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貴方のために私たちは奮闘します(中編)

少し短めです。

 一方、グロリアス公爵。

「真ですか?」

 白髪の老人――現ブレーク公爵クァンタンは、孫娘であるオルガのその言葉に彼女の梳きながら、

「こんな嘘は言わないぞ」

 と返した。彼は自身の瞳の色が濃く受け継がれている孫娘を溺愛していた。そのため、彼女の婚約者には自分が納得できる人をあてがいたいと思っている節が大きく、今まで婚約を申し入れてきた貴族たちを一掃していた。

「ただ、今回候補に挙がっているのはお前だけでなく十数人いるという話だ。近々婚約者候補を一堂に会して、礼儀作法などを厳しく見、そして、候補者を絞ると言っておる。だから、お前にはそれに残れるような知識とマナー、そしてあのギーセの娘のような笑顔を身に着け、必ず一族の悲願を達成してこい」

 クァンタンはオルガを抱きしめた。オルガは一族のことを考えた。確かに、ブレーク家の娘はここ数代にわたり、正妃はおろか側室にも選ばれていない。もちろん、ブレーク派一門の娘は選ばれているが、直系の娘(・・・・)では、という話だ。自分はあまりにも無愛想で、姉と慕っているギーセの娘(ジゼル)と違って人見知りだ、とアリアは思った。そんな自分には大役は無理だから、一度ジゼルに相談してみよう、と考えた。そうすれば何か良い回避方法が浮かぶかもしれない、とも思った。

「おじいさま、私には決定的に足りていないものがありますので、それを確約はできません。なので、可能であれば、とだけ約束させていただきます」

 と、クァンタンの腕を振りほどきながらオルガは微笑み、そういった。




その2家でのそれぞれの話があってから、2日後。

 ジゼルとオルガはある中立の貴族のお茶会に招かれていた。もちろん、彼らは中立の家のお茶会で偶々(・・)鉢合わせてしまった、という設定にしており、誰も2人がわざとそう会えるように仕向けたとは思えなかった。

「寒いわね。少し暖まれるような小さなお部屋はないかしら?」

 秋の中頃であったものの、わざと(・・・)薄着をしてきたジゼルは、一人休みたい、と侍女や一門の友人たちを追い払った。

「で、貴女のところにもあったみたいね、オルガ」

 一人になったとともに、そう言った。

「はい、お姉さま」

部屋にはオルガがすでに入り込んでいた。彼女の得意なのは『人を()る』ことだ。ジゼルが休みたい、と言ったときにこの家の侍女たちの動向にいち早く注目して、こっそりと会を抜けてきたのだった。

 ちなみに、もちろん普段はこのように『休みたい』とかの事情は変えてある上に、不自然にならないように工夫もしていた。

「そうね、で、貴女はまだ返答していないわよね」

 少し人に当たられてぐったりしているオルガを膝枕しながら、ジゼルは尋ねた。

「もちろんです」

 オルガはジゼルの膝枕にうっとりと目を閉じながら答えた。ジゼルはその答えに満足していた。

「婚約者候補を決める会でしたっけ?」

「はい」

 今日のお茶会でも出ていた話題だった。ジゼルとオルガは会話にはほとんど加わらなかったものの、参加者たちはちらちらと2人の方を見ていたのを感じていた。

「はっきり言えば、どうにかして面倒ごとを作った張本人たちを殺したいくらいなんですよね…」

 オルガは目を閉じながら物騒な発言をした。

「こら、オルガ。私としても同じ感想だけれど、死んでいる人(先祖)はどうにもできないからね」

 そんな彼女にジゼルは苦笑した。

「だから、最善をするしかないわね」

「最善ですか?」

 オルガはジゼルの発言に目を丸くした。ジゼルはオルガの前では見せたことのない計算的な笑みを見せた。

「そうよ。2人とも側妃になり、今生きている人たちを片づける(・・・・)ことよ」



 それから数日して、貴族たちの間では次期大公の妃の候補者選抜についての話題で持ちきりだった。

 各派閥それぞれの筆頭公爵令嬢が参戦すると。

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