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カゴメ歌①

完全に見切り発車です。

現行の連載作品が書いては消しになって納得いかないストレスの結晶(笑)

着地点は見えてるのにそこに至る道を作れない自分が辛い。

不定期更新になりますのでご了承ください。

――かーごめーかごめー


「はあ、はあ、はあ、なんなんだよ、なんなんだよ!」


――かーごのなーかのとーりーはー


「な、んで、ここ神社だろ! なんで階段も社もないんだよ! みんな何処行ったんだよ!」


――いーつーいーつーでーやーるー


「ひ、ただ肝試しに来ただけなのに……」


――よーあーけーのーばーんーにー


「来るな……来るなよ……」


――つーるーつーるーつーべったー


「嫌だ……いやだ……」


――うしろのしょーめんだーぁあれー


「ひぎ!? が……」



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



――とある神社の境内――


「関口警部、殺し……ですかね?」


「うん? ……まあ……そうだな……」

ボサボサの髪をして無精ひげを生やし、黄土色のトレンチに身を包んだ大柄な男。

大凡時代遅れな恰好をしたこの男、関口はどこか遠くを見つめるように返事をする。


「サイコパスの仕業でしょうか?」


「サイコパス……ねえ……だと楽なんだが」

いまいち要領を得ない返事に少しだけ訝しく思う助手の若い男。


「? どういうことですか?」


「そのまんまだよ、そのまんま」

やはり要領を得ない。


「そうですか……しかし、どんな凶器を使えばこうなるんですかね? すっぱり首が落とされて、まるで骨なんかなかったように綺麗な断面……」


「……」


「正座するように座った身体と背中合わせになるように置かれた本人の生首……正直異常ですよ……」

助手がうんざりしたような顔で頭を振る。


「後ろの正面……か」


「童謡ですか? 今は関係ないかと……いや、逆にこの変な遺体を正確に表現してるような……や、やめませんか? そういうオカルト染みたの……」

助手はオカルトが苦手なようだ。


「なあ、羽沼……ちょっと付き合えや」


「え? 現場放って置いていいんですか?」

羽沼は最近関口の下に着いたばかりの若い刑事。

融通の利かなさは性格なのだろうか。


「いいんだよ、聞き込みだ」


「聞き込みって、第一発見者はさっき話を聞いたでしょう?」


「ちげーよ。……写真はしっかり撮ったな? 行くぞ」


「ま、待ってくださいよ!!」



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



――某ビル2F――


「ねえ、関口警部? ここに誰かいるんですか? 誰もいるように思えないんですが……むしろ廃ビルと言っても差し支えない気がするんですが……」

よほどお化けが苦手なのか先ほどからうるさいくらい話しかけてくる羽沼。


「大丈夫だ、廃ビルじゃねえから……っと、ここだ」


「え? ……香呂音オカルト相談所? なんて読むんですか?」


「コロネだ」


「は?」


「コロネオカルト相談所だ」


「いやいやいや、オカルトって……関口警部……本気ですか?」


「本気だ、おいコロネ! 居るか!?」

と言いつつノックもせずに扉を開けて中に入る関口。


「んにゃあ~? もう食えないから……ああ、駄目だよ……辛子はちゃんとご飯粒の間に仕込んでおかないと……隠し味の意味が……」

部屋の中では机に突っ伏して涎を垂らし、寝言を言っている女性の姿があった。

年のころは20前半といったところか?


「はあ……起きろコロネ!!」


「ひゃい!? あ、あれ? 私の粒あんイチゴご飯辛子あえは!?」


「それは人の食べ物じゃないだろう……」


「およよ? おー、せっちゃん久しぶり。元気してた?」


「まあほどほどにな」


「ん~? せっちゃんがここに来るって事はぁ~」


「おう、依頼だ」


「にゅふふふ~、せっちゃんこういうの外さないからにゃー。期待しちゃうよん?」


「俺らじゃ多分どうしようもねえからな……そのままならX-FILE行き確定だ」


「ほうほう、写真はあるんかね?」


「抜かりはねえよ、羽沼」


「ど……」


「ん? 羽沼?」


「どういう事なんですか!? 説明してください関口警部!!」

声を掛けられるまでまったく相手にされず、とんとん拍子に話が進むのを呆然と見ていた羽沼はここで説明を求めた。

多分このタイミングを逃したら謎なまま話が最後まで行くと直感したからだ。


「おお、わりぃ」


「んにゃ? せっちゃん説明しなかったの?」


「おう、結構急を要する気がしたんでな、説明せずに引っ張ってきた」


「だめだよ~、ただでさえ胡散臭い場所なんだから~」


「自分で言うな! っと、また脱線するとこだった。えーと要するにだな、かくかくしかじか」


「まるまるうまうま……じゃわからないですからね、ちゃんと説明してください」


「ち」


「ち、じゃないですから」


――ここはオカルト研究の第一人者にして霊能者である霞手香呂音(かすだころね)の事務所。

未解決事件や、普通じゃない(・・・・・・)事件を解決する専門の場所。

容姿端麗、超絶美麗、眉目秀麗でナイスバディ(死後)な美女が貴方の悩みを見事解決します!」

って、モノローグ部分に勝手に入ってこないで!


「ちぇ~」


「誰と話をしてるんですかこの子は……」


モノローグ(作者)


「は?」


「まあいいや、続きお願い」

まったく……見た目はまあ普通より可愛いと思う。

バストはD、盛ってなければ。

服装はTシャツにジーンズとかざりっけ無し。

もうちょっとおしゃれしたら?


「悪意あるなぁ……」


「ねえ、関口警部……この子、頭大丈夫ですか?」


「言うな……残念なのは今に始まった事じゃない、とりあえず写真だ」


「え? あ、はい」

羽沼は慌てて鞄からデジカメを取り出す。


「コレだ……俺はカゴメ歌だと睨んでる」


「……やっぱりいい()してるよね、せっちゃん」


「関口警部、あの……カゴメ歌って……あの?」


「ああ、あのカゴメ歌だ」


「現場でも言ってましたよね……説明……」


「お兄さんは死体のあった神社がどんなところか知ってる?」


「え? 確か昔この辺が村だった頃に孤児を引き取っていた神主が居たとか……」


「あれ、嘘だから」


「え?」


「あの神社は間引き神社だったんだ。育てられない子供を親がそこに連れて行くんだ。そして……刀で首を落とす、それもご神体と言われた刀でね。神の元に連れて行くとかいう名目だったかな?」


「そ……そんな……」


「そんな事が続いたある日神主が亡くなって……これも不可解な死に方なんだけどさ、神社で怪現象が起こるようになった」

村の中から少しずつ大人が減っていく。

村長は見張りをたてて何が起きてるかを探った。

夜中に一人、また一人と誘われるように間引き神社に向かう人が出てきたのだ。


このままでは村自体が無くなってしまう。

村長は神社に向かう一人の男を引き留めて事情を聴くことにした。

ソイツから聞き出せた話は……。


「歌が……歌が聞こえるんだよ……カゴメ歌が……行かなきゃ……いかなきゃ……」

村長は恐怖を覚えたが、それでも原因を突き止めなければならないと男を追いかけた。

フラフラと覚束ない足取りで境内までたどり着いた男は顔を隠してしゃがみこんだ。

これはまるで――かーごめーかごめー……かーごのなーかのとーりーはー……――


何処からともなく聞こえてくる旋律。

村長はわが目を疑った。

薄っすら見える男を囲む子供たち。

その全てが首なし。


首のない子供たちに囲まれて楽しそうに歌う男。

やがて歌は終わりに差し掛かる。


――うしろのしょーめんだーぁあれー……


ドサリ! っという音と共に首が落ちる男、村長は一瞬たりとも目を離していない。

だのに斬られる瞬間がまったくわからなかった。

まるで地面から生えるように立った首は胴体と背中合わせになっている。

それはまさに「後ろの正面」。

村長はその光景に心から恐怖し、即座にその場所から逃げ出そうと後ろを向いた。

そこには……。


「うしろのしょーめんだーぁあれー」


「ぎゃあああああ!! なんまんだぶなんまんだぶ……」

唐突に叫びだした羽沼は蹲って題目を唱え始めてしまった。


「ってアレ?」


「あー、どうやらコイツこういった話は苦手らしいんだわ」


「もう、早く言ってよ」


「でもなぁ……俺の下に着いたらコレには慣れてもらわんと」


「コレっていうなし」


「か、勘弁してつかぁさい……」

少しだけ再起動したようだ。


「何処の言葉だ、どこの。……で? 少しは落ち着いたか?」


「はい……なんとか……」


「気づいた事なかったか?」


「あの怪談でですか!? 無理ですよ!! 途中から聞いてませんでした!」


「はあ……簡潔にいうぞ? その怪談のなかで村長が見た男の死にかたと今回の仏さんの死に方が一緒なんだよ」


「……え?」


「ああ、さっき濁したけど件の神主さんの死に方も同じだねー。村長の事があった後、間引きに使った刀は丁重に祀って怪異は収まったんだけどさー」


「一週間前にそのご神体の刀が盗まれたんだよなぁ……」


「なんで関口警部が知ってるんですか? その……怪談の中身も……」


「うん? 羽沼ぁ……お前は上になんていわれて俺の下に来た?」


「え? えっと……」


「どうせ気狂いの相手をしろだのなんだのだろ?」


「は、はい……大体似たようなニュアンスです……」


「……俺はある怪異を追っている、その流れでコレに出会った……(「コレって言うなし」)コイツのおかげで解決不可能な事件も解決しちまって今じゃ警部だ……まあ、肩書だけだけどな」


「せっちゃん……いいの?」


「遅いか早いかの違いだろ? ……なあ、羽沼……どうする? 今なら何も聞かずにさよなら出来るぞ?」


「聞きます」


「即答か……本当にいいのか? お前の性格なら聞いたら逃げられんぞ? それでも聞くのか?」


「ええ……毒を食らわばの精神です」


「俺の話は毒かよ……わかった、聞かせてやる」

関口が追っている怪異。

それは異界。

有名な話であればキサラギだろうか。


彼には娘が居た。

妻には先立たれている。

男手一つで育てた目に入れてもいたくないほどの愛娘。

そんな彼の娘はある日忽然と姿を消した。

謎の電話を残して。


『もしもしお父さん、ごめんね。いつもの駅を寝過ごしちゃって家に帰るの遅くなりそうなんだ……見たことない駅だけど、いつも乗ってる路線だから大丈夫だとおもう』

――〇月〇日、午後6時29分デス。


『もしもしお父さん、なんかいつまでたっても電車が来ないんだけど……迎えに来れる? えっと……これ、なんて読むの? 會比延駅? 聞いたことある? もう少し待ってるから連絡ちょうだいね』

――〇月〇日、午後7時05分デス。


『もしもし、お父さん……忙しいの? 私なんか怖い……こういう時って動かない方がいいのかな……もう少し待ってみるね? 連絡ちょうだいね……』

――〇月〇日、午ぎょ28ぎ98ひうんでず。


これが最後の電話だ。

最初の留守電を聞いてすぐに関口は折り返していた。

だが、返って来たのは「おかけになった電話は……」であった。


関口は急いでいつも娘が使っている路線を辿る。

駅名は一切聞いたことが無い。

はやる気持ちを抑えながら一駅一駅を丹念に調べながら進む。

とある駅と次の駅の中間に差し掛かった時不意に違和感を感じ、車を止めると、目の前にはけもの道があった。

誘われるように関口はその奥へと向かう。

一瞬目まいのようなものを感じ、ふらつきながらも倒れることなく顔を上げるとそこには言いようのない色の空が広がっていた。

昼のようで夜のよう、曇ってそうで晴れている。

明るいと言われればそうでもない、だが、暗いかと聞かれても暗いとは言えない空。

きっとここは人間が居ていい場所じゃない、そう直感した関口は靄のかかった頭を無理やり奮い立たせて前に進む。


暫く歩き続けると線路が見えてきた、目の前には娘が言っていた會比延駅。

間違いない、ここに娘が居る!

関口は飛び込むように駅に入り、改札を金も払わずに通り抜ける。

ホームに出たがそこには人影一つ見当たらない。

遅かったか……途方に暮れ、上りと思われる方角に目を向けた時、彼は娘の姿を発見する。


口元からは涎を垂らし、やや上を向くような状態で目は虚ろ。

まるでゾンビのような足取りで線路の上を歩いている。


「真名!!」

大声で名前を呼びながら後を追いかける。

おかしい、あのペースの歩ならとっくに追いついていてもおかしくないのに追いつけない。


「真名!!」

なんども呼びかける。

しかし、真名は何かに誘われるように奥へ奥へと歩いて行ってしまう。


「真な、ぐわ!!」

脚がもつれ、転んだ拍子に関口は右目を潰してしまった。

時がたち、腐敗してささくれた枕木がまるで狙っていたかのように跳び出ていたのだ。


「真名! まなああああ!!」

かすんでいく視界のなか、必死に手を伸ばして娘の名を呼び続ける関口。

次に目が覚めた時は病院のベッドだった。


「……あれから俺は怪異に憑りつかれた……何度同じ場所に行っても會比延駅には行けないんだ……だからどうにかしていく手段を探している……生きてるか死んでるかわからねえ娘だが、死んでたとしてもせめて死んだって確信が欲しいんだ」


「そう……だったんですね……あれ? そういえば右目を潰したって……」


「ん? 見えてるぞ。ただしこれはコンタクトだがな」

そう言ってコンタクトを外した関口の右目は虹色とも言い難い、かといって適当に色を混ぜ合わせたわけでもない色合いになっていた。

見ているだけで不安になってくる色。

きっとそれは人間が理解できる範囲の外にある色だからだろう。


「コイツがあるおかげで事件が怪異がらみかそうじゃないかを大まかに判断できるんだよ」


「おかげで私も助かってるのだ」


「口調安定しねぇなあ」


「んにゃ? 別段キャラ付けしたいわけじゃないからね」


「シリアスブレイク止めてくれ」


「シリアスすぎると取り込まれるよん?」


「ああ……頭空っぽの方がいいんだったか」


「夢詰め込めるからねん」


「龍玉か!」


「あの……具体的には……例えばあの仏さんはどう見えたんですか?」


「うん? ああ……色んなモン視えるから口じゃ説明しにくいが……一番分かり易いのは眼が合う事か」


「眼が?」


「ああ、どこに行こうと仏さんの眼が追いかけてくる。まるで同郷もモノを見ている眼でな」

羽沼はブルリと身震いをした。


「よ……横に回っても?」


「お前らにゃなんの変哲もない仏さんだろうがな、ちゃーんと首がこっちを向いてる」


「ひ……ひいぃ……」

そんなに怯えるなら聞かなければいいのにと関口は思った。


「なにはともあれまずは怪異『カゴメ歌』をなんとかしないとまた被害が出るね」


「だな、コロネはどうにか出来る当てがあるのか?」


「うーん、準備が必要だけどね。後はそこのお兄さんの協力があるとなおヨシかな?」


「羽沼が? なんの役に立つんだよ」


「切り札?」


「はあ……こいつが切り札……ねえ?」


「あわわわ……幽霊コワイ……」

どのように役立つのか全く分からず、関口は溜息を吐き出したのだった。

いかがでした?

ホラーっていっても色々ありますが、怪談って意外に難しいですよね。

私だけ?

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