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ゴリラ・転生・ゴリラ

作者: ゆーれい

 我々は『かの者』の姿を知っている!

 本能が!我々に『かの者』の姿を伝えているのだ!

 奴の名を憶えていない人間などこの世には存在しない!



 見よ!この美しき銀髪を!

 背を覆う毛は銀の絨毯のよう!


 見よ!この澄んだまなこを!

 その瞳は底知れぬ知性をたたえている!


 見よ!この豊満な胸を!

 色よし!形よし!バランスよし!



 そして一糸纏わぬ『かの者』は!

 惜しげも無くその裸体を晒して!

 我々に大きな口を開けたのだ!!!




『ウホッ!!!ウホウホウホ!!!ウホホホホ!!!!!』




 奴の名はゴリラ。ニシローランドゴリラ。ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ。百獣の王だ。


 メガトンパンチ!!!

 豪腕が振りぬかれ、勇者一行ははるか空までぶっ飛ばされる。彼らはゴリラのナワバリを犯してしまった。森の掟に従い裁かれたのだ。


 勇者たちはもはや宇宙軌道を永遠に回るチリとなったのだ!



 このゴリラはかつてはサオリ♀だったもの……。

 かつては類人猿最強とまで呼ばれた彼女をこの地上に知るものはなく、また彼女自身ですらそれは忘却の彼方だ……。


 ゴリラの脳容量は500ml……、

 リンゴ一個分……、

 かつての栄光を記憶に留めておくには脳が小さすぎたのだ……。



 しかし!

 ゴリラはウジウジ考えない!

 人間なんぞとはオツムの出来が違うのだ!



『ウホッ!!!ウホッ!!!ウホッ!!!』



 森を抜け、道を抜け、ゴリラは駆けていく!

 特徴的なその走りはナックルウォーキング!

 拳を使う特殊走法!実に時速50kmに達する!

 はっ、速すぎる〜!



「おうおう、有り金全部置いてってもらおうか〜」


「ぐへへ、ついでにそこのネーチャンもな〜」



 街道をゆくゴリラの先に不届きものが立ちはだかる!

 こそ汚い盗賊ども!さめざめと泣く村娘!そして勇敢に馬車を守る少年!


 一発触発のこの状況、しかし彼らは接近してくる猛獣に気がつかない!


 当然である!

 ゴリラのナックルウォーキング!すでに!人間の目なぞに捉えられぬ速度に達している!



『ウホッ!!!!!!!』



 ばくれつパンチ!!!

 豪腕が振りぬかれ、4人は馬車ごと空の彼方までぶっ飛ばされる。ゴリラのパンチ力は2トン超。これを受けて原型をとどめる生物など存在しない。


 彼らはもはや空の上の住人となったのだ!




 城郭都市!

 それは戦争、魔獣、ドラゴンから街を守るために堅固な石壁に守られた中世的都市!


 その騒動は!ゴリラが壁を突き破った先で起きていた!


「くっ!殺せっ!」


「世にも珍しいハイエルフ!今ならもう一匹つけてなんと100円!」


「よし買った!」


 ステージの上のゴリラを囲むのは浅ましき奴隷オークション!

 ボロ布を纏ったエルフ!奇天烈な格好の支配人!肥え太った豚貴族ども!


 ゴリラに向けられる耳を塞ぎたくなる喧声の数々!

 しかしこんなもんじゃあない!この程度の歓声などサオリ♀は聞き飽きている!


 これが本当の野生の咆哮だ!!!



「ウホーーーーーッッッ!!!!!!」



 ドラミング!!!

 その場にいるあらゆる者の鼓膜が破れ飛び散る。発生した衝撃波は周囲全てを空の彼方までぶっ飛ばす。

 当然だ。ゴリラの胸はセミと同じ中空構造。数キロ先まで音を届ける増幅装置になっている。


 だからこそエルフも月までぶっ飛ぶこの衝撃!


 なおドラミングをやる手はパーだ。グーではない。

 今まで幾度となくゴリラのモノマネをしてきたそこの君!二度と間違えるなよ!!!





『ホゥ、我ノホカニモ【B】ノ血を引ク者ガイルトハ……』


『ウホッ!??』


 突如上から低く重い声が鳴り響く。

 崖の上に立つはサオリ♀と同じシルバーバック、成熟した雄の証を持つゴリラだった!

 そして一足で間合いを詰められる!


『ダガシカシッ!』


『ウグッホォッ!!!』


 地平線の彼方まで殴り飛ばされる!

 このスピード、そしてパワー。間違いない!このゴリラは全てを上回っている!


 名はヒガシローランドゴリラ!またの名をゴリラ・ゴリラ・グラウエリ!

 体格、体重においてはマウンテンゴリラにすら迫り、ニシローランドゴリラなど比べるべくも、ない!!!


 あまりある体格差から繰り出された一撃はニシローランドゴリラをのすには十分だった。

 近づきマウントをとるヒガシローランドゴリラ。


『ドウシタ。ナゼ起キ上ガラナイ。レイチョウルイガソノ程度デ終ワルワケガナイダロウ』


 その通りであった。ゴリラはこれしきでへこたれない。

 なのに未だニシは頭を地に伏せたままである。

 気絶しているわけではない。ましてや降伏を示しているわけでもない。

 では一体何なのか……!


『コレハ……!』


 一輪の花である。

 ニシの腹の下には荒地に残されたただ一つの花があったのである。

 ゴリラは大柄な体躯に反して温和で繊細な性格であると言われている。『森の賢者』と称される知性と慈しみが他者の痛みだって理解することさえ可能にしているのである!


『コンナモノ……!!!』


 しかし、ヒガシはニシを蹴り飛ばしてか弱い花を摘み取ってしまう。


『ゴリラトハ生命ノ頂点二君臨スルモノ!万物ノ霊長!ダノニ、コンナ雑草二カマケルナド、片腹痛イワー

 !!!!!』


 ヒガシは容赦なく花をパックンと丸のみにする!おいしい!

 ゴリラは恵体を持ちながら、生粋のベジタリニスト!昨今流行りのエセヴィーガンだとか、プロテインが無ければ体格を維持できないボディビルダーとは格が違うのだ!



 しかし、それがニシの逆鱗に触れた!!!



 目の前で潰えた儚い命!何もできなかった無力感!絶望!

 図体の割りにノミの心臓を持つと言われるゴリラ!心臓に過大なストレスがかかり、血流が増幅する!

 今、ニシの全身には、煮え血が巡り返っている!!!



『ウホゥッ!!!』


『ムゥッ!』


 ニシの反撃!一歩だが後退させられるヒガシ!両雄にらみ合う!

 そして互いに示し合わせたように立ち上がった。ゴリラも大臀筋の少なさゆえ普段は行わないが、人間のように直立することは可能。しかも姿勢がいい!


 双方両の拳はもはや自由!パワーを200%出し切る所存!

 両者半歩前進!射程距離に入った!


『ウホッ!!!!!』


『ゴリラァッ!!!』


 両者の顔面に拳が入る!ゴリラの体脂肪率は一桁!クッションなどない!衝撃は直に頭蓋に伝わる!

 しかし両雄拳を振るのをやめない!ラッシュ!ラッシュ!ラッシュ!



『ウホウホウホウホウホウホウホウホウホウホウホウホ!!!!!!』


『ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ!!!!!!』



 秒間600発!重機関銃に勝る連射速度!ノーガードで殴り合う!恐るべき命の削り合い!そして、わずかな均衡の崩れから戦いの流れが傾いていく!


『グゥゥッ!』


 ヒガシが下がる!詰めるニシ!両者被弾数はほぼ同等なるも、ニシが拳に乗せた「怒り」の分だけ威力が違う!

 原始的憤怒が!ゴリラの最も強く発する感情なのだ!


 耐え切れずヒガシは距離を取り、リンゴ大の頭を絞って、策にでる!


『食ラエィッ!!!』


 糞!

 ヒガシはひり出したウンコをニシの顔面に投げつけた!たまらず目をつむるニシ!

 決定的な隙が!ヒガシの卑怯なる手によって生み出された!!!



『糞ノ目潰̪̪シダッッ!トドメノ一撃!オマエハ目ニスルコトハ、デキナイッッッ!!!!!』


 だが、ニシは見えているかのように拳を繰り出す!

 そして、ヒガシの腕を滑らせるように、完璧に!ニシのクロスカウンターが合わせられた!


『ウホゥッ!!!』


 カウンターにより2頭のゴリラの突進力がそのまま打撃力となる!ゴリラの分厚い頭蓋もこれには耐えられない!

 ヒガシはニシの必殺の一撃によって首から上が消し飛んだ!!!


 決着は着いたのだ。

 ニシは自分の鼻に指をさす。


『あなたは魅力的だったから……、出会ったときに既にウンチでマーキングしていたのよ。あなたの居場所はニオイが教えてくれたわ。もっとも、もう聞こえてなどいないでしょうけど』


 ヒガシの彼岸への手向けにカラクリを教えるニシ。

 ゴリラは求愛の印にウンチを投げることもあるのだ。ゴリラの同性愛などなんら珍しいものでもない!





 愛破れ、道半ばともゴリラは仲間を求めて進み続ける…………。


 なぜならゴリラは群れで生きる動物なのだから…………。

このお話には実在の人物・団体・ゴリラは一切関係はございません

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