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条約に基づく駐留が決まった日ノ本帝国軍は、最初に陸海空海兵の4軍統合基地の建設を決定した。

渉と榛名、各軍のトップの協議の結果この基地の駐留兵力は陸軍は歩兵師団が2個と機甲師団と騎兵師団が1個ずつ、海軍は派遣された第4艦隊をまるごとに加えて1個空母打撃群、空軍は2個航空団(戦闘機だけで約140機)、海兵隊が1個海兵師団となった。

幸い、建設予定地はアルザスの西に海に面した広大な平原があった為そこに建設することになった。

早速王城近くに新設された在バイエンス王国日ノ本帝国大使館大使がエドマンドにこのことを伝えると、建設予定地の面積が大きいことに驚かれるも承諾された。

建設に取り掛かった海兵遠征隊工兵小隊はまず滑走路の敷設を開始。

M9ACE装甲ブルドーザーとFLU-419SEE汎用作業車が地面を均した仮設滑走路に、本土から飛来したC-5Mスーパーギャラクシーが着陸し機内から追加の工兵用車両と人員を下ろし始めたのはそれから12時間と経過していなかった。

また同じ頃、第4艦隊旗艦『ジョージ・ワシントン』の司令官公室ではバイエンス王国と周辺国の動静を調査していた情報本部によるブリーフィングが行われていた。出席者は渉、榛名と日ノ本帝国の閣僚に艦隊の幹部だ。


「これより、第1回調査結果報告を始めます。まずバイエンス王国の政治機構についてですが、この世界の大多数と同じ王政です。ただし先代のアーサー王が若死にされた為、実際の政務はまだ11歳の長女ペトラ国王に代わりエドマンド宰相が行うことが多くなっています。宰相は、古くから存在する有力貴族の出身で国民や軍部からの信頼も厚い名君として知られています。周辺国とは友好条約を結んでおりますが東の国境線を接するフェルセン公国は例外です。この国は大陸最大の覇権国家レガリア魔法帝国の衛星国の1つでありまして領土的野心を隠そうとしません」


一度に喋った情報本部長は、少し間を取ろうとしたがシェリンガム中将の質問に答えるべく再び口を開いた。


「バイエンス王国が安全保障関連の条項にこだわった原因もフェルセン公国とレガリア魔法帝国ですか?」

「そのように見て間違いないだろう」


少し前まで海軍大将を務めていた情報本部長の言葉に淀みはなかった。


「またこの世界にはエルフ、猫人、犬人、蛇人などの亜人と呼ばれる種族も存在します。国によって接し方は異なりますが、バイエンス王国は寛容な政策で知られています。意外な事にレガリア魔法帝国も法で亜人に対する差別を禁じております。理由は打算的な物ですが、身体能力に優れた亜人を中心に選抜した精鋭部隊、いわゆるコマンド部隊的な集団の有効性に気付きこれを運用しているからです」

「無理矢理徴兵するより自主的に志願させた方が訓練の成果が出やすい。コマンド部隊は有象無象を集めるより少数精鋭の方がよほど好ましいからな」

「その通りです」


渉の言葉に情報本部長が頷く。だが、コマンド部隊の有効性を理解して正しく運用しているならレガリア魔法帝国にはよほど優秀な軍師がいるのだろう。亜人差別が珍しくないこの世界で、亜人を部隊のコアとして運用しているなら尚更だ。


「この世界のもう一つの特徴は魔法の存在です。魔法の原理は『魔力のある者が魔法詠唱を行い空気中のマナに干渉して発動させる』との事です。魔法には水、光、地、火、木の5属性が存在しますが魔力が少なければ全く使えないか使えても1つだけ。桁外れに多いと全て使える上に威力も大きいとの事です」

「次にこの世界の人が我々を指して呼ぶ"漂流者"についてです。理由は不明ですが、一定のスパンで異世界から人間あるいは生物が現れるそうです。前回は178年前に人間の女性が現れた記録がありましたが、私達の世界と同じ地球から来たかどうかは不明です。この現象に関しては残念ながら大した情報は得られませんでした」

「最後にこの世界の文明レベルですが、日常生活は中世ヨーロッパクラスですが前述の魔法を使えば電気の代用にもなります。魔法は軍でも使われていますが、威力が限定的である事から戦争の主役はボルトアクション式ライフルを使用する歩兵と飛竜を駆る竜騎兵です。以上が今回の報告です」


全て話し終えた情報本部長が一礼する。だが、無表情で有名な彼を除いた全員が芳しくない表情を浮かべていた。

これほどの情報を一度に理解する事は容易ではない上、自分達の常識が通じない相手がいくつもいる現実を知ったからだった。


「とんでもない世界に来たな…」


誰かの呟きが、全員の意見を代弁していた。


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