6話
『・・・W0より各位へ。状況報告』
『R1準備完了。いつでもいけます』
『T2配置につきました』
『Y3も配置完了』
『U4了解』
『よし、作戦通りにT2が番犬沈黙させたのち手はず通りに』
おやおやなにやら、怪しい人たちが無線片手になにかやらかそうとしてるみたいですね。
ここは善良な一市民として通報を、ってなんかプスって刺さったぞ。
や、やめろー。こんな面白そうなことを見られないなんて。俺を誰だと思ってるんだぁ。お、おれは、あっ、急に眠気が・・・無念。
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「ではでは、おばあさん。そろそろ休みますかね」
「そうですね、おじいさん。そろそろ休みましょう」
そんなやり取りが盗聴器からきこえてくる。そんな情報に聞き耳をたてながら、なんともたわいもない仕事だろうとかんじていた。
もともとは世間さまの爪弾きものだった私たちが集まり、集団を形成した。
生きるためにはなんでもやった。
なかには盗賊紛いの荒事も。
そんな私たちからしたら、今回の仕事は酷く簡単に思えていた。
唯一障害となりえる番犬ならぬ番熊。暴れられて、万が一にも騒ぎが起こり家人に気づかれないか、ということだけである。
しかし、逆に言えばそれさえクリアしてしまえばどうにでもなる、ということである。
そのための策はいくつも用意している。
流動的な状況下で、最善の一手をうつ。
そのためにはどうしたらよいのか。
そんなことを考えながら、静かに作戦開始まで様々な事態に対する方策を瞑想しながら。
状況に変化が起こったのはちょうどその頃である。
R1チームから作戦開始前の定時連絡が途絶えたのだ。
『R1、応答しろ。R1、繰り返す応答しろ』
ここにきてのトラブルとは。
『W0より各位へ。トラブル発生。R1がロストした。T2カバーを頼む。各位は警戒待機』
『T2了解。直ちに確認します』
『Y3了解』
『U4了解』
『T2よりW0へ。R1らしき痕跡発見せず。指示を求む』
痕跡なしとは。無断で離れるにしろ何かしらのトラブルにしろ、足跡なり何らかの痕跡くらい残るはずなのに。
嫌な予感がする。
『T2警戒しつつ、辺りの索斥。および消毒』
『了解』
その報告を最後にT2からも応答がなくなった。これはなんらかの妨害にあってるということか。
ここは撤退するべきか。しかし行方不明の2チームをほっといていいのか。
結果としてそのことが命取りとなるとは。