ショートヘアー
このページを開いて下さりありがとうございます。趣味で小説を書いているまだまだ未熟者な私ですがどうぞよろしくお願い致します。
彼女の髪は美しかった。キレイな黒髪が光を透かすと少し茶色くなるのが僕は好きだった。
そんな彼女が今日ショートヘアーになっていた。
僕は毎朝誰よりも早く教室に着くのだけれど、今朝教室の扉を開けると一番奥の席に髪の短くなった彼女が座っていた。
「髪..」
あまりの驚きについ声が出てしまう。
「あ、おはよう。びっくりした?」
彼女は悪戯にニヤリと笑う。
「あなた、ずーっと私の事見てたよね?好きなの?」
唐突な問いに「え」と声が漏れる。朝登校して早々まさかこんなハプニングが起こるなんて。
「えっと..僕が好きなのは君の髪なんだ。気持ち悪いかもしれないけど、長かった頃の美しい黒髪が光を通して茶色くなるのが好きだったんだ」
彼女は少しムッとしてから、友人と話している時のようにケラケラと笑った。
「なーんだ。恥ずかしー」
少し頬を赤らめる彼女は、少し子供っぽいような無邪気さで、いつもとは違う印象だった。
見たことの無い新しい彼女を知ったからなのか、短くなった髪を見たからなのか、僕の心臓は少し大きな音を立て始めた。
「どうして今日はこんなに早く登校してきたの?」
僕は自分の席に教科書のたくさん詰まった重たいカバンをおろす。
髪の短い彼女から目を逸らし、中身を机に移そうと自分の手元に目を向けた。
「みせたかったから」
僕がまた彼女の方を向くと、彼女はじっとこちらをみつめていた。
「新しい私を、1番最初に好きな人に見てもらいたかったから。でもその人は私の長い髪が好きだったんだって。私そんなことで落ち込んだりしないよ。だから今度は短い髪の私のことを好きになって欲しいんだ」
心臓どころか全身がバクバクと高鳴る。
「僕は多分君の髪が好きなんだ」
「うん。だから今度は私を好きになって」
彼女の言葉が途切れてすぐ教室の扉が物凄い勢いで開いた。
「おはよー!あれさーいちゃん珍しくはやーい。てゆーかその髪どうしたの?失恋?」
「んーん。違うよ、まだまだこれから」
彼女は僕の方をちらりと見る。
そうするとまた悪戯にニヤリと笑った。
バクバクと高鳴る自分の心臓に、僕の心はぐるぐる混ざった。彼女の新しい髪型を少し悲しく思う気持ちと、期待する気持ち。
いつまでも止まない心臓音に僕の心はどんどんかき乱されてゆく。
「短いのも悪くないな..」
ポツリと呟いた僕の言葉は、続々と登校してくるクラスメイトの声にかき消されて消えた。




