2話
『熱い、熱い。はやく、早く火を消して』
なんと声は今まさに蒸し焼きにしているタケノコから聞こえてきたのです。
タケノコがしゃべるとか、とうとう自分にも幻聴が。若いまだ若いと気持ちでは思っていても現実はこんなものか。歳をとりたくないなぁ、と思いながら蒸し上がるのをまつことにしました。
「熱いっていってんでしょーーー!」
突然、パーンという音とともに目の前の焚き火がはじけました。
ついでにタケノコもパーン。あぁ、勿体ない。
するとそこには四、五歳くらいの子供が現れました。
あの大きさのタケノコからこの大きさの人間がでてくるのは、物理法則とかいろいろ無視してますね。蒸し焼きだけに無視って。なんかうまいこといってしまいましたね。プププー。えっ、あっちょっとなんですかその無言のアイコンタクトは。ちょっ、なにポチをけしかけてるんですか。いや冗談、冗談なんだならやめてーーー。
……すみません、脱線しました。
話が脱線ているうちに焚き火もいつの間にかすっかり消えています。おじいさんが消してくれたようです。消し忘れたら山火事とか大変ですものね。
「もう、なんで熱いって言ってんのにすぐに消さないの。普通消すでしょ。ってかさぁ、タケノコ光ってたでしょ。光ってたでしょ。大事なことだから二回いわせてもらったよ」
どうやら先ほどタケノコから出てきた子供が怒鳴りちらしているようです。
まぁ、焼け死ぬかもしれなかったわけですからね。それは怒りますね。
「そんなタケノコみたら、普通調べたりするでしょ。なのに有無も言わせず焚き火とかないでしょ。しかも熱いって声聞こえてるのに無視とかありえないでしょう」
めっちゃ切れてますね。言ってることは正論なんだけど、見かけが子供なのであんまり迫力がないよね。
おじいさんもなんだか、困惑したかんじですね。
しばらくして一通り言い終えたのか、ようやく落ち着いたようです。
「じゃ、もう一度出会いからやり直すから、今度はちゃんとしてね」
そういうと近くにあった手頃な竹の中に入っていきました。
どうやって入ったんでしょう。
あの大きさで、一般的な竹の中に入るとか物理法則とかいろいろねじ曲げてますね。
そうこうしていうるうちに竹が光出しました。
おじいさんしばらく考えたのち、ふとポチをみました。
ポチもポチでおじいさんをみます。
お互いのなかでアイコンタクトを交わして数秒。結論がでたのか、荷物をまとめてその場を離れ始めました。
どうやら面倒臭いことに巻き込まれるのを嫌って見なかったことにするようです。
「ちょ、ちょっと。なんでそのまま帰ろうとするの。ねぇ、ま、待ってよ。さっきは言いすぎたから、謝るから。マジでほんとに謝るから、お願いだから置いてかないでぇーーー」
竹林の中に子供の声だけが虚しく響くのでした。
今日も平和な一日でした。
「だから、連れていってよーーー」
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