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1-3

日ノ本帝国 ヨコスカ軍港上空 総帥専用機EC-225LPシュペルピューマ機内


<総帥、間も無くジョージ・ワシントンに着艦します>


ヘッドセットを通して操縦士の声が聞こえた。風防ガラスの前方を指差す操縦士越しに全長333メートル、全幅76.8メートル、満載排水量10万トンを超える『ジョージ・ワシントン』の巨体と周囲に停泊中の護衛の艦艇がはっきりと見えた。

VRとは違う、本物の兵器には何とも言えない迫力がある。

どれだけ技術が進歩しても所詮それは仮想の物だった。


「あれが本物の原子力空母か…」

「はい。あちらの巡洋艦も駆逐艦も、そして陸海空海兵の全ての戦力は総帥の指揮下にあるのです」


榛名の口調は、感慨深そうに独りごちた渉を諭すようだった。

艦尾を回り込んだシュペルピューマは艦橋の後ろに設置されたエレベータ3の上に着艦した。すぐに同乗しているキャビンクルーがドアを開ける。

メインローターが吹き上げる風と爆音を背に渉は榛名、マルチカム迷彩柄の戦闘服とタクティカルベストにFASTヘルメット、SCAR-L自動小銃とP226で完全武装した一個分隊の近衛師団兵士と日ノ本帝国の閣僚を従えて甲板に降り立った。

甲板に整列していた海軍士官達が一斉に挙手の敬礼を行う。

先頭に立つ男性が口を開いた。


「お待ちしておりました。第4艦隊司令官アレックス・シェリンガム中将です。本艦のCDC(戦闘指揮所)までご案内します」

「よろしく頼む、シェリンガム中将」


渉は第4艦隊の派遣を決めてから考えていた事がある。それは、派遣される艦隊の将兵に向けた演説であった。

これから彼らは、未知の領域へ踏み込む。命を賭けた任務を命じた者としてそれくらいのことは行いたい。

その為にCDCに向かい演説を行うつもりだ。


「ところで副総帥はどうなさいますか?」

「総帥の側でお仕える事が私の役目です。当然、同行します」


頷いたシェリンガムは閣僚の案内を別の海軍士官に任せ、渉達を連れて艦橋横の艦内扉を開けた。





空母ジョージ・ワシントン CDC内


CDCは艦橋の下に設置された空母版CICと呼ぶべき部屋だ。ACDS(高度戦闘指示システム)によって機能し、偵察衛星や味方艦艇、航空機から得た情報をコンピュータで処理して自艦や艦隊の戦闘指揮を執る。

入室した一行は、敬礼を送ってきたクルー達に答礼しつつCDCの一角にある戦闘群司令部指揮所に向かう。

渉は無線のマイクが艦隊の全艦艇向きの設定になっていることを確認し、スイッチを入れた。


「第4艦隊の諸官。私は日ノ本帝国総帥奈良原渉だ。諸官も知っての通り、我が国は恐らく異世界に転移した。資源の乏しい我が国はこのままでは国民の生活すらもままならなくなり、亡国への道をたどる事になる。だからこそ、私はそれを阻止すべく艦隊の派遣を命じる。無論、危険が待ち構えているかもしれない。だがこの国を守る最後の砦は、諸官達軍人だ。国を、国民を、そして皆の愛する人たちを守るため、持てる力を存分に発揮し任務を遂行せよ」


少し間を置いて、声を吹き込む。


「全艦、出港!」


その言葉を合図にジョージ・ワシントンに4基備わった巨大な5枚羽のスクリューが回転を開始、水中を攪拌し始めた。

CDCの大型モニターに映る護衛艦もガスタービンエンジンの回転数を上げて逐次軍港から外洋に向けて出港。

交わることのない筈のモノ同士の回合が、近づいていた。


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