良かった。ところで、新開地先生ならまだ保健室にいるはずだよ。」
「ありがとうございます。ではそちらに伺いますね。」
高砂先生は体育の教師で、俺も授業を受け持ってもらったことがあるが、生徒から人気があり、イケメンで悩み相談なども解決してくれるチート教師だ。正直妬ましい。
職員室を出て、一階に戻り、渡り廊下を挟んで4つめの部屋が保健室だ。
やはりここは俺の庭だ。どや。
「失礼しますー!あ、レナ姉ー!体育館の鍵もらいにきたんだけど。」
『新開地玲奈』もといレナ姉は親友、京介のお姉さんでこの高校の保健室の先生をしている。
ちなみに新開地一家は総じて美形ぞろいである。
レナ姉は大学卒業後すぐにこの高校に来たそうで、かなり若い。まさに皆んなのお姉さん的存在だったのだ。
玲奈「はぁもう、学校ではレナ姉って呼ぶなって何度も言っただろう?」
「もう卒業してるんだから固いこと言うなってレナ姉。」
玲奈「まぁそれもそうね?さて、保健室の常連組だった夏樹君?この保健室のどこかに鍵を隠してあるんだけれど、どこにあるかわかるかしら?」
「探してみていいのか?」
玲奈「ええ、もちろんよ?」
「ここか?いや、こっちかな?あれ、ねえな。」
自慢じゃないが保健室の構造やレナ姉が鍵を起きそうな場所は大体把握している。それなのに見つからない。いや、待てよ、レナ姉がやりそうなことが一つだけある。
「レナ姉、それってもしかして、その、胸ポケットの…」
玲奈「あら、よくできました。ほら早く鍵を持っていかないとなんでしょ?早く取れば?」
「そんなとこに指を突っ込めるかあああ!!!」
玲奈「あら、大人になったかと思えばまだまだジャリボーイみたいなことを…ふふふ。ならずーっと体育館は開けられないわね?私はこのまま仕事を続けるけど?」
と、机に向かい積まれている書類達に一枚づつ目を通すレナ姉。
「わかった!わかったから動かないでくれよ⁉︎」
そーっと、机に向かって座るレナ姉の後ろから、白衣の下のブラウス、そのたわわな胸のポケットの中に手を伸ばす。もう少し、もうちょっと、よし、届いt…
玲奈「はい捕まえた。」
急に腕を掴まれ、そのまま俺の手は妹のそれとは違う、大人の柔らかさに包まれた。「ちょ!!!!レナ姉何してるんだよ!」
玲奈「えー?いいじゃない夏樹君久しぶりに来てくれたのに。またあの時の続き、シテあげようか?///」
「ダメだって!!皆んな待ってるから!俺もういくから!じゃあね!」
玲奈「あら、んもう、相変わらず逃げ足早いんだから。」
「はぁ、もうレナ姉全然変わらねえ……。在学中から大変だったもんな。」
司沙「あ!夏樹!おっそーい!皆んなもう待ちくたびれてるよー!」
「わ、皆さんすみません。」
体育館の扉を開けると、懐かしい匂いがした。少し古い木目の床とニスの僅かな香り。
司沙「どしたん?思い出にでも浸ってるのか?」
振り返るとユニフォームに着替えた司沙が優しく微笑んでいた。ジャストサイズのユニフォームが体のラインを強調させているがイヤらしくなく、健康美と言った感じだ。
「いやー、やっぱあの頃は良かったなーと思ってさ。毎日めんどくせーって言いながらも仲良い奴らや司沙がいて、毎日色々なことがあって、このままずっとこの世界が続くんだろうなって思ってた。それが一歩社会に出ると、皆んなバラバラになって繋がりすら薄れてくんだなって。」
司沙「そうだねぇ。わかるよ少年。だが、君の一歩は小さいが、人類にとっては大きな一歩なのだよ。にゃははは。それにさ、君が望むのならお姉さんはいつだってこーやって君を受け入れてやるぞよ。」
ウォーミングアップを済ませ、いざ練習試合が始まろうという時に、冴香さんが近くまで来たということでお迎えに行くことになった。
冴香「あら、湊川君が迎えに来てくれたの?」
「あ、はい。司沙に『お前が冴香を迎えに行けー!』って言われたもので。」
冴香「そう。嬉しいわ。ありがとう。」
「今日はお仕事大丈夫だったんですか?
冴香「ええ、スケジュールが順調に進んで、今日は久しぶりのお休みなの。」
「そんなお休みの日にわざわざ呼びつけるなんて司沙もひどいですね。」
冴香「そんなことないわ。湊川君も来るって聞いてたし、喜んで来ちゃった。」
やはり鵯越冴香さんはお淑やかで美人で申し分なくヒロインだった。中学高校と生徒会長も務め名実ともに素晴らしい。そもそも何故、司沙と冴香さんが仲が良いのかというと……うん、それはまた後にしよう。
体育館に戻ると、既に試合が始まっていた。
司沙「夏樹ー!やっぱ5人対6人じゃキッツいわ!すぐ入って!後衛のサーブからヨロシクー!」
「はいはい……。じゃ冴香さん、行ってきます!俺の活躍見ててくださいね!」
冴香「ええ、頑張ってね。」
そこからはある程度白熱した試合になり、司沙のチームも相手チームも満足いく内容になっていたようだ。
司沙「夏樹ー!今日はありがとね!褒美をくれてやる!私のフリーハグか冴香を送って帰る権利とどっちが良い?」
「ハグなんていらねーよ……。」
司沙「なんでだよー!可愛くない!いやー可愛くない!じゃあ冴香を頼むぞ!私たちはこのまま親睦会も兼ねた飲み会だから!ヨロシクー!」
「はいはい、あんま飲みすぎんなよー!というわけで、帰りますか、冴香さん。」
冴香「あら、良いのに。でもそういうことならご厚意に甘えさせてもらおうかしら。」
冴香さんの最寄駅は俺の駅の一つ先だ。駅までの道、電車の中でも会えなかった日々を穴埋めするように沢山のことを話した。
「じゃあ、俺はここで。また連絡くださいよ!」
冴香「あら、今日は家まで送ってくださらないのね?」
「すみません。今日は帰ります。この荷物だし、汗もかいてるので。じゃ、また!
冴香「やっぱり…意気地なし……。」
別れ際に冴香さんが何か言ったような気がしたが、ドアの開く音にかき消された
冴香「意気地なしなのは、私も一緒かしらね。」
この話は、そんなモラトリアムから少し前
期待と夢の詰まった学園生活から始まるお話である。
ということで、この7人(妹の風鈴も入れると8人ですが…)のヒロインたちがどの様に彼と出会い、どんな時間を過ごしていくのか。
それを今後の更新で書いていきたいなと。
ヨロシクお願いします!!!!