[完結]1ーA エピローグ 人によっては、蛇に足
「…………それで聞いてくれよ只野。日を改めてから右に曲がったT字路にさ、もう一回行ってみたんだよ」
夕日が差し込む、ある学校の図書室にて。ハジメが1人の《《少女》》に、先日の出来事を話していた。
彼女はハジメのクラスメイトであり、クラスの図書委員でもある。よって、こうして担当教員が席を外している間、放課後の図書室で本の貸出チェックをする羽目になっていた。
「行ってみたらそこはただのL字カーブになってんの。どこにも右に曲がる道なんて無かったんだよ。あ、でも絶対夢じゃないからな! おかしいよなぁ……」
「へーへー。それは、不思議だねぇ……」
本人はいたって楽しそうにしているが、あいにくと図書室の中にはハジメと彼女しかいない。
これでは本の貸出なんてする必要もなく暇だろうに。それでも彼女は楽しそうに笑っている。
この人気の無さなら少しばかり雑談しても、誰にも怒られはしないだろう。そう考えたハジメは小説の進捗を誤魔化しながら、先日あった出来事を話している。
「信じてないだろ。まあ俺が逆の立場だったら信じられるか怪しいな……」
「大丈夫大丈夫。信じてるよ。なかなか大変だったんだね」
「その軽い感じが怪しいんだよ……にしても情けなかった」
「どうして」
「話しただろ? あの子に迷惑かけてばっかだったからだよ。あー情けない」
「……どうだろうね? 案外、その女の子も頼られて嬉しかったかもよ?」
「なんだよソレ。たぶん只野が会ったことない子だと思うよ?」
「ふふふー。さて、どうだろうねー……あ、誰か来たみたいだから、お静かにっ」
「ハイハイ。じゃあ俺は本でも読んでますよ」
メガネの奥から優しい瞳でハジメを見ながら、束ねた長い黒髪を揺らしている彼女。そんな彼女は、ハジメと話している時とても楽しそうに笑う。誰かに似た雰囲気を、出しながら。
ハジメが通う学校の図書委員には、当番になった日にこなさくてはならない決まりがある。
それは、テーブルの上に置いてある出席者リストに名前を記入する、という決まりだ。
果たして本日の図書委員の名前は。ハジメに面と向かって談笑している彼女の名前は。
この日の出席者リストには――只野 未柑、と。そう書かれていた。
普段は後書き書かないんですが、表題の終わりくらいはちゃんとしようかなと。
これにて1ーA、そして表題『彼女は頭の上にミカンを乗せていた。』はお終いです。
自分で言うのもなんですが、こんなヘンテコな話でも読んでくれたり、ブックマークに追加してくれたりする人がいたのは嬉しい誤算です。
読んでくれる人がいたおかげで、とりあえずの終わりを迎えることが出来ました。最後まで読了、ありがとうございました。
ここから先は1ーAだけじゃなく、全体を通して読んでくれている人がいるなら、の話になります。
彼女ミカンシリーズ全体の話だと、もうちょっとだけ続きます。
まあ続くといっても後の話はプロット上1ーAより短い話しかありません。
読んでやるかーって人は、これからもよろしくお願いします。




