デッドエンドヒーロー外伝『さよなら』
処刑される数分前、憲兵の「ようやく勇者と同じ所へ行けるな」という言葉にオリビアは悪魔のように淀みきった瞳で憲兵を睨みつけると、力なく答えた。
「彼は世界のために、国のために、民のために、あなたのために、全てのために……ッ! ……戦って死に、天にのぼった」
勇者は善であった。勇者は光であった。勇者は輝きであった。勇者は希望であった。全ての。そして、オリビアの。
「でも、私は違う。世界を憎み、国を壊し、民を踏みにじり、あなたを騙し、私は……全てを欺き戦って死ぬ」
戦姫は悪であった。戦姫は闇であった。戦姫は淀みであった。戦姫は絶望であった。誰でもない。オリビアのうちに巡る心の。
「そんな女が、彼と同じ天へ行けるとでも? 図々しいにもほどがあるわ。私が落ちるのは地獄。彼と逢うことは二度とないわ……でも、それでも、最後に彼と同じ場所に立てたことは、私の人生最後の幸福よ」
皮肉げな笑みを戦姫は浮かべる。その笑顔は誰に向けられたものか。
それはおそらく、死にゆく自身へのものだろう。お前の求めた結末はこんなものだと、自分を嘲笑っているのだ。
しばらく無言でオリビアの言葉を聞いていた憲兵は時計を確認すると時間だ、とその手に持つ刃をオリビアの首元は当てがった。
冷たく触れた刃は、徐々にオリビアの体温が伝わり人肌程度の熱を帯びる。人の殺意が、刃に宿る。
それでもオリビアは笑ってみせた。悪魔のような笑顔ではない。その笑顔はまるで──────、
「さよならコウキ。──────あなたと出会えた人生は、幸せな人生だったわ」
愛しい人に笑いかけるような、綺麗な笑顔だった。
最初のおまけにしてはヘビーな内容ですね。すみません。
これは資料集の金髪の女性(オリビア)の項目にあった短い物語をきっちり書き直した感じですね。短編として投稿したかったんですけどさすがに初見じゃ意味が分からなさすぎると思っておまけに投稿しました。むしろこれを投稿するためにおまけを作ったみたいなものなんですけど。




